実質中1日も2試合連続フル出場 A・ロペスが示したエースの矜持「皆さんの思いに応えなければいけない」
天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会準々決勝が9月25日に行われ、横浜F・マリノスはレノファ山口に5−1で勝利を収めた。
両チームに退場者が出るなど、決して簡単な試合展開ではなかった。それでもマリノスは最後まで主導権を渡さず5得点。直近2試合で13失点と苦しんでいた守備陣も大崩れすることなく、公式戦5試合ぶりの勝利を手にして準決勝へと駒を進めた。
「退場などいろいろあった試合で、厳しい時間帯もありましたけど、勝てたのはすごくよかった。この大会はしっかりと優勝したいので、大きな前進だったのではないかと思います」
試合を終えた後のアンデルソン・ロペスは、安堵の表情でそう語った。
横浜FMは22日にアウェイでサンフレッチェ広島とのリーグ戦をこなした翌日、横浜に戻る過程で東海道・山陽新幹線の遅延トラブルに巻き込まれた。結局、チーム全員が自宅に戻れたのは9月23日の夕方。広島戦に帯同した選手たちはリカバリーも含めて前日しか練習ができず、実質中1日で山口との天皇杯に臨むこととなった。
それでもA・ロペスは広島戦から2試合連続のフル出場で気を吐いた。さらに1得点1アシストで攻撃をけん引し、準決勝進出の立役者となった。
後半開始してすぐの51分、センターサークル手前で山根陸からの縦パスを受けたA・ロペスはファーストタッチで相手のマークを剥がし、振り向きざまにスルーパスを繰り出す。それに左サイドからエウベルが抜け出し、GKとの1対1を冷静に制してシュートを流し込んだ。
「(山根)陸にはいつも『前にプレーしろ、前に当ててくれ』と言っています。あれだけ能力や質の高い選手ですし、前にプレーすればチームの武器になるので、いつもそう言っているんです。そうしたら今日はダイレクトで僕にパスを出してくれた。僕はエウベルが走っているところが見えたので、前に彼のスピードを殺さないようなパスを出しました。しっかり決めてくれて、アシストがついたのでよかったです」
若干バックスピンがかかったようなA・ロペスのパスによって、エウベルはトップスピードのままゴールへ向かっていくことができた。山根が相手のミスパスを拾ったところから10秒ほどでゴールを陥れる、完璧なカウンターだった。
3点リードだった終盤の86分には見事なコンビネーションからゴールネットを揺らした。左サイドに回っていた水沼宏太から斜めのパスを受けたA・ロペスは、西村拓真との丁寧なワンツーで山口のディフェンスラインを破り、GKの動きを見極めて柔らかなループシュートを決めた。
「(水沼)宏太からパスが来て、その後に(西村)拓真とワンツーをして、拓真もしっかりと見えていて、正確なパスを僕に送ってくれた。あとは冷静に決めるだけでした」
A・ロペスは古巣である広島との一戦でもゴールを奪っていたが、試合は2−6の大敗。公式戦4連敗と苦しんでいた中で、背番号10の胸の内には燃えるものがあった。「選手たちの中では『リアクションがなければいけない』と話していました」と明かすトリコロールのエースストライカーは、さらに続ける。
「チーム全員が支えてくれているファン・サポーターの皆さんの思いに応えなければいけない中で、こうやって勝てたのはよかったです。最近の2試合で大量失点をしたことに対しては本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、また勝ててよかったと思います」
ホームで何としても勝利を取り戻し、悪い流れを払拭する。そして、勝利によってどんなに苦しい状況でも支え続けてくれるファン・サポーターの気持ちに報いる。この日のゴールへ向かっていくパワーや献身的なプレッシングに、いつも以上の迫力を感じたのは1試合にかける思いが強かったからだろう。
今年は天皇杯とYBCルヴァンカップで2つのカップタイトルを獲れるチャンスがあり、リーグ戦でも終盤に向けてまだ順位を上げていける余地が残っている。A・ロペス個人にとっても2年連続のJリーグ得点王という目標がある。山あり谷ありのシーズンをいい形で締めくくるためにも、ここで下を向いているわけにはいかない。山口戦で得た手応えをこれからの戦いに向けたポジティブなエネルギーにつなげられるかが、今は何よりも重要だ。
「今日の勝利で天皇杯準決勝に進めたことによって、チームには自信がついた。次はリーグ戦。僕たちは毎試合、目の前の試合に勝つことに集中していきたいと思います」
28日に予定されているFC東京とのリーグ戦は、山口戦よりもはるかに難しい試合となるに違いない。横浜FMは天皇杯でつかんだきっかけを本格的な復調につなげていけるだろうか。約1カ月半ぶりに日産スタジアムへ帰るホームゲームで勝ち点3を積み重ねるにはA・ロペスの力が不可欠だ。
取材・文=舩木渉
両チームに退場者が出るなど、決して簡単な試合展開ではなかった。それでもマリノスは最後まで主導権を渡さず5得点。直近2試合で13失点と苦しんでいた守備陣も大崩れすることなく、公式戦5試合ぶりの勝利を手にして準決勝へと駒を進めた。
「退場などいろいろあった試合で、厳しい時間帯もありましたけど、勝てたのはすごくよかった。この大会はしっかりと優勝したいので、大きな前進だったのではないかと思います」
横浜FMは22日にアウェイでサンフレッチェ広島とのリーグ戦をこなした翌日、横浜に戻る過程で東海道・山陽新幹線の遅延トラブルに巻き込まれた。結局、チーム全員が自宅に戻れたのは9月23日の夕方。広島戦に帯同した選手たちはリカバリーも含めて前日しか練習ができず、実質中1日で山口との天皇杯に臨むこととなった。
それでもA・ロペスは広島戦から2試合連続のフル出場で気を吐いた。さらに1得点1アシストで攻撃をけん引し、準決勝進出の立役者となった。
後半開始してすぐの51分、センターサークル手前で山根陸からの縦パスを受けたA・ロペスはファーストタッチで相手のマークを剥がし、振り向きざまにスルーパスを繰り出す。それに左サイドからエウベルが抜け出し、GKとの1対1を冷静に制してシュートを流し込んだ。
「(山根)陸にはいつも『前にプレーしろ、前に当ててくれ』と言っています。あれだけ能力や質の高い選手ですし、前にプレーすればチームの武器になるので、いつもそう言っているんです。そうしたら今日はダイレクトで僕にパスを出してくれた。僕はエウベルが走っているところが見えたので、前に彼のスピードを殺さないようなパスを出しました。しっかり決めてくれて、アシストがついたのでよかったです」
若干バックスピンがかかったようなA・ロペスのパスによって、エウベルはトップスピードのままゴールへ向かっていくことができた。山根が相手のミスパスを拾ったところから10秒ほどでゴールを陥れる、完璧なカウンターだった。
3点リードだった終盤の86分には見事なコンビネーションからゴールネットを揺らした。左サイドに回っていた水沼宏太から斜めのパスを受けたA・ロペスは、西村拓真との丁寧なワンツーで山口のディフェンスラインを破り、GKの動きを見極めて柔らかなループシュートを決めた。
「(水沼)宏太からパスが来て、その後に(西村)拓真とワンツーをして、拓真もしっかりと見えていて、正確なパスを僕に送ってくれた。あとは冷静に決めるだけでした」
A・ロペスは古巣である広島との一戦でもゴールを奪っていたが、試合は2−6の大敗。公式戦4連敗と苦しんでいた中で、背番号10の胸の内には燃えるものがあった。「選手たちの中では『リアクションがなければいけない』と話していました」と明かすトリコロールのエースストライカーは、さらに続ける。
「チーム全員が支えてくれているファン・サポーターの皆さんの思いに応えなければいけない中で、こうやって勝てたのはよかったです。最近の2試合で大量失点をしたことに対しては本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、また勝ててよかったと思います」
ホームで何としても勝利を取り戻し、悪い流れを払拭する。そして、勝利によってどんなに苦しい状況でも支え続けてくれるファン・サポーターの気持ちに報いる。この日のゴールへ向かっていくパワーや献身的なプレッシングに、いつも以上の迫力を感じたのは1試合にかける思いが強かったからだろう。
今年は天皇杯とYBCルヴァンカップで2つのカップタイトルを獲れるチャンスがあり、リーグ戦でも終盤に向けてまだ順位を上げていける余地が残っている。A・ロペス個人にとっても2年連続のJリーグ得点王という目標がある。山あり谷ありのシーズンをいい形で締めくくるためにも、ここで下を向いているわけにはいかない。山口戦で得た手応えをこれからの戦いに向けたポジティブなエネルギーにつなげられるかが、今は何よりも重要だ。
「今日の勝利で天皇杯準決勝に進めたことによって、チームには自信がついた。次はリーグ戦。僕たちは毎試合、目の前の試合に勝つことに集中していきたいと思います」
28日に予定されているFC東京とのリーグ戦は、山口戦よりもはるかに難しい試合となるに違いない。横浜FMは天皇杯でつかんだきっかけを本格的な復調につなげていけるだろうか。約1カ月半ぶりに日産スタジアムへ帰るホームゲームで勝ち点3を積み重ねるにはA・ロペスの力が不可欠だ。
取材・文=舩木渉