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ここは都内のどこか。朝の出社前、家庭の用事を済ませるためタクシーに飛び乗った悠人さん(仮名)。

目的地の住所を伝えたにもかかわらず、運転手は見当違いの場所へ向かってしまった。途中で「間違えているんじゃないですか?」と指摘したものの、そのまま走行は続いた。

「なにしとんじゃ!」。思わず声が出たが、その後はスマートフォンの地図アプリを見ながら指示を出して、ようやく目的地にたどり着いた。

ところが、表示された運賃は「通常ならもっと安いのに」と感じる金額だった。納得できず強く抗議したところ、最終的に数百円値引きされた。

●増えた運賃は誰が負担する?

こうした経験は以前より減っているかもしれないが、土地勘のない運転手にあたることは今でも珍しくない。

ただ、悠人さんは後になって「強く抗議して値引きしてもらったが、自分の対応は法的に問題なかったのだろうか」と気になったという。

タクシーをめぐるトラブルは少なくない。弁護士ドットコムにも「わざと遠回りされた」といった相談が寄せられている。

法的なポイントになるのは、「増えた運賃の原因は誰にあるのか」という点だ。

タクシーは、利用者を指定された目的地まで運送する契約だ。

利用者が住所や目的地を正確に伝えていたにもかかわらず、運転手の勘違いや運転ミスによって余分な走行が発生したのであれば、その分まで利用者が負担しなければならないとは一概にはいえない。

ただし、実際には個別の事情によって判断される。

住所の伝え方は明確だったのか、客と運転手の認識に食い違いはなかったか、ナビなどで確認できた状況だったか──こうした事情を総合的に考慮して判断されることになる。

●強い抗議はどこまで許される?

では、料金に納得できず、その場で減額を求めることは問題なのだろうか。

運賃について説明を求めたり、減額を求めて交渉すること自体は、違法とはいえない。話し合いの末、タクシー会社の判断などで減額がおこなわれる場合がある。

一方で、要求の仕方には注意が必要だ。

大声で怒鳴り続けたり、長時間にわたって執拗に責め立てたり、人格を否定する暴言を浴びせたりすれば、近年問題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)にあたる可能性がある。

さらに、「金を払わないぞ」「会社を潰してやる」「SNSでさらしてやるぞ」など相手を畏怖させるような言動で値引きに応じさせれば、恐喝罪などの刑法上の問題が生じる可能性がある。

その場で感情的になりそうなときは、いったん領収書を受け取り、タクシー会社に事情を説明して対応を求めるほうが望ましい。

車両番号や乗車日時、目的地、領収書などを残しておけば、会社側も事実関係を確認しやすくなり、冷静な解決につながりやすいだろう。