“りくりゅう”新プログラムで見せる新たな一面は笑顔封印のダークさ。結成1年目以来の全日本出場に強い思い

写真拡大

11月7日〜10日にフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦、日本大会が行われた。

日本男子は鍵山優真が今季GP初戦で優勝、壷井達也が3位でGPシリーズ初表彰台、三浦佳生は6位。

女子は坂本花織が優勝しGPファイナル進出を決め、今季GP初戦の千葉百音が2位、青木祐奈が3位でGPシリーズ初表彰台を飾り、カナダ大会に続く日本勢が表彰台を独占した。

また、ペアの三浦璃来・木原龍一組は2位で終えた。

GPシリーズ2戦目の三浦・木原組は、2季ぶりに日本での大会に挑んだ。

ショートで大きなミスなく首位に立つ。しかし、フリーは木原が氷の溝にハマり、ペアスピンでの珍しいミスが出るも演技をまとめGPファイナル進出を決めた。

拠点とするトロントで本格的なシーズンを迎える前に、2人の練習に密着。ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を見据える2人の今シーズンのテーマも聞いた。

今シーズンのテーマは“ケガをしない”

結成6年目となる“りくりゅう”。22-23シーズンはGPシリーズ・四大陸選手権・世界選手権の主要国際大会を全制覇する年間グランドスラムを達成した。

日本ペア史上初の快挙を遂げた2人だが、ダイナミックな大技に伴い、ケガのリスクも多いペア競技の特性上、ここ数年ケガに悩まされてきた。

年間グランドスラム達成のシーズンには三浦が右肩の脱臼を、昨季は木原が腰椎分離症を発症する。特に昨季はシーズン前半の試合を欠場するという苦しい1年を送った。

そんな中挑む今季のテーマは、「ケガをしない」。

一見平凡ともとれるが、1年半後に控えるミラノ・コルティナダンペッツォ五輪で個人表彰台を見据える2人にとっては大事な目標となる。

だからこそ、今シーズンはオフの期間から準備にとりかかったと語る。

「2年連続でケガをしているので、今シーズンはもう早いうちから準備をしようと、5月ぐらいから食生活を見直してトレーニングを始めていました」と三浦。

木原も「ケガをしてしまうと、どうしても何もできなくなってしまう。一番はケガをしないこと、ケガをしなければ練習も試合もすべて出場することができるので」と話す。

異国の地でストイックに競技と向き合う

ケガをしないためにシーズンオフの期間から食事の管理を始め、お弁当を毎日作って持ってきていたという。

2人が同じスケジュールの日もあれば、違う日もあるとしつつ、最近の1週間のスケジュールを木原が教えてくれた。

「璃来ちゃんとスケジュールが同じ日もあれば違う日もあります。月曜日は氷上練習と陸上トレーニング。火曜日が氷上練習とピラティスに行く。

水曜日がみっちり練習をしてケアに充てています。木曜日が氷上練習をやって、メーガンコーチとのトレーニング。金曜日が氷上練習をやって、陸上トレーニング。

それプラス、各自インナートレーニングも家でやっていたりするので、土日が掃除・洗濯・自炊でいつも終わっちゃいますね」

日本を離れ、トロントの地でスケート中心の生活を送るりくりゅうは、ストイックに競技と向き合っている。

新たな一面を引き出す“挑戦のプログラム”

昨季までの数シーズン、2人は師事するブルーノ・マルコットコーチの家族であるジュリー・マルコットさんが振り付けた、“笑顔とさわやかさ”が引き立つようなプログラムをメインに滑ってきた。

“新たな引き出しを見いだしたい”という思いから、今季は数々のプログラムを手掛けてきた2人の名振付師に依頼した。

ショートは羽生結弦さんの『SEIMEI』も担当したシェイ=リーン・ボーンさんによる『Paint it black』。

2人はシェイリーンさんならではの動きに難しさも感じているという。

「もうまさにシェイリーンさんっぽい振付が、すごく足にきます」と木原。

続けて、「続けていく中で、変化がいるんじゃないのかなと感じていて。過去に作っていただいたプログラムは大好きだし、(変えるということが)大丈夫かな…という思いはありました。今回、新しい挑戦をすることができたのですごく良かったかなと思います」と話した。

これまでとは異なり、ダークな曲調で笑顔を封印するこのプログラムにちなんで、お互いのダークな一面について尋ねると、りくりゅうらしさがあふれるやりとりに。

「お互いのダークな一面」が質問だったが、「璃来ちゃんは“ダークチョコ”が好き」と木原。

三浦も「めっちゃ好きです!」と目を輝かせ、「最近2人で板チョコを買うのにハマっていて。どんどんどんどん濃くなってくるんですよ。でも95ぐらいでもうギブだったよね」と笑い合う。

「ダークって言ったらチョコレートしか思い浮かばない」という2人。

ダークな部分はお互い「ない!」ときっぱりと答えたりくりゅうは、まさに新境地をプログラムで切り開く。

結成1年目以来の全日本で“進化したりくりゅうを”

2019年、結成とともに全日本デビューを果たすも、その後2年間コロナ禍の影響で全日本の舞台に立つことができなかった。

年間グランドスラム達成を果たした22-23シーズンはまさかのロストバゲージというハプニングに見舞われ、昨季は木原のケガを考慮し出場を見送った。

全日本デビューを振り返り木原は「前回の出場が結成4カ月くらいだったので、まだまだチームとして経験が少ない中で出場させていただいた試合でした。そんないい演技してないよね?」と投げかけると三浦も「そうだね」とうなずく。

だからこそ、木原は「今年こそはって思っています」と力強く語り、三浦も「私たちの良いところは楽しそうに滑るところなので、それができたら」と意気込んだ。

日本の観客の前で演技を披露する機会の少ない2人は、日本での試合を楽しみにしている。

2人の良さである「スケートが楽しい」という思いが伝わる滑りを期待したい。