雑誌やテレビで活躍する料理家の長谷川あかりさん。シンプルかつ独創的で“食べ疲れない”家庭料理に定評があります。今年は初のパーソナルムックも刊行がスタートしました。今回は長谷川さんに、レシピ開発で工夫していること、料理をつくる人への想い、さらに今後の展望についてお伺いしました。

レシピ名は「すてき」に思えるものを考案

――長谷川さんのレシピは、興味をそそられるネーミングも魅力のひとつです。「混ぜるだけ冷やしだしカレー」や、「アボカドナンプラーマヨ奴」など、ムック『長谷川あかり DAILY RECIPE Vol.1』に掲載されている料理も、長谷川さんらしいこだわりが散りばめられていますよね。

長谷川あかりさん(以下、長谷川):なるべくすてきっぽく見える名前を考えるのが好きなんです。というのも、レシピ名は簡単そうなのに、いざつくってみるとプロセスが意外と細かかった…みたいなことが続くと、料理へのハードルって高くなりがちだと思うんですよね。

名前はすてき。だけど、つくる過程がシンプルだったら、そのギャップに自分でも「よし!」とうれしくなりますし。家族やお客様の前にも「どうだ〜」って、自信満々に出せると思うんです。

――なるほど。たしかに「できた」という達成感もありそうですね。

長谷川:“バランスのいい家庭料理”を提供したい、という思いがあるので、野菜を使った料理でも、素材の数を絞るなど、つくっていて疲れないレシピを紹介しています。「今日はトマトの料理」、「外食が続いた今週はブロッコリーの料理をつくってみよう」とか。

1週間や1か月といった単位で、日々の生活に欲しい栄養素を埋めていけば、家で健康のことを考えながら料理をつくるのも苦にならないし、どんな生活の人にも寄り添えるのではないかと思っているんです。

「長谷川あかりの人となり」から生まれるレシピを発信したい

――こうした長谷川さんの興味関心ごとや、暮らしの中から、新しいレシピが生まれてくるのに立ち会えるのは、エッセオンラインの読者にとってもうれしいことです。これから料理家としてやっていきたいことはありますか?

長谷川:レシピって、専門サイトやSNS上で匿名のものが無限に拡散され続けていた時代からまた少し変化してきていて。今は、“この人のレシピだからつくりたい”と、もう少し細かく絞り込まれてきているような気がするんです。

たとえば私は、体を労わってくれるような温かいものやスープが好きだし、どの料理の味つけも、その日によって調節できるような薄味がちょうどいい。趣味は旅や温泉巡りですが、忙しい日々のなかでは、そう頻繁に行けるわけではないので、寝る前にスマホでファッションアイテムを検索するのがリアルな息抜きだったりしています(笑)。

こういうパーソナルな部分も含めて、生まれてくる料理を、ムックはもちろん、これからもいろんなジャンルで発信できたらと思っています。

――現在は、Vol.2(12月12日発売)を制作中と伺いました。どんな内容になりそうでしょうか?

長谷川:このムックで初めて長谷川あかりを知ってくれる方も多いと思うので、SNSにまだ出していない、新しいレシピがたくさん入っています。ずっと自分の中で温めていた「ニンジンとささみの塩バター炒め」をはじめ、初心者の方でもとっつきやすいレシピを集めました。ごちそうからおにぎり、みそ汁レシピまで、バラエティー豊かな内容です。

スタッフの皆さんと打ち合わせを重ね、誌面のビジュアルもVol.1からボリュームアップしました。読んでいるだけでおなかがすいてくるような、おトクな気分になれるような、おいしいものを食べているときの高揚感が得られるような…そんな、“おいしい一冊”になっていると思います。

単に料理だけ、レシピだけということではなく、つくる人、食べる人、器、会話、生活…そういう衣食住の営み全体を、よりよく=おいしく過ごすためのムックでありたいなと思いながら制作しているので、ぜひ手に取っていただけたらうれしいです。