【KSVセミナーレポート】高度100kmを目指すハイブリッドロケット 神奈川大学・みなとロケットの挑戦
神奈川県相模原市緑区の宇宙関連企業交流拠点「KANAGAWA Space Village」で2026年6月19日、神奈川県宇宙産業参入促進セミナー「ハイブリッドロケットが拓く、ものづくり企業の宇宙ビジネス参入機会」が開催されました。
セミナーには、神奈川大学工学部機械工学科の郄野敦教授と、みなとロケット株式会社代表の新井淳一氏が登壇。神奈川大学で進められているハイブリッドロケットの研究開発や、その技術を社会実装へつなげる取り組み、そして地域のものづくり企業が宇宙ビジネスに参入する可能性について講演しました。

宇宙空間到達を目指す神奈川大学の取り組み
神奈川大学の航空宇宙構造研究室と宇宙ロケット部は、2014年から超小型ロケットの開発と製作に取り組んでいます。目標としているのは、将来的な超小型衛星の軌道投入を見据えた「高度100kmの宇宙到達」です。
ハイブリッドロケットは、一般的に固体の燃料と、液体または気体の酸化剤を組み合わせた推進方式を用いるロケットです。神奈川大学は、安全性の高さ、コストの低さ、環境負荷の低減といったハイブリッドロケットの特徴に注目し、研究開発を進めています。
神奈川大学は2021年9月、秋田県能代市で実施したハイブリッドロケット飛翔実験で高度約10.1kmに到達し、国内ハイブリッドロケットの高度記録を更新しました。2024年12月14日に福島県南相馬市で実施した飛行実験では、到達高度10.055kmを記録。高度記録の更新には届かなかったものの、最高速度はマッハ1.5に達し、同大学は「ハイブリッドロケットの公表データ内日本記録」としています。
また、2024年の飛行実験では、機体が太平洋の沖合約8kmの想定範囲内に軟着水し、機体の大部分の回収にも成功しました。展開式GPS発信機や改良型分離機構、再利用を見据えた機体材料の実証なども行われており、ロケットの回収・再利用につながる成果として紹介されました。

社会実装の役割を担うみなとロケット
一方、みなとロケットは、神奈川大学で培われたハイブリッドロケット技術の社会実装を目指すスタートアップです。セミナーでは、小型衛星の打ち上げ需要を見据えた事業展開や、地域のものづくり企業との連携の可能性が説明されました。
政府は宇宙戦略基金などを通じて宇宙関連分野の技術開発を支援しており、宇宙輸送分野では「2030年代前半までに、基幹ロケット及び民間ロケットの国内打上げ能力を年間30件程度確保する」というKPI(重要業績評価指標)を掲げています。大学発のロケット技術を事業化し、地域企業の技術力と結びつける取り組みは、こうした国内宇宙輸送の基盤づくりにも関わる動きといえます。
会場には、地域のものづくり企業をはじめ、宇宙産業への参入に関心を持つ事業者が集まり、セミナー後には交流会も行われました。神奈川大学とみなとロケットの取り組みは、大学の研究成果を民間事業へつなげる試みとして、今後の展開が注目されます。

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KANAGAWA Space Villageとは
KANAGAWA Space Village(KSV)は、神奈川県が相模原市緑区橋本に設置した宇宙関連企業交流拠点です。宇宙関連企業や宇宙産業への参入を目指す企業、大学・研究機関、自治体、金融機関などの交流を促し、県内における宇宙関連産業の参入や共創を後押しすることを目的としています。
施設はミウィ橋本2階にあり、コワーキングスペースやギャラリースペース、セミナーやイベントに対応する設備などを備えています。KSVでは、宇宙産業参入に関するセミナーやマッチング、相談対応、イベント情報の発信なども行われています。
KSVの所在地
文・編集/sorae編集部
参考文献・出典Peatix - 神奈川県宇宙産業参入促進セミナー ハイブリッドロケットが拓く、ものづくり企業の宇宙ビジネス参入機会神奈川大学 - 神奈川大学ハイブリッドロケット、打ち上げ結果の詳細についてJAXA - 宇宙戦略基金の基本方針及び実施方針みなとロケットKANAGAWA Space Village
