Image: DeBeaubien and Chandel et al via Gizmodo US

酷暑が去れば、奴が来る…。

今年の夏は蚊が少ないなーと思っている方に、残念なお知らせです。酷暑の今年は、蚊のトップシーズンが9月10月に訪れるかもしれません。

蚊も酷暑にぐったり…?

蚊といえば8月あたりに多くなるイメージがありますが、実は彼ら活動するうえでの適温は25℃から30℃。それ以上気温が高すぎると飛べなくなったり死んでしまったりするため、昨今の酷暑で夏の間は蚊も木陰でひっそりと過ごしているようです。

これから秋が来れば気温も下がりますし、雨で湿度も上がりますから、そうなるとたちまち蚊が元気になることが予想されます。なので、10月下旬くらいまでは対策が必要になるかもしれません。

蚊は赤外線や温度など、複数の要因を頼りに人間を検知

暗がりでも長袖を着ていても、蚊って目ざとく我々を見つけてきますよね。実は、吸血蚊はいろんな情報を頼りにターゲットを探していて、熱赤外線なんてものもその中に含まれるんだとか。

今週、科学誌『Nature』に掲載された研究によると、ある生物学の研究者チームがネッタイシマカという種類の蚊について調査。蚊の赤外線検出機能と、それに関連する形態学的・生化学的構造についての研究結果を発表しました。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の生物学者で、この研究の共同筆者であるアビナッシュ・シャンデル氏は、プレスリリースの中で次のように述べています:

蚊がターゲットを見つける要因には、吐き出した息に含まれる二酸化炭素、におい、視覚、皮膚からの(対流)熱、体から発せられる湿度が含まれます。

ただ、1つ1つの手がかりだけではそれぞれ限界があります。

蚊が厄介なのは、刺されれば腫れてかゆくなるだけでなく、デング熱や黄熱病、ジカ熱といった病気にかかる恐れがあること。なので近年、科学者の間では「蚊がどうやってターゲットを見つけるのか、具体的に探っていこう」という動きがみられます。

蚊は視力があまりよくないため、刺す相手を見つけるには複数の感覚を組み合わせる必要があります。もちろん、自分の身を守るためにも。2022年にオンライン科学学術誌『Scientific Reports』に掲載された論文には、蚊はエサを食べているときに「脅威を示す視覚的および機械的な指標に反応する」と書かれています。つまり、血を吸っている最中に平手打ちされそうになるのを、ちゃんとキャッチしているということです。

熱赤外線によって蚊のターゲット探索能力が大幅アップ

蚊は人間の皮膚から10センチ離れた位置でも、皮膚から立ち上る熱を感知できるのだそう。しかし、今回の研究では、蚊が温度だけでなく熱赤外線も感知していることがわかりました。

研究者チームは、メスの蚊が宿主を探す方法を2つの環境で測定。いずれも人間のにおいと、人間が吐き出すのと同じ濃度の二酸化炭素を用意しました。そこで片方に皮膚温の熱赤外線を照射したところ、蚊の宿主探索活動が2倍に高まり、蚊の熱に対する感度は約70センチまでに跳ね上がりました。

UCSBの生物学者で、この研究の主任著者であるクレイグ・モンテル氏は、「単一の手がかりだけでは、宿主探索活動は刺激されません。赤外線が効果を発揮するのは、CO2の増加や人間のにおいなど、他の手がかりがある場合のみです」。

蚊に刺されにくくなる方法は…。

研究チームによると、ゆったりとした服を着ることで、皮膚と衣服の間に熱赤外線が分散する空間ができ、蚊がターゲットを見つけにくくなるんだとか。蚊に刺されやすい人は。ゆったりした服を身に着けると防御策になるかも。

ちなみに、今回実験対象となったネッタイシマカの生息地は従来の熱帯・亜熱帯からどんどん広がっているようですが、日本には常在はしておらず、私たちの身の回りにいる蚊はヒトスジシマカ(いわゆるヤブカ)やアカイエカと呼ばれる種が多いようです。

今年は秋になってから蚊のトップシーズンが来るかもしれません。暑さが和らいだころが危ないですから、皆さん、しっかり対策しておきましょう。