なぜ日本代表・エディーHCはNZに10トライ大敗も「悲観的じゃない」のか? 超速ラグビーの現在地とは
世界ランキング14位のラグビー日本代表は、今年の国内最後のテストマッチとなった「リポビタンDチャンレンジカップ2024」(10月26日、日産スタジアム)で、同3位のニュージーランド代表「オールブラックス」と対戦し19−64で敗れた。10トライを許す完敗にもかかわらず、試合後にエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(64)は、「現状はそれほど悲観的ではありません。割といい方向に向かっている」と前向きな言葉を口にした。その発言の真意と、同HCが掲げてきた“超速ラグビー”の現在地に迫る。
試合は日本が先制し、開始20分までは五分の戦いを演じた。だが、12−14の前半21分に、逆転トライと思われたプレーがビデオ判定で幻となると、流れが一変する。そこから前半だけで5連続トライを決められ、試合の大勢が決まってしまった。エディーHCは「感情面で対応し切ることができなかった」と経験不足からくる選手の動揺が敗因と指摘した。
確かに、31−38と7点差で敗れた22年10月の前回の対戦と先発キャップ数を比較すると、357→254と103も減少している。FWの稲垣啓太、リーチマイケル、BK松島幸太朗といった経験豊富なメンバーは不在で、先発15人中8人が10キャップ以下だった。その中でも指揮官は、ラグビー界の大谷翔平と期待する20歳のFB矢崎由高(早大)のような若手が、強豪相手に経験を積めていることをポジティブに捉え、試合後に言及している。
「矢崎は今、本当に更衣室で絶望しています。でも彼は自分のエフォート(努力)に関して、誇りに思わなくてはいけない。矢崎はまだこの後大学に戻るアマチュアの選手。27年(W杯)には、たぶんプロで全く違った選手に成長している」
一方、オールブラックスも469→383と2年前の対戦から86キャップも減少しており、決してベストのメンバーではなかった。その相手に対して守備が崩壊して大量失点、攻撃も単調なアタックに終始した。掲げてきた超速ラグビーは、世界の強豪に通用しないのではないか−。そんな不安や疑問に対し、エディーHCは「今は超速ラグビーの極端なバージョンをわざとプレーさせている」と答えた。
「少しずつ、こういった形で超速ラグビーのDNAを培っていきたい。そのためには、まず今あるDNAを変える必要があるが、この変化にはリスクが生じる。現状、キックはほとんどしていないに等しく、全てランでアタックをしている。だから、ディフェンスとしては読みやすい。今後は進化の段階で、他の部分をどんどんと追加していくつもりだ」
あくまでターゲットは27年W杯だと強調。超速ラグビー完成のため、痛みや批判は上等で、一歩ずつ前進する覚悟を決めているのだろう。11月の欧州遠征では世界ランク4位のフランス、同5位イングランドといった強豪との対戦を控える。今年最後のテストマッチ期間で、超速ラグビー1年目の集大成をどう見せるのか。進化した姿を期待したい。(デイリースポーツ・松田和城)