大手ゲームメーカーのUbisoftがオンラインゲームのサービス終了に不満を抱くユーザーから集団訴訟を提起される
「アサシン クリードシリーズ」や「レインボーシックスシリーズ」などの人気ゲームを手掛けるフランスの大手ゲームメーカー「Ubisoft」は、2024年3月にオープンワールドレースゲーム「ザ クルー」のサービスを終了しました。これに不満を抱いた2人のゲーマーが、Ubisoftを訴えています。
Ubisoft targeted in fraud lawsuit over The Crew’s shutdown | Polygon
Ubisoft Facing Lawsuit Over Shutting Down Always Online Game
https://kotaku.com/ubisoft-killing-games-the-crew-lawsuit-shutdown-offline-1851695302
ザ クルーはUbisoftが2014年12月発売したオープンワールドレースゲームです。既に複数のシリーズ作品がリリースされており、2023年9月にはシリーズ最新作の「ザ クルー:モーターフェス」が発売されています。
『ザ クルー:モーターフェス』ローンチゲームプレイトレーラー - YouTube
そんな中、シリーズ1作目となる「ザ クルー」の登場から9年が経過した2023年12月のタイミングで、Ubisoftは同タイトルのサービス終了を発表しました。これにより「ザ クルー」はあらゆるオンラインゲームストアから削除され、オンラインプレイも2024年3月31日で終了することがアナウンスされました。
Ubisoftは「まだこのタイトルを楽しんでいるプレイヤーにとっては残念なことかもしれませんが、今後のサーバーインフラストラクチャーおよびライセンス制約により、これは避けられないこととなりました。特にシリーズ最初のタイトルのサービス終了は、軽々しく行えるものではありません。我々の目標はプレイヤーに最高のアクションドライビングゲームのプレイ体験を提供することで、その目標を達成するために『ザ クルー2』と『ザ クルー:モーターフェス』での新しいコンテンツサポートを続けていきます」とサービス終了の理由を説明していました。
しかし、アメリカ・カリフォルニア州在住の2人のゲーマーが、ザ クルーのサービス終了を受けて集団訴訟を提起しました。カリフォルニア州の裁判所に提出された訴状には、「ピンボールマシンを購入し、数年後に自宅で遊ぼうとしたところ、パドルやピンボールやバンパーがすべてなくなっていて、最高得点を表示するモニターまでなくなっている様子を想像してください」「ピンボールマシンメーカーがあなたの家に押し入り、ピンボールマシンの内部を空っぽにして、あなたが購入した所有物だと思っていたマシンを勝手に遊ぶことができないようにしてしまったのです」と記されています。
訴状の中で、原告側は2つの方法でだまされたと主張しています。ひとつ目は「プレイヤーが物理ディスクを購入していたとしても、単にライセンスを取得しただけなのに、ゲームを購入したと誤解させたこと」で、もうひとつが「Ubisoftは『ザ クルー』のデータファイルはディスク上にあり、自由にアクセスでき、ディスクは単なるゲームをプレイするためのキーではないと『虚偽の説明』をしたこと」です。これらをベースに、原告側はUbisoftがカリフォルニア州の消費者保護法に違反していると主張しました。
集団訴訟を起こした2人のゲーマーは、『ザ クルー』を2018年と2020年に購入しています。2人が物理ディスク版を購入した理由は、「オンラインサービスが停止しても物理ディスクがあればいつでもゲームをオフラインでプレイできると思ったから」です。もしもサービス終了に伴い物理ディスク版でもゲームがプレイできなくなることを知っていれば、「物理ディスク版を購入することはなかった」と原告側は主張しています。
また、UbisoftがKnockout Cityやアサシン クリード II、アサシン クリード IIIといったタイトルで同様にサービス終了を発表した際には、オンラインサーバーは停止したもののオフラインでもゲームを遊べるようにパッチを適用していたことを取り上げています。Ubisoftはこういった批判の声に応える形で、「ザ クルー2」や「ザ クルー:モーターフェス」にはオフライン版を追加することを約束していますが、これは今回の訴訟に関する問題を解決するものではないと原告側は主張しました。
原告側は今回の訴訟を集団訴訟として認めるよう裁判所側に働きかけており、サービス終了の影響を受けたプレイヤーへの金銭的救済と損害賠償を求めています。
なお、「ザ クルー」のサービス終了に対して反発を見せているのは今回の訴訟だけではありません。YouTuberのロス・スコット氏が主導する「ゲーム殺しをやめろ」というキャンペーンでは、ゲームメーカーが一度プレイヤーに販売したゲームのサービスを終了することでゲームをプレイできなくする慣行を批判しています。同キャンペーンではゲームメーカーに対してオンラインサービス終了後もゲームをプレイ可能な状態に保つことを求めており、欧州連合(EU)の規制当局に請願しています。なお、「ゲーム殺しをやめろ」には記事作成時点で37万9000人の署名が集まっています。
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メディアのデジタル化により、ユーザーはゲームを所有しているのか、それともプレイするためのライセンスを所有しているのかという問題がよりあいまいになっています。この問題を解決するため、アメリカ・カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、オンラインゲームストアに対して「消費者にゲームそのものではなくライセンスを販売していることを明確に伝えること」を義務付ける法案に署名したばかりです。この法案を提出した、カリフォルニア州議会議員のジャッキー・アーウィン氏は、「ザ クルー」のサービス終了問題に触発されたとのことです。
永久に利用できないデジタルコンテンツには「購入」ボタンを付けてはならない法律がカリフォルニア州で制定される - GIGAZINE
なお、この法律はデジタルコンテンツの所有状況を明確に示すためのものというだけで、問題を根本的に解決するだけの効力を持ったものではありません。