この記事をまとめると

■クルマの車名やグレード名はほとんどが横文字のみである

■過去には日本語のグレード名を与えられたクルマがいくつか存在した

■そんな「和」を感じるグレード名を8つ紹介

クルマの車名に日本語があってもいいじゃない!

 テレビ番組などで、よくいえば「日本文化をこよなく愛している外国の人」、あえて悪くいうなら「日本かぶれの外国人」を見たとき、「我が国のカルチャーをそこまで愛してくれてありがとう!!!」という気もちが湧くのと同時に、少々こそばゆい感覚も覚えてしまう。

 それと同様に、シンガポールなどと違ってほぼ日本語オンリーで人々が会話している国であるにもかかわらず、クルマの車名やグレード名がおおむねすべて「NANTOKA CROSSOVER RS」や「KANTOKA SPORT HYBRID G」などの横文字だらけである日本の状況を見て、欧米語を母語とする各位は少々のこそばゆさを感じているのかもしれない。

「オラアアアァァァァ! 日本のメーカーなら、グレード名に日本語を使わんかいヴォケエエエエェェ!」などと叫ぶつもりはないが、やはり「和な感じのグレード名」も、一定数は用意してほしいものだよなぁ……なんてことをツラツラ考えていたら、そういえば過去にはいくつかの「日本語グレード名」をもつクルマもあったことを思い出した。

 強烈なところでは、5代目スバル・サンバー バン(1990〜1999年)に特別仕様車として設定された「サンバーバン さわやか」と「サンバーバン まろやか」だろうか。

 要するに「さわやか」は、当時の商用軽バンでは標準装備ではない場合が多かったエアコンが付いていて、「車内がさわやかになります」というモノだった。そして「かろやか」はエアコンに加えて、これまた当時の商用軽バンでは少なかったパワステも標準装備ゆえ「かろやかに運転できます」というコンセプトの特別仕様車だった。当時のカタログを見ると、さわやかのほうには「今年の夏はクールに走ろう。涼しい顔してしっかり運ぶ、エアコン標準装備。サンバーバン『さわやか』新登場」というシブいコピーが載っていたことがわかる。

オーテック架装車は日本語ネーム豊作!トヨタにもあった

 そのほかでは、日産バネットラルゴをオーテックジャパンが架装した特別仕様車「バネットラルゴ ウミボウズ」の名称的インパクトも強烈だった。スカイブルーとホワイトを中心とする鮮烈なツートンカラーとその名称から「マリンスポーツ愛好家をターゲットとするモデルだな」ということはわかるが、それがなぜ「ウミボウズ(海坊主)」になったのか、いまとなっては不明である。

 オーテックジャパンはバネットラルゴにおいて「ヤマアラシ」という大型ルーフキャリア付きの特別仕様車もリリースしたが、その後、ラルゴがセレナに改名されてから登場した「セレナ キタキツネ」も味わい深い。

 これは要するに冬のアウトドアを楽しんでもらうため撥水処理されたシート表皮やトリム&フロアトリムを採用した仕様だが、さらに加えて「キタキツネ 雪ん子パック」を選択すると、シートヒーターとスタッドレスタイヤが標準装備された。

 現行型のスタイリッシュなセレナに「キタキツネ」のイメージは合わない気がするが、現行型ホンダ・ステップワゴンAIRあたりが「ステップワゴンAIR タンチョウ」なる特別仕様車を作り、白いボディに黒いラインを入れたうえで、どこかに赤いワンポイントをあしらえば、意外と売れるのではないか? いや、売れないか……。

 そんな無駄話はさておき、当時のオーテックジャパンは本当にこの手のネーミングにハマっていたようで、1994年には日産ホーミー「フウライボウ」なんていうモデルもリリースした。

 フウライボウとはもちろん「風来坊」で、当時のカタログによれば「家族や仲間を大切にし、アウトドアライフを楽しんでいる方のための本格的RV。(中略)フロントマスクを引き締めるオーバーライダー組込みフロントグリルガードと、直射日光の眩しさを防ぎエアコンの効率を高める熱反射ハーフミラーガラスを装備して、アウトドアシーンを颯爽と駆け抜けます」というものだったらしい。

 であるならば、現行型の日産キャラバンをヘビーデューティな感じに仕上げて「日産キャラバン TABIBITO(旅人)」なる特別仕様車をいま一度作れば、強敵のトヨタ・ハイエースに対して強烈な一撃を食らわせることができるのではないか? いや、できないか……。

 それはさておき、トヨタのJPN TAXIのグレード名にはご承知のとおり「匠(上級グレード)」と「和(標準グレード)」という日本語が用いられている。

 それ以上にトヨタ車の和ネーミングにおいて秀逸だったのは、ヴォクシーの特別仕様車に用意された「煌」だろう。

 ご存じのとおりヴォクシーの「煌」は、いわゆるヤンキースピリットとそのカルチャーを体内に宿しているユーザーにとってはドンピシャすぎるほどドンピシャなビジュアル感と装備内容、そして「語感」を有する特別仕様車だった。

 まぁそれがどこかの小規模プロショップがカスタムしてオートサロンに出展したものであったなら、とくに何とも思わない。だが、おそらくは旧帝大である名古屋大学あたりの工学部を卒業したトヨタのマジメな人々がアレを作ったと思うと、その的確な仕事っぷりには「……さすがトヨタっす!」という賛辞を贈らざるを得ないのだ。