「ブルーインパルス」5年ぶり!11月3日の「入間航空祭」 国内で1機だけ「EC-1」の“初フライト”を見逃すな!
航空自衛隊(空自)入間基地(埼玉県狭山市)の「入間航空祭」が2024年11月3日、5年ぶりに通常開催されます。空自のアクロバット(展示)飛行チーム「ブルーインパルス」の華麗なフライトが、5年ぶりに予定されているほか、入間基地のみ1機配備され、秘匿性の高い電子支援訓練機「EC-1」が初登場。国内最大の航空ショーにレア機のお披露目とあって、例年以上に期待が高まります。
空自最大規模の入間基地、航空祭も国内最大
入間基地は、南東北、関東、中部、近畿地域26都道府県の防空を司る中部航空方面隊司令部が置かれている主要拠点で、空自最大規模の基地です。また輸送機や支援機を運用する第2輸送航空隊や航空救難団等のほか、地対空誘導ミサイル「ペトリオット(PAC3)」が自衛隊で初めて配備されました。
入間航空祭は毎年11月3日の開催ですが、2023年度は11月に航空観閲式が行われたため、年が明けた2024年1月20日に延期されました。しかし、元日に能登半島地震が発生。災害派遣活動のため、23年度の開催は中止されました。
2020、21年度は新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされ、2022年度は、事前申込制だったため、通常開催は5年ぶりとなります。2022年度はブルーインパルスの飛行はありませんでした。
入間航空祭は、都心から最も近い航空祭として知られ、コロナ禍の前は例年、ブルーインパルスの展示飛行が見られたほか、最寄り駅からも徒歩圏内(西武池袋線稲山公園駅から徒歩5分、入間市駅から徒歩15分)であることから、10万人以上の来場者数が訪れる国内最大の航空祭として知られています。
2024年度の関東の航空祭では初飛行、5年ぶり入間の大空を舞う
航空祭の見どころのひとつは、空自のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」のフライトです。青と白にカラーリングされた機体は6機編成で、大空にスモークをなびかせながら、次から次へと精密かつダイナミックなパフォーマンスを繰り広げるほか、ソロでも迫力満点の演技を披露、見る者を一瞬で虜にする魅力にあふれています。
ブルーインパルスについて、空自のHPでは「航空自衛隊の存在を多くの人々に知ってもらうために、航空自衛隊の航空祭や国民的な大きな行事などで、華麗なアクロバット飛行を披露する専門のチーム」と紹介されています。各基地の飛行機部隊の中から選抜された精鋭部隊で編成され、2024年に創設70周年を迎えた空自の歴史の中でも、異彩を放つ存在であることから、航空防衛の任務に関心を持つきっかけにもなっています。
ブルーインパルスの正式名称は?
空自によると、ブルーインパルスの正式名称は、宮城県松島基地の第4航空団に所属する「第11飛行隊」。ブルーインパルスの愛称になったのは、当時のアクロバット飛行チームのリーダーが所属する飛行隊のコールサイン『インパルス』を基にして、一般にもわかりやすく、という理由からです。
そもそもは、浜松北基地(現浜松基地)で創設され、1960(昭和35)年、同地で初の公式展示飛行が行われました。1964(昭和39)年10月10日の東京五輪開会式では、5機が青空に五輪マークを描き、経済復興を遂げた戦後日本を世界にアピールしました。
2011年に起きた東日本大震災では、松島基地にも津波が押し寄せ、甚大な被害を受けましたが、ブルーインパルスは、九州新幹線の全線開通記念フライトで福岡に遠征中だったため、予備機1機を除く6機は、難を逃れました。震災から5カ月後、再び地元の空に舞ったブルーインパルスは“復興のシンボル”として、多くの人々を勇気づけました。
2020年のコロナ禍、2021年の東京五輪開会式でもフライト
各基地の航空祭を沸かせるブルーインパルスですが、航空祭以外でも記念祭や復興祭といったイベントに登場することもあります。
記憶に新しいところでは、コロナ禍にあった2020年、医療従事者らに感謝と敬意を表すべく都心上空を飛行したほか、翌年開催された東京五輪の開会式に合わせて五輪カラーである青、黄、黒、緑、赤のスモークを鮮やかになびかせました。これらのフライトは、都心近郊の入間基地から離着陸しており、改めてブルーインパルスと入間基地の関係性の深さを示しています。
超レア「電子支援訓練機EC-1」が入間で初フライト、入間航空祭で見納めC-1最終号機がラストフライト
ブルーインパルスと並ぶ目玉になると思われるのが、入間航空祭オープニングフライトで初飛行が予定されている電子支援訓練機「EC-1」です。
EC-1は、電波妨害装置が搭載されており、C-1輸送機をベースに改造した、カモノハシのような機首を持つ迷彩塗装で、迫力ある外観が特徴的です。電波情報の収集・分析を基に、強力な妨害電波を発信することで、相手からの電子戦の攻撃から守る環境を疑似的に再現し、各地の部隊やレーダーサイトに対して訓練支援にあたるものと思われます。近年、有事の想定範囲は、従来の陸海空にとどまらず、宇宙、サイバー、電磁波といった横断的に防衛するのに合わせ、EC-1の任務も今後、重要性が高まることでしょう。
ただ、空自のHPにある装備の一覧を見ても、EC-1の記載は見当たらないことから、極めて機密性が高く、機体や任務の詳細は明らかにされていません。
入間基地には、空自唯一の電子作戦群電子戦隊が配置されていることから、EC-1が配備されているのは同基地の1機のみです。
2024年度は既に松島基地(宮城県東松島市・8月)および千歳基地(北海道千歳市・9月)それぞれの航空祭で地上展示が行われ、話題となりましたが、航空祭のフライトは、入間が初めてとなります。基地の担当者は「EC-1の機体のベースであるC-1輸送機が、老朽化で次々と退役しており、EC-1も近い将来の退役を視野に公開に踏み切りました」と、説明しています。
さらに2024年度の入間航空祭は終了時まで、目が離せません。航空祭で有終の美を飾るのは、C-1輸送機の最終号機のラストフライトです。
1970年代半ばから半世紀以上にわたり、国産の輸送機として活躍してきたC-1は機体の老朽化に伴い、順次退役が進んでいましたが、最終号機の入間でのラストフライトをもって、残すは数機に留まり、その役目を終えつつあります。
見納め近いC1、F15とF2は地上展示のみ
他にも、C-1、C-2輸送機の編隊飛行などが予定されています。C1は先述の通り、老朽化のためすべての機体の退役が迫っており、目にする数少ない機会となりそうです。
地上展示では、小松基地(石川県)に所属するF15 戦闘機や百里基地(茨城県小美玉市)所属のF-2 戦闘機、海上自衛隊の哨戒ヘリコプターSH−60Kなどを間近で見られるチャンスです。ただ、入間基地では、地元住民との協定で戦闘機が配備されていないため、戦闘機の飛行はありません。
つい、華やかな航空ショーに目が釘付けになりがちですが、日々、日本の領空を守るため過酷な訓練を重ね、高い志のもと責務を果たしている自衛隊員にも思いを馳せたいものです。
※プログラムの内容は、天候などで当日一部変更になる場合もあります。詳細は、公式HPでご確認ください。
文/中島幸恵、写真提供/航空自衛隊および航空自衛隊入間基地
■「入間航空祭」
【日時】2024年11月3日(日)9時〜15時(開門9時)
【実施場所】「航空自衛隊 入間基地」埼玉県狭山市稲荷山2−3(※入間基地正門、稲荷山門、北門、狭山市役所前臨時門から出入可能)
【料金】入場無料
【交通】西武池袋線「稲荷山公園駅」から徒歩5分/西武池袋線「入間市駅」から徒歩15分(※駐車場がないため、徒歩や交通機関を利用する)
【問い合わせ先】「航空自衛隊入間基地」04−2953−6131(内線2317)
【公式HP】https://www.mod.go.jp/asdf/iruma/kouhou/public_airshow/index2024.html