「乳がんのホルモン療法」はどんな目的で行うの?考えられる副作用も解説!

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乳がんを患ったらどんな治療法をしたらいいの?
このような疑問を抱えている方も多いと思います。
本記事では、乳がんの検査方法や薬物療法について以下の点を中心にご紹介します。

・乳がんとは?

・乳がんの診断・検査

・乳がんの薬物療法

乳がんのホルモン療法について幅広く理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

≫「乳がんを発症すると痛み」は感じる?原因についても解説!【医師監修】

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

乳がんとは?

乳がんは、乳房の乳腺組織から始まる悪性腫瘍であり、女性に多く見られるがんの一種です。乳腺は母乳を生成する小葉と、乳頭まで運ぶ乳管で構成されており、乳がんはこの乳管や小葉から発生します。
約90%の割合で乳管から始まる乳管がんで、後の10%は小葉がんが占めています。乳がんは、早期発見が重要で、定期的な検診が推奨されています。治療後も長期にわたる経過観察が必要で、再発に注意が必要です。

乳がんの症状

乳がんの症状は初期にはほとんど自覚されにくいものの、進行するにつれてさまざまな兆候が現れます。主な症状は以下の通りです。

・乳房のしこり:しこりが硬く動きにくい特徴があります。

・乳頭の変化:乳頭から血液混じりの分泌物が出て、乳頭がへこんだりします。

・皮膚の変化:乳房の皮膚に湿疹やただれが現れたり、皮膚にえくぼやへこみが生じたりします。

・乳房の痛み:乳がんでは珍しい症状ですが、痛みを感じることもあります。

・腋下の腫れ:腋下のリンパ節に転移すると、腫れやしこりが感じられることがあります。

これらの症状はほかの病気でも見られるため、自己診断せずに異常を感じたら速やかに医師の診断を受けることが重要です。

乳がんの原因

乳がんの原因は完全には明らかになっていませんが、遺伝的要因、ホルモンの影響、生活習慣などが関与すると考えられています。

具体的な原因は以下の通りです。

・遺伝:一親等内に乳がんの患者さんがいる場合や、特定の遺伝子変異(BRCA1/BRCA2)の存在はリスクを高めます。

・ホルモンの影響:初経が早い、閉経が遅い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳歴がない場合など、エストロゲンに長期間さらされる状況がリスクを高めます。

・生活習慣:閉経後の肥満、飲酒習慣、不健康な食生活、運動不足などもリスク要因とされます。

特に、生活習慣の変化、特に西洋化した食生活や運動不足は、乳がんリスクを増加させるため、リスク要因を理解し、管理することが重要です。

乳がんの診断・検査

乳がんを診断するためにどのような検査が必要なのでしょうか?
以下で詳しく解説します。

視診・触診

乳がんの検査では、視診と触診が基本的な方法として用いられます。視診では乳房の皮膚の状態、乳頭の変形や分泌物の有無、乳房の形や大きさの変化を確認します。
触診では、医師が直接手で乳房や脇の下を触り、しこりや硬さ、そのほかの異常を探します。これらの検査により、さらに詳細な検査が必要かどうかの判断が行われます。

マンモグラフィ

乳がんの診断におけるマンモグラフィは、乳房のX線画像を用いて異常を検出する方法です。この検査では、乳房の組織を平らにしてX線を通し、しこりやカルシウムの沈着など、肉眼では見えない変化を捉えます。
マンモグラフィは、早期の乳がんを発見するための重要な方法であり、特に40歳以上の女性に推奨されています。

超音波検査

超音波検査では、高周波の音波を用いて乳房内部の画像を作成し、マンモグラフィで見つかった異常部位のさらなる確認や、特に乳腺組織が密集している女性の検査に役立ちます。
超音波検査によって、乳房内のしこりが固体(がんの可能性が高い)か液体(嚢胞)かを区別し、より正確な診断に導きます。

病理検査

病理検査では、患者さんの乳房から直接組織や細胞のサンプルを採取し、採取したものを顕微鏡で詳しく調べます。病理検査によって、がん細胞の存在やその種類を正確に特定できることにより、患者さんに適した治療計画を立てられるようになります。

MRI検査・CT検査・骨シンチグラフィ・PET検査

乳がんの診断には、いくつかの画像検査が用いられます。MRI検査は、特に乳腺の密度が高い人に適しており、乳がんの細かい部分まで詳細に確認できます。
また、がんの広がり具合も把握できるため、診断と治療計画に役立ちます。CT検査では、体の断面を詳細に映し出し、がんの存在やほかの臓器への転移の有無を調べられます。
骨シンチグラフィは、骨への転移を特定する際に重要で、PET検査はがん細胞が活動している場所を特定するために、放射性トレーサーを使用します。
これらの検査は、乳がんの正確な診断、進行度の確認、そして治療計画の策定に必要不可欠です。

腫瘍マーカー検査

乳がんの腫瘍マーカー検査は、血液中のがんを測定し、がんの存在や進行を示唆するものです。
これらのマーカーは、がんの診断を補助し、治療の経過をモニタリングするために用いられます。
ただし、腫瘍マーカーは乳がんに特有ではなく、ほかの病気でも上昇することがあるため、ほかの検査(マンモグラフィ、超音波検査、MRI、病理検査)と組み合わせる必要があります。

乳がんの薬物療法

乳がんは、化学療法、ホルモン療法、分子標的治療など、がんの種類や進行状況に応じてさまざまな薬物が使用されます。以下でそれぞれの治療法について詳しく解説します。

ホルモン療法

乳がん治療におけるホルモン療法は、がん細胞の成長を促すホルモンの影響を抑えることを目的としています。この治療は、主にホルモン受容体陽性の乳がん患者さんに対して行われます。

・手術前ホルモン療法:大きなしこりを小さくして手術を容易にするために行われます。特に、乳房温存手術が難しい場合に効果が期待でき、しこりの縮小によって温存手術が可能になることがあります。

・手術後ホルモン療法:がん細胞の増殖を抑え、再発を防ぐ目的で行います。治療期間は5年間ですが、再発リスクに応じて10年間継続することもあります。

・転移がんへのホルモン療法:ホルモン受容体陽性の転移がんに対しても行われます。閉経前はLH-RHアゴニストと抗エストロゲン薬の併用、閉経後はアロマターゼ阻害薬や抗エストロゲン薬が使用されます。

ホルモン療法は、患者さんのホルモン受容体の状態や閉経前後の状況に応じて、適切な薬剤が選択されます。

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法は、手術前の腫瘍縮小(術前化学療法)や、治療の効果を判断する目的でも行われます。特に、ホルモン受容体が少ないか全くない乳がん(例:HER2陽性型、トリプルネガティブ型)に対しては、この治療法が適しています。
化学療法は、細胞の増殖を阻害することでがん細胞を攻撃する治療法ですが、脱毛、倦怠感、神経障害、骨髄抑制などの副作用が生じる可能性を理解しておく必要があります。

ゲノム医療

乳がん治療におけるゲノム医療は、患者さん一人ひとりの遺伝子情報を基に個別化された治療を目指しています。がん細胞から採取した組織を分析し、多数の遺伝子を調査する「がん遺伝子パネル検査」を通じて、遺伝子変異を特定します。
しかし、ゲノム医療は、まだ進行中であるため、全ての患者さんに治療薬を提供できるわけではありません。そのため、具体的な治療法に関しては、医師との相談が必要です。

乳がんについてよくある質問

ここまで乳がんなどを紹介しました。ここでは乳がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

乳がんに対する注意を始めるべき年齢は何歳ですか?

甲斐沼 孟(医師)

乳がんに対する注意を始めるべき年齢は、一般的には20歳からとされています。この年齢から自己検診を始めることが推奨されており、特に家族歴がある場合などは、さらに早い段階での注意が必要です。

乳がんは転移や再発がありますか?

甲斐沼 孟(医師)

乳がんは転移や再発があります。乳がんの転移とは、がん細胞が乳房以外の体の部位に広がることを指します。一方、再発は、治療後に乳がんが再び発生することを意味します。
転移や再発のサインには、新たなしこり、元の部位またはほかの部位の痛みや変化、体重減少、疲労感、骨の痛みなどがあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談することが重要です。

ホルモン療法に副作用はありますか?

甲斐沼 孟(医師)

ホルモン療法は、副作用が少ないとされる治療法ですが、患者さんによっては副作用が見られます。主な副作用には、更年期に似た症状(例:ホットフラッシュ)、骨密度の低下、関節痛などが含まれます。これらの副作用は、ホルモンの変化によって引き起こされるとされています。

まとめ

ここまで乳がんのホルモン療法についてお伝えしてきました。
乳がんのホルモン療法の要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

・乳がんが発症する原因は遺伝的要因、ホルモンの影響、生活習慣などが関与するといわれている

・乳がん診断には視診・触診、マンモグラフィ、超音波検査、病理検査、MRI、CT、骨シンチグラフィ、PET検査などの検査は、正確な診断と適切な治療計画の策定に不可欠

・乳がんの治療法は、がんの種類や進行状況に応じて選択される

乳がんと関連する病気

乳がんと関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

乳腺外科

乳腺症乳腺線維腺腫

葉状腫瘍

乳腺炎

嚢胞

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

乳がんと関連する症状

乳がんと関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

乳房のしこり

乳頭分泌

湿疹・びらん

皮膚凹凸

変形

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

参考文献

日本医師会ホームページ

がんの種類別情報 乳がんを学ぶ