大勝の中で見え隠れした明徳義塾の「集中力」と「課題」 

優勝旗を受け取る水野克哉主将(明徳義塾)

 「(高知県香美市立)鏡野中は高知県でも軟式野球が強いチーム。バットも振れているし決勝戦進出はフロックではないよ」

 明徳義塾・馬淵史郎監督は2年ぶり16度目となる秋の高知を制した後、高知東工のスタメンに5人が名を連ねた鏡野中の話も引き合いに入れつつ、春・夏・秋通じて初の県大会決勝まで駒を進めた対戦相手・高知東工に最大級のリスペクトを払っていたことを強調した。

 先発は前日の追手前戦に続きエース・岸 潤一郎(2年・右投右打・175センチ73キロ、兵庫・西淀ボーイズ出身)。スタメンも打順の入れ替えはあれども9人同じ。高知東工は準々決勝で第1シード・高知に対し、東野 幸哉(185センチ82キロ・右投右打・愛宕中出身)が151球8安打完封。打線も5番・甲藤 竜之佑右翼手(2年・右投右打・178センチ72キロ・鏡野中出身)の3安打3打点など、センバツベスト4の立役者となった酒井 祐弥(2年・右投右打・178センチ74キロ・高知中出身)から13安打を浴びせ4対0と快勝したとあっては、その言葉に疑いはなかろう。

 だからこそ序盤から明徳義塾は攻めに攻めた。

 「体の開きが早くなってしまった」(南進監督)高知東工先発・東野の序盤乱調に、主将の奥村 卓巳中堅手(2年・右投左打・166センチ60キロ・鏡野中出身)ですら「僕自身も落ち着いていなかった」チーム内の動揺を一瞬たりとも見逃さない彼らの高い集中力は、1回裏一死三塁から3番・多田 桐吾左翼手(2年・右投左打・170センチ63キロ、大阪、ニュー・ヤンキース<リーグ所属なし>出身)の右犠飛。そして2回裏の打者14人10得点によって証明されている。

 

準優勝杯を受け取る奥村卓巳主将(高知東工)

  ただ「細かなミスがある」と名将も指摘したように、大勝の中にあっても課題はあった。 特に岸。最速139キロ・143球10被安打3与四死球3失点の凡庸な成績は、台風24号の影響で激変し続けた天候で多少差し引いて考えるとしても、10安打のうち8安打を1番・奥村、2番・近藤 友樹遊撃手(2年・右投左打・鏡野中出身)9番・南部 広利二塁手(2年・右投左打・162センチ50キロ・愛宕中出身)の左打者に喫し、5回は5安打を集中され3点を失った不用意さは、秋季四国大会出場校で唯一140キロ台を常時投げ、かつ投球術も全国でトップクラスの位置を占める右腕として決して看過できるものではない。

 バツの悪そうな表情を浮かべつつ、含みのある表情で球場を去っていった岸の様子を見る限り、中13日で迎える秋季四国大会2回戦までの修正は十分に可能と見るが・・・。「優勝候補絶対本命」の看板を背負い坊っちゃんスタジアムに乗り込む明徳義塾。その航路は決して平坦でないことも確かだ。

(文=寺下 友徳)