ソシエダで3年目を迎えた久保。(C) Getty Images

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 タケ・クボ(久保建英)がソシエダで通算100試合出場を達成した。マジョルカ、ビジャレアル、ヘタフェ、そして再びマジョルカとレンタル移籍を繰り返し、2022年夏にレアル・ソシエダに加入した時、誰が想像しただろうか。

 当時は、根強い反対の声も少なくなかった。それが敵地カディスでの新天地デビュー戦で決勝点を挙げ、チームの勝利に貢献して幸先の良いスタートを切ると、天真爛漫な性格も相まって、瞬く間にファンのハートを掴んだ。

 イマノル・アルグアシル監督との関係をやたら詮索する向きもあるが、実際はまるで根拠のない戯言だ。指揮官が行なっているのは、タケというダイヤモンドを磨き上げ、最大限に活用することだけだ。
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 確かに性格的に頑固で融通が利かない部分があるが、その指導スタイルで、数々の若手を育て上げてきた。もちろんタケほど優秀な選手が、いつまでソシエダでプレーするかは分からない。ただだからこそタケのさらなる成長を期待して厳しく接している。それはアルグアシル監督の次の言葉が如実に示している。

「フレッシュな状態で試合に臨んだ時のほうが、タケは良いバージョンを見せる。今シーズンは、過密スケジュールの影響で非常にタイトな状況で試合に臨まなければならず、我々はベストの姿を提供するのが難しかった。タケに対して飴と鞭を使い分けているというわけではなく、正しい判断基準に基づいて選択することを心掛けている。タケは私のそうした考えを知っている。彼のここまでの働きぶりが悪いというわけでは決してないが、同時にもっとできると思っている。2人の共通点は要求度が高いこと。タケとクラブにとって最高のものを得られることを願っている」

 一方のタケも、プルゼニ戦前日にその指揮官のメッセージをしっかり受け取っていることが伺える発言をしている。

「3年前、選手として崖っぷちだった時にここに来るという決断を下したことは、今のところ自分も含め、全員にとって良いものになっていると思う。でも僕はもっと貢献できると思うし、みんなにはもっとたくさんのことを僕に期待してほしい。自分のベストの姿を見せられることを願っている」
 
 今やタケを疑問視する声はほとんどない。中には個人プレーに走りがちなことや、状況判断の甘さを指摘する者もいるが、心の底では誰もが、ソシエダの中心選手の1人であることを認めている。

 最近はどのチームも、対戦相手を丸裸にして強みを潰して、弱点を突いてくる。プルゼニ戦でも、相手の指揮官の狙いがタケの封じることであることは明らかだった。

 ゴール前に守備を固めて、左サイドに人数を割いて、スペースを排除。試合前に「クロス、セットプレー、スローインを中心に息もつかせぬ攻撃を仕掛けてくる。前線から勇敢にプレッシングを仕掛け、それをかいくぐっても、素早くコンパクトな守備ブロックを形成する。確実にパスを繋いでいかないと崩すのは至難の業だ」とアルグシアル監督が危惧していた通りの展開になった。
 
 ましてやこの日は右サイドバックのホン・アランブルの後方からのサポートがほとんどなく、これで活路を見出せとは酷な注文だった。それでもチームメイトはタケの局面打開力に期待し、右サイドにボールを集めたが、チャンスに絡むことができず、ドリブルも不発に終わった。

 日曜日にはバルセロナ戦が控えている。アルグアシル監督が60分に交代を命じたのは、その大一番を見据えたうえでの判断だろう。通算100試合出場のお祝いはホームの大観衆の前での古巣との一戦までお預けだ。タケにはそのほうが相応しい。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸