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厚生労働省の資料「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度の厚生年金の平均受給月額は14万3973円だったそうです。少子高齢化や「老後2000万円問題」などで、老後の資金に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そんななか「無理な投資をしなくても、公的制度を賢く利用すれば<減らない財布>が手に入る」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんです。今回は、長尾さんの著書『投資ゼロで老後資金をつくる』から一部引用、再編集してお届けします。

【書影】お金に困らずに生きる「逆転のマネー発想術」を人気FPが伝授!長尾義弘『投資ゼロで老後資金をつくる』

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「減らない財布」を手に入れると、「お金の心配」から解放される

70歳の女性で、ひとり暮らしをしている方からお金の相談を受けました。貯蓄は5000万円あります。

私はてっきり相続に関する相談だと思いました。ところが、老後資金について悩みがあるとおっしゃいます。

公的年金は、夫の遺族年金を含めて月額20万円あります。一方、生活費で毎月30万円を使っています。月に10万円(年間で120万円)の赤字です。その足りない分は、貯蓄を取り崩しているそうです。どこに問題があるのか、よくわかりません。

女性はこう訴えます。

「お金がどんどん減っていくのが心配で心配で。夜も眠れないのです」

この心配には驚きました。

月に10万円(年間120万円)ずつ取り崩していっても、5000万円のお金が尽きるのに41年かかります(120万円×41年=4920万円)。

つまり、111歳までは、老後資金がもつ計算になります。

老後のお金でもっとも重要なこと

彼女の場合、老後資金が足りなくなる心配はしなくても大丈夫です。それよりも、相続問題のほうが心配でしょう。

傍目には、笑い話のように聞こえます。とはいえ、「お金が減っていくこと」は、本人にとっては深刻な悩みなのです。

どんなにお金があったとしても、それを取り崩す生活は、預金の残高が減り続けます。預金通帳を見るたびにため息をついているようでは、不安は募るばかりです。不安を抱えながらの生活は精神衛生上よくありませんし、何より楽しくありません。

老後生活は、お金があれば安心というわけではないのです。

老後資金を2000万円、4000万円と準備したとしても、そのお金が減っていくことに変わりはありません。あとどのくらいもつのだろうという不安は、多かれ少なかれつきまといます。

世の中には、「老後資金を貯めることが大切」だの「老後資金をいかに運用すべきか」といった情報があふれています。

しかし、こうした風潮に惑わされてはいけません。

老後のお金でもっとも重要なことは「収支のバランス」です。「収支のバランス」が取れていれば、老後資金はそれほど必要ありません。そして、お金が減り続ける恐怖に苦しめられることもなくなります。

毎月、入ってくるお金と出ていくお金がトントン、もしくは収入が上回っているなら、「お金がなくなる」心配から解放されます。

逆に、バランスが悪くて支出が多いと、老後資金を取り崩すしかなく、お金は減っていくばかりです。

「収支のバランス」を取るためのポイント

ここでお伝えしたいのは、「収支のバランス」を取るために、「支出」を減らすという節約の話ではありません。また「収入」を増やすために、危ない投資をするという話でもありません。

この「収支のバランス」を取るためには、「減らない財布」を手に入れることがポイントです。


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魔法のような「減らない財布」のベースとなるのはじつは公的年金です。

公的年金は、年6回、偶数月の15日に2ヵ月分が振り込まれます。振り込みは生きている限り続きます。

そのお金を使い切ったとしても、2ヵ月後の財布の中身は元通りになっています。つまり、使っても減らないのです。

ただし、単に65歳でそのまま年金を受け取っただけでは、「減らない財布」とは言えません。それでは年金額が少ないからです。「減らない財布」ではなく「足りない財布」になってしまいかねません。

そこで公的年金を賢く増やして「減らない財布」を手に入れることによって、お金がない、お金が減っていく不安から解放されます。お金の心配がない老後生活は、それだけでも幸福度が大きく上がるでしょう。

「老後資金2000万円問題」とは何か

いくつものアンケート調査によれば、約8割の人が「老後が不安だ」と感じています。その要因の第1位は「老後のお金」です。

定年後には長い時間が残っています。長い老後をお金の心配をしながら過ごすのは、イヤなものでしょう。

老後のお金に対する不安とは、「老後資金が足りないこと」と言い換えられるのではないでしょうか。

2019年に「老後資金2000万円問題」が大きく取り上げられました。それ以来、老後資金に不安を覚える人が増えたのです。

老後資金について考えるようになったのは、とてもよいことだと思います。反面、インパクトが強かったせいか、「2000万円」という数字がひとり歩きしてしまいました。

それ以上のお金を用意しなければ老後は生活ができないと思われ、不安を煽ったことはマイナスだと感じています。

※本稿は、『投資ゼロで老後資金をつくる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。