巨人時代の池田駿さん、2019年からSNSの誹謗中傷に苦しんでいた【写真:産経新聞社】

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池田駿さんがプロ生活で唯一「これは無理かも」と思った瞬間

 プロ野球の巨人と楽天でプレーした池田駿さんは、2021年のオフに自らセカンドキャリアのために現役引退の道を選んだ。その後2年間の猛勉強の末、2023年には超難関資格の公認会計士に合格している。野球では、最後のシーズンまで限界を感じていたわけではないという池田さんだが、現役時代に「これは無理かな…」と思ったことが一度あったという。現在議論を呼ぶことが増えている、SNSとの関わりがきっかけだった。(取材・文=THE ANSWER編集部、羽鳥慶太)

 夏の間に、プロ野球の各球団は翌シーズンの戦力編成を始めている。池田さんは現役最後の2021年、2軍で32試合に登板し防御率1.52と、決して力が通用しなくなったわけではなかった。「1軍で1試合も登板がなければ引退しよう、逆にもし1試合でも呼ばれたら、もう1年頑張ろうと思っていました」。現役引退は、セカンドキャリアまで見据えて自分で下した選択だった。

 専修大と社会人野球のヤマハを経由し、2017年に巨人入りした時にはすでに24歳。引退後のことを考えておかなければならないと、漠然と頭にあった。引退1年前から、すき間時間を生かして公認会計士の勉強をスタート。試合直前までテキストを開いていることもあった。引退を申し入れた際、所属の楽天からは引き留められたが、自分の意思を貫いた。

 プロ通算83試合登板。トレードでセ・パ両リーグを経験した。壁にぶち当たるたびに改善という、課題解決のサイクルを繰り返すことで成績も向上。巨人時代に高橋由伸監督からの要望もあって取り組んだリリーフにもすぐに適応した。ただ「巨人での3年目、これは無理かなと思ったこともあって……」と振り返るのは2019年、甲子園での阪神戦だ。

2019年、すでに存在した誹謗中傷「やめないといけないのかな…」

 5月29日にシーズン初めての1軍昇格を果たすと、すぐに延長12回1死一、二塁の場面で初登板が回ってきた。最初に対戦した木浪聖也に四球を与え満塁とし、代打で登場した高山俊に満塁弾を浴びてサヨナラ負けを喫した。2日後、中日戦の登板は1回無失点に抑えたものの、試合後に2軍落ちを通告された。そこからもう、巨人では1軍からのお呼びはかからなかった。

 さらに、池田さんを苦しめたのはSNSに並んだ言葉だ。「その時は地獄ですよ。野球をやめないといけないのかなとまで思いました」。当時使っていたツイッターは、罵詈雑言であふれた。現在ほど、スポーツ選手に対するネット上の誹謗中傷は注目されていなかったが、心無い言葉がいくつも突き刺さった。実際これをきっかけに、池田さんは一度ツイートをやめている。

「もちろん、今となっては笑い話です。抑えてヒーローになってやるくらいのつもりでマウンドには行きましたし」。ただ現在、X(旧ツイッター)上に何気ない日常をつづっている池田さんは、一つ心に決めていることがある。

「野球に関することは言いません。どう言ったとしても悪くとられてしまうことがあるので。軽く、バカみたいな投稿を心がけています。こういう人間もいるんだと知ってもらうためですかね」

 現役最終年と、引退翌年の猛勉強は計7000時間に及び、2023年の秋には合格率が7パーセント台という難関資格の公認会計士試験に合格した。現在は公認会計士スクールのCPA会計学院で講師を務める。現役時代と違い、SNSには楽しい日常があふれている。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)