金融学の専門家の調べにより、在宅勤務を含むフレキシブルな働き方ができる企業として上位にランクインした企業の株価は、同業他社と比較して高い上昇率を見せることがわかりました。柔軟な勤務形態を敷くことのメリットがまたひとつ明らかになっています。

Does the Stock Market Fully Value Alternative Work Arrangements? Work From Home and Equity Prices

(PDFファイル)https://editorialexpress.com/cgi-bin/conference/download.cgi?db_name=SIEP2021&paper_id=58

WFH-flexible companies have higher stock returns, new study reveals | Fortune

https://fortune.com/2024/10/30/work-from-home-rto-debate-better-stock-returns/

メルボルン大学のガブリエレ・ラッタンツィオ氏は、フレックスタイム制を設けたり在宅勤務の選択肢を用意したりしている企業をまとめた求人サイト「FlexJobs」が公開している「リモートワークの仕事に最適な企業100社リスト」を参考に、リストへランクインした企業の株価を追跡しました。

その結果、リストに掲載された企業は同規模かつ同業種の競合他社よりもアナリストの予想を上回る売上高に達したり、市場の予想をいい意味で裏切るような好決算を出したりする傾向があることがわかったとのこと。このような傾向は一般的に株価上昇の要因となることから、ラッタンツィオ氏は「この研究は、企業がフレックス勤務に依存していることが長期的な株価リターンと関連していることを初めて証明したものである」と結論づけています。



2019年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行したことから、AmazonやAppleなど主にテクノロジー企業を中心にリモートワーク体制へ移行するところが増加しましたが、感染拡大が収まってからは元通り出勤体制に戻す企業もいくつか見られています。

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ピッツバーグ大学の准教授で、リモートワークと企業業績の関係を研究しているマーク・マー氏も、ラッタンツィオ氏と同様に調査を実施した上で「ナイキやUPSのようにリモートワークから週4日または週5日オフィスに出勤するよう転換した企業は、転換後にアディダスやフェデックスのような同業他社の収益率を下回っています。このような業績の差は、厳しいポリシーを持つ企業が競合他社に人材を奪われているため、あるいは出勤義務の導入によって従業員の士気が低下し、業績が低迷しているためではないでしょうか」と指摘し、リモートワークと株式を紐付ける研究が今後も出てくることで、経営陣が業務形態を柔軟なものに切り替えるようになるのではと話しました。

コンサルティング企業KPMGが年商5億ドル(約760億円)の企業のトップ100人を対象に行った調査でも、CEOの10人に3人が「週4日労働」または「週4日半労働」の導入を検討していることが明らかになっており、さらに調査会社Gartnerは求職者のおよそ7割が求める待遇の筆頭として「給与に影響のない週4日労働」を挙げていると報告しているなど、働き方は近年少しずつ変化しつつあります。

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ラッタンツィオ氏は「フレキシブルな働き方は短期的にも長期的にも株価にいい影響を与えます。柔軟な働き方ができるという企業の評判に対する肯定的な反応が見られるのです」と述べました。