【セルジオ越後コラム】試合感が鈍っているのは監督だ

今回は2日に行われたベネズエラ戦について話したい。W杯本大会までわずか4ヶ月、限られた試合数、限られた時間の中で行われた試合だ。シーズン前ということでコンディションが整っていないというのは、毎年この時期に言われることだけど、それを度外視するようなテーマを持って臨むべき大切な試合だったはずだ。
たとえば、本大会メンバー入りをかけた手に汗握るサバイバル、その執念がプレーに表れ、観る人を熱狂させるようなものがあって然るべきだった。

ところが、実際繰り広げられた試合は、まるでプレシーズンマッチだったね。試合後の岡田監督のコメントを見聞きしていると、何より監督自身がそういう意識だったかのようだ。
東アジア選手権に向けたメンバーから石川直宏と興梠慎三が落とされたけど、その理由は「試合感覚が戻っていない」ということだった。彼らはベネズエラ戦に1分も出場していない。ますますあの試合の意味がわからなくなるね。

岡田監督はベネズエラ戦に何を求めたのだろうか。何のためにこの試合をやったのかな? ベネズエラはきちんとプレッシャーをかけてくれたけど、ただの準備試合という位置づけだったのであれば、試合の相手がベネズエラじゃなくて大学生でもよかったよ。わざわざスポンサーにお金を出させる必要はなかった。

というわけで、試合がつまらなかったのは必然。テーマが見えないのだから。与えられた試合にテーマを設け、何ができて何ができなかったか。それを受けて選手選考や、大いなる目標に向けて逆算をしていくのが、本来だ。
こうした試合ばかりしていて、誰より岡田監督の試合感が鈍っているんじゃないかな。

それから最後に一つ。ベネズエラ戦後に、犬飼会長が「言うことないよ、あんな試合!」と発言したね。これは今まで腹の中で思っていても決して口にしなかったことだ。どんなに批判を受けても崩さなかった監督支援の姿勢にも、綻びが生じている。
これでもし東アジア選手権で負ける、優勝を逃すようなことがあれば、W杯まで4ヶ月を切った段階で、日本代表はぐちゃぐちゃになる。心して大会に臨むべきだね。(了)


セルジオ越後 (サッカー解説者) 
18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中


●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中