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近年、健康寿命と口の機能の関係に注目が集まり、口腔ケアの意識が高まっています。一方で、「いつもの癖で適当に歯磨きをしている」「何年も歯科医院に行っていない」という人も多いのではないでしょうか。歯磨き指導のプロに、健康長寿に繋がる口腔ケアの心構えを聞きました(構成=浦上泰栄 イラスト=オガワユミエ)

【イラスト】舌と歯の理想のポジションとは…?

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その3よりつづく

口腔ケアの素朴な疑問Q&A

きちんとケアをしているつもりでも、小さな不安や悩みは出てくるもの。

今さら聞けない疑問に吉田直美さんが答えます

Q 高齢になるとインプラント治療は受けられない?

70、80代になっても、インプラント治療を受けることは可能です。ただし、麻酔を使う外科手術ですから、体が健康で口腔内の状態もよく、インプラントを支える部分の骨の厚みがしっかりある、などの条件を備えていることが必要になります。

また、術後に口腔内の清掃がしっかりできないと歯周病に罹りやすくなることも。インプラントを埋めた部位が歯周病になって「インプラント周囲炎」を発症すると、インプラントを抜かなければなりません。口腔ケアを自宅でしっかりできるか、施術を受けた歯科医院で定期的にメンテナンスを受けられるかなど、術後のケアについてもよく考えてから施術を受けるか決めましょう。

Q 年齢を重ねて口が乾くようになってきた

更年期以降、女性ホルモンの分泌が低下することによって唾液の分泌量が減少するため、口やのどの乾きを訴える人が多くなります。

そのほかの原因としては、口呼吸になっていること。舌が正しい位置にないと口がポカンと開いた状態になり、口内がカラカラに乾きやすくなります。舌の正しい位置は、舌先が上の前歯の付け根あたりにちょこんと触れている状態で、この位置が保たれていれば自然と鼻呼吸に導かれます。

口を閉じた時、舌先がどこにも触れていない、下方向にだらりと落ちているというのは、舌の力が低下している証。常に舌の位置に意識を向けるようにしましょう。

なおリラックスしている時は、口は閉じていても上下の歯は離れているのが正しい状態。接触していると歯に負担がかかり歯周病の進行や顎関節症の発症の要因になるので注意して。

【 舌の位置、歯の位置を確認 】

舌先が上の前歯の付け根の手前にちょんと触れているのが理想のポジション。読書中など無意識の時に舌が下がって口呼吸になっていないかチェック。また上下の歯は離すよう心掛けて

Q 歯の健康によくない食べものを知りたい

ジュースや甘い炭酸飲料などに含まれる果糖やブドウ糖は、むし歯のリスクを高めます。1日に何杯も飲んだり、だらだらと飲み続けたりするのはやめましょう。

熱中症の予防に飲むスポーツドリンクも実は糖分が多く含まれています。水を足して薄めながら飲む、飲んだあとは歯を磨くなどの工夫が必要です

おせんべいは甘くないから大丈夫と思う人がいるかもしれませんが、材料の米に含まれる糖分は決して少なくありません。

食べる量や頻度を減らし、食べたあとの歯磨きは欠かさずに行ってください。

Q きちんと歯を磨いているのに口臭が気になる

口臭の原因はいろいろありますが、最大の原因は歯周病。歯周病の原因菌が増殖すると、揮発性硫黄化合物のガスを放出し不快な臭いを発生させます。トラブルを抱えている人は、まず歯周病の治療に取り組んでください。

また唾液の分泌量の減少も口臭の一因。ストレスや加齢、服薬などで分泌が減ると、唾液による殺菌・洗浄作用が低下するのです。耳の下の「耳下腺」、あごの下の「顎下腺」、下あごの先の「舌下腺」をマッサージして分泌を促すのもひとつの手。

そして舌の表面に溜まった白っぽい舌苔(ぜったい)(汚れや細菌)も、口臭の原因になります。歯のブラッシングに加え、舌苔の掃除も日々の習慣にしましょう。舌の表面は傷つきやすいので、歯ブラシではなく専用のブラシを使い、奥から手前へとやさしく引いて汚れを取り除きます。

【舌苔掃除は専用の道具で】

舌掃除には専用の舌ブラシか、口腔粘膜ケア用のブラシを使う。奥から手前にやさしく引いて汚れを除去


舌ブラシと口腔粘膜ケア用ブラシ


舌ブラシの使い方

Q 口周りの機能をアップする運動を教えて

滑舌が悪くなる、食べものをこぼす、むせる……。こうした症状はいずれも、口周りの筋肉の衰えによるものです。

放っておくと、口の中が汚れやすくなってむし歯や歯周病の原因になるだけでなく、栄養不良や誤嚥からさまざまな病気を招くおそれも。口周りの筋肉や舌の力を鍛える運動で口腔機能のアップを目指しましょう。

ここでは食べこぼしや、飲み込む力を改善する2つの体操を紹介します。いずれも5回1セットとして、1日1〜2セットを目安に行ってください。

【ベロ出しゴックン】

のどの筋肉を鍛えて、飲み込む力を強くするエクササイズ。

(1)舌を少し出し、唇を閉じて舌を挟む。

(2)そのまま唾液を飲み込む動作を5回繰り返す。1日1回行う。舌を出しすぎないのがコツ


ベロ出しゴックン

【お口でグーチョキパー】

食べこぼしや滑舌の悪化防止に。「グー」と声に出すイメージで、唇の内側が見えるくらいまで突き出す


唇を尖らせて突き出す

「チョキ」と声に出すイメージで、上下の歯が見えるくらいまで、唇を左右に目いっぱい引く


唇を左右に大きく引く

「パー」と発音するイメージで口を大きく開ける。大きさは指3 本が縦に入るくらい。無理のない範囲で行う


口を大きく開ける