そこはかとなくブサイクだけど最高にかわいい! いくえみ綾と愛猫ブンとの日常を描いた猫コミックエッセイ

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 犬や猫などの動物が好きな人は、自分の家のペットを「うちの子が一番かわいい」と信じ、惜しみなく大きな愛をそそいでいるものだ。『そろえてちょうだい?』(いくえみ綾/祥伝社)は、『潔く柔く』などで人気を博している漫画家いくえみ綾さんのペットの猫、「ブン」との日々を描いたマンガだ。ブンの独特のかわいさだけでなく、そんな姿に翻弄されるまわりの人たちの生態も存分に楽しむことができる作品だ。

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 過去には何匹かペットを飼っていたけれど、当時、いくえみ家にいたネコは1匹だけ。かわいいけれど怒りっぽく、あまり構わせてくれない。庭に野良ネコはくるけれど、野良なのでいつのまにかいなくなってしまう。どこか物足りなさを感じていたときにペットショップで見かけたのが黒白ブチのスコティッシュフォールドのオス。そこはかとなくブサイクだし、生後10カ月でもう結構大きい。しばし悩んだものの、結局は家族として迎え入れ、彼は「ブン」と名付けられることになる。

 足をあまり曲げず、つっぱりながら歩いているように見える歩きかただったり、休むときには両足が投げだされ交差していたり。しぐさがちょっと変わっていて、思った以上に甘え上手。そんなところがかわいくてしょうがない。ブンはきて早々、いくえみ家のアイドルの座を奪いとっていくのだった。

 ブンのかわいさは、一般的なネコとはずいぶん違う。というよりも、いくえみ綾さんが「かわいい!」と着目する部分が独特なのかもしれない。おもちゃを咥え走ってくるブンの構ってほしい気持ちが高まりすぎて、首が伸び、くしゃくしゃの表情になっている様だったり、寝転がって遊んでいると夢中になりすぎて、足が「Lの字」に開いている様だったり。かわいいとは言い切れないようなブンの行動を、愛情をもって見つめるひとみがあるからこそ、そこにかわいさを感じることができるのだ。

 また、そんなブンの愛らしさに、日々もだえ苦しむいくえみ家の様子が描かれているからこそ、わたしたちも自然とブンの持つ独特の雰囲気にとりこまれてしまうのだろう。いくえみ家にはその後ペットが増え、ペット同士の関係性を見ているのも楽しい。「うちのペットが一番」と溺愛するがゆえに、叱るときでも赤ちゃん言葉になってしまう人間にも笑わずにはいられない。そんなブンといくえみ家の日常を楽しんでもらいたい。

文=ネゴト / たけのこ