頭が良くなりたい人は絶対にやった方がいい、最も効果のある「地頭を鍛える方法」
先行きが見えない「答えのない時代」を生きる私たちにとって、「自分の頭で考える力」は必須です。でも、何をどのように考えれば良いのか、どのように勉強すれば良いのか、具体的な方法がわからない人も多いでしょう。
気鋭の哲学者・山野弘樹氏が、自分の頭で考えて学びを深めるための方法=「独学の思考法」をわかりやすく解説します。
※本記事は山野弘樹『独学の思考法』(講談社現代新書)から抜粋・編集したものです。
地頭を鍛える「哲学的思考」
現在、「独学」や「思考法」に関する本は、実に様々な種類のものが発売されています。「だったら、そうした書籍を一通り読みさえすれば、地頭を賢くしてくれる独学メソッドや思考メソッドなど、簡単に習得できるのではないか?」──そのように考える方は多いかもしれません。
ですが、従来の独学や思考法に関する書籍は、すぐに実践できそうなメソッドを紹介するのに長けている一方で、実は「思考」に関する根本的な問いかけがそもそもできていないという事例が非常に多いのです。本書が独学の実践的なメソッドではなく、独学をするうえでの「思考法」に焦点を当てるべきだと考えるのは、それが理由です。
例えばクリティカル・シンキングについての本であれば、「そもそも、物事を批判するとはどういうことか? また、常識や前提を批判するための視点をどうすれば獲得できるのか?」という問題自体がまず問われねばならないはずです。
ロジカル・シンキングについての本であれば、「そもそも、ある思考が論理的であると言えるのはなぜか? 見方によって、ある主張が論理的に見えたり、見えなかったりすることがあるのではないか?」という問題自体がまず問われなければなりません。
ですが、右に挙げたメソッドを説明する本の中で、こうした「そもそも」の問いにちゃんと取り組んでいる本はほとんどありません(なかには、問いの出し方を説明してくれないのに、「思いつく限りたくさん問いを出そう」、「その中から本質的な問いを見つけよう」と書いてある本まであります)。
「そもそも」の問いかけに取り組むためには、単にメソッドを列挙するのではなく、メソッドをメタ的に(一歩上のレベルで)批判する視点こそが最も重要なのです。
それでは、より実践的かつ本質的な独学に取り組むためにはどうすれば良いのでしょうか。ここで絶大な効力を発揮するのが、「哲学」という学問です。
なぜ哲学が「最良の技法」と言えるのか?
堅い印象のある「哲学」という営みですが、私たちは哲学の歴史の中から、イノベイティブな問いの宝庫を見つけることができます。さらに、近年大手企業や進学校などで導入され始めている「哲学対話」の実践からも、私たちは実に幅広い問いのパターンを学ぶことができます。
いわば「哲学」とは、「常識」の中に埋もれてしまっている「問い」を見つけだし、それを言語化することで、オリジナルな思考を構築し、自分の学び=独学に真摯しん しに向き合うための最良の技法なのです。
私は、これまで東京大学の大学院にて哲学の研究を専門的に行ってきました。哲学を学んだ日々こそは、私に「探究のための独学」の方法を築き上げるためのチャンスとスキルを与えてくれた存在に他なりません。私は本書で、哲学研究のキャリアから得た知見や方法論を余すところなく皆さまにお伝えしたいと思います。
その意味で本書は、独学の方法を伝える独学本であると同時に、地頭を鍛えるための哲学書でもあるという、「一粒で二度おいしい著作」なのです。
さらに連載記事<アタマの良い人が実践している、意外と知られてない「思考力を高める方法」>では、地頭を鍛える方法について解説しています。ぜひご覧ください。