訴えを取り下げた松本人志

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 昨年12月発行の「週刊文春」による、女性に性的行為を強要したとの報道で名誉を毀損(きそん)されたとし、発行元の文藝春秋などに5億5000万円の慰謝料を求めていたダウンタウン・松本人志(61)が8日、訴えを取り下げた。これにより今訴訟は、初めから裁判所に係属せず、訴え自体がなかったものという扱いとなる。松本は同日、代理人弁護士を通じて声明を発表。自身との会合に参加した女性に対し謝罪したが、性加害の有無については「物的証拠はない」などとする従来の主張を繰り返すにとどめた。

 最高裁まで続く長期戦が予想され“2年戦争”とも伝えられていた裁判が、急転直下で終結を迎えた。延期されていた第2回弁論手続きの開催を3日後に控えたこの日、松本サイドが突如、訴えを取り下げた。

 松本は声明で、性加害報道に対して「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました」と、従来の主張を改めて展開。一方で「裁判を進めることで、これ以上、多くの方々にご負担・ご迷惑をお掛けすることは避けたい」と取り下げの理由を説明した。

 その上で「かつて女性らが参加する会合に出席しておりました」と、複数の女性と飲み会を行っていたことに初めて言及。「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば、率直にお詫び申し上げます」と謝罪し、「相手方との間において、金銭の授受は一切ありませんし、それ以外の方々との間においても同様です」と強調した。

 文春側は同日、編集長名義でコメントを発表。「原告代理人から、心を痛められた方々に対するお詫びを公表したいとの連絡があり、女性らと協議のうえ、被告として取下げに同意することにしました」とした。

 松本を巡っては、昨年12月27日発売の「週刊文春」が、都内のホテルでの飲み会で性的行為を強要されたとする女性の証言を掲載。松本は1月8日に「裁判に注力するため」と芸能活動の休止を発表しつつ、自身のX(旧ツイッター)で「事実無根なので闘いまーす」と宣言していた。

 その後、文春側からの続報が相次ぐなど、事態は泥沼化。双方が徹底抗戦を宣言し、3月28日に東京地裁で開かれた第一回口頭弁論で“ゴング”が鳴らされた。松本側の代理人弁護士は松本自身の出廷も示唆していたが、裁判はなかなか進まず、8月に予定されていた弁論準備手続きが異例の延期となるなど、混迷が深まっていた。

 松本は3月の第一回口頭弁論前にXで「一日も早く、お笑いがしたいです」と投稿。早期の芸能活動再開を希望しているとみられ、ファンや関係者にも謝罪した上で「どうか今後とも応援して下さいますよう、よろしくお願いいたします」と呼びかけた。

 所属の吉本興業も公式サイトで「関係各所と相談の上、決まり次第、お知らせさせていただきます」と、再開に向け動き出すことを示唆した。だが、強硬な対決姿勢から急転の終戦、しかも「和解」ではなく「取り下げ」という決着だけに、世間の支持が得られるかは不透明なまま。松本自身が一連の経緯を説明する機会が設けられるかどうかが注目される。