経営者が社員へ伝えるメッセージのうち、最も強烈なものが「人材配置」「昇格・昇進」。社員はここでトップの本気度を測り、意図を判断します。これがズレたものでは組織はいずれ潰れてしまいます。
たとえば、勢いある若手と今まで組織を支えた古参。主従を逆転するにあたり、バランスを取った人材配置とはいかなるものなのか。小倉流にご説明いたします。

「出世がしたいんじゃない!」

 入社六年目、三五歳のA店長が苦渋の表情で訴えます。

「若手を潰して保身に走る体制には限界だ。オグラさん、次の組織変更で社長の決断がなければもう辞職します」
 
そして彼は店舗を去ったのです。

プロジェクト会議の席上、ぽっかり空いたA店長の椅子を見ながら若社長がつぶやきました。

「A店長には、次期エリア・マネージャーになってもらう予定だったんです。もう少し待ってくれれば…」

二桁に迫る店舗数を持つこの会社は五年前に社長が二代目若社長に経営譲渡。そんな中、若社長が自ら採用し最も信頼していたA店長の退職劇です。

「次はA店長たちの時代だ。君らがエリアを統括し、二十代が店長に抜擢される。いずれそんな風に変えたい」

様々な会議で若社長は繰り返し語りました。
しかし一方で若社長は胸の内をこう明かしてもいたのです。

「オグラさん。若手を抜擢したいが上の世代を切るワケにもいかない。彼らあってこその、今の我が社なんです…」

私は二年前から折に触れ、若社長へ次のように伝えていました。

「経営者が社員へメッセージを伝える方法はたくさんありますよね。給与や評価制度の考え方、経営理念や行動規範、そしてトップの講話内容など」

「ええ…」


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