皇室典範改正「養子案」に天皇陛下はお怒りだった…60年来のご学友がそう断言する理由
国民の象徴たる天皇の在り方が左右されるのに、世論が反映されない法改正。問題は、「当事者」の気持ちを誰も理解しようとしないことだ。
「根本的に世論とかけ離れている」
いま天皇は、どんな思いを抱いているのだろうか。
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「養子になる男子が現れるとは思えない」
当事者たちは、親族が「皇室入り」する法案について、どう感じているのか。旧宮家の人々を直撃した。
東久邇盛彦氏は「お話しすることはありません」と固辞し、久邇朝尊氏は「取材はお断りしておりますので」と言うのみ。その他の親族も、おしなべて口を閉ざすのだった。
そんな中、取材に応じたのが久邇朝宏氏(81歳)だ。久邇家の当主・邦昭氏の弟で、3歳で皇籍離脱を経験している。朝宏氏は、明確に「養子案」に反対の立場を示す。
「法案が可決したとしても、実際に養子になる男子が現れるとは思いません。15歳まで自由に生きて、世間の楽しみを知った人が、なぜ皇室の厳しい制約を受けることを望むのでしょうか。仮に養子になりたいと手を挙げる人がいても、皇室にふさわしいか見極める必要があると思います」
また、朝宏氏は女性・女系天皇に賛成の立場だ。とりわけ愛子さまについては「女性天皇になり得る人」だと断言する。6月には愛子さまとお会いする機会があったという。
「6月13日、初等科桜友会(学習院の同窓会組織)の集まりがあったのですが、そこに愛子さまをお招きしたのです。その前に、警察関係者などと事前協議があったのですが、愛子さまの予定表を見て驚きました。『何時何分に階段を上がって、お食事についていただく』など、分刻みで厳密に決められているのです。当日、こうした予定にしっかりと従うお姿を見て感嘆しました。外部から皇室に入った人では、きっと音を上げるでしょう」
このように、皇室典範改正に関しては様々な立場がある。だが、当事者である「天皇家」は何も発信できない。
強いて言えば訪欧前の会見だ。皇族数の確保策について問われた天皇は「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と回答している。この発言については「政府の進める改正案が『国民の理解が得られるもの』ではないという表現なのではないか」と物議を醸した。
「養子案」は陛下の意向を無視している
「陛下は、特に養子案について怒っていたと捉えています」
こう語るのは社会学研究者の小山泰生氏だ。天皇のご学友で、学習院幼稚園の頃から現在まで約60年にわたり交流がある。小山氏がこう続ける。
「'05年に有識者会議が開かれた際も養子案について議論がありましたが、当時天皇であった上皇陛下は『国民の理解が得られるのか』と明確に懸念を示されていました。今回の陛下の発言は、『なぜ父が否定したものを今頃になって持ち出すのか』という思いから出た発言だと察します。
現在の論争は、男系男子にこだわる『血統主義』と、国民の総意に基づく『象徴主義』のどちらを重視するかの争いになっています。そして上皇陛下と天皇陛下は、常に国民に寄り添うことを意識されていたように、『象徴天皇制』を築き上げてきました。一方で、いま政治家たちが進めるのは『血統主義』です。明確に陛下とは対立する立場だと言わざるを得ません」
小山氏は、天皇の思いが無視されていることに懸念を示している。また、憲法の観点から皇室制度や皇位継承に関する議論を積極的に発信する弁護士の伊藤真氏は、皇室の「人権」が置きざりになっていることにこう警鐘を鳴らす。
「養子の問題に巻き込まれそうな当事者の人権、あるいは男系男子にこだわることで、結婚相手となる女性は『男の子を産まなければ』というプレッシャーを受け続けることになります。改正案の制度設計によって苦しむ人が増えるのであれば、それは考え直すべきなのではないでしょうか。
先日の会見での天皇のお言葉は、愛子さまへの心配の気持ちが込められていたと感じます。『私たちも生身の人間だ』という思いもあったと考えざるを得ません。改正案が通れば、あの『人格否定発言』と同じような展開が起きても不思議ではありません」
天皇制を維持するシステムは人権軽視
伊藤氏の語る「人格否定発言」とは、'04年に当時皇太子だった天皇が、休養中の雅子さまについて「雅子のキャリアや人格を否定するような動きがあった」と会見で話したことを指す。雅子さまの長期療養の背景として、男子を求められるプレッシャーが大きかったと暗に示したのだ。
仮にこのまま改正案が通ったとしても、その養子の妻が男子を産まなかったらどうなるのか。また何か理屈をつけて、外部の人間を皇室に入れることになるのだろうか。
作家・比較文学者の小谷野敦氏は、こう力説する。
「かつて『女は子供を産む機械』と言って批判された政治家がいましたが、いま国民は皇族を『産む機械』にしようとしています。実質的に奴隷状態と言っても過言ではありません。そもそも、『愛子天皇に』という声が上がっていますが、愛子内親王本人が希望しているのかを真面目に考えている人もいません。いまや天皇制を維持するシステムそのものが、彼らの人権を踏みにじるものとなっています。
養子案、女性皇族案を議論する前に、もう一度天皇制について国民が議論をする必要があるのではないでしょうか」
かように様々な意見がある中で、政府は拙速に法案通過を目指しているように見える。旧宮家、ご学友、学識者たちの言葉を真摯に受け止め、何より当事者たちの気持ちを慮るべきではないか。
「週刊現代」2026年7月20日号より
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