アメリカ政府は中国に対する高性能半導体の輸出を制限しており、NVIDIAのAI処理チップも輸出規制の対象となっています。ところが、中国では「NVIDIA製AI処理チップ搭載サーバーをレンタルするなら、中国企業の方がアメリカ企業より安い」という異常な状況が発生しています。

Nvidia’s AI chips are cheaper to rent in China than US

https://www.ft.com/content/10aacfa3-e966-4b50-bbee-66e13560deb4

Nvidia's AI GPUs are cheaper to rent in China than in the US - $6 per hour for eight Nvidia A100 GPUs | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/pc-components/gpus/nvidias-ai-gpus-are-cheaper-to-rent-in-china-than-in-the-us-dollar6-per-hour-for-eight-nvidia-a100-gpus

アメリカ政府は国内の企業に対して中国への高性能半導体の輸出を禁止しています。しかし、中国企業は中国以外の国を経由してアメリカ産高性能半導体を入手しており、NVIDIAのAI処理チップも中国国内で数多く取引されています。

中国のブローカーがアメリカの規制を回避してAI研究用チップを中国に持ち込む方法 - GIGAZINE



中国の企業や顧客がFinancial Timesに語った情報によると、中国の小規模クラウドプロバイダーは「NVIDIAのAI処理チップ『A100』を8個搭載したサーバー」を1時間当たり約6ドル(約860円)で貸し出しているとのこと。これに対して、アメリカのプロバイダーは同じ構成のサーバーを1時間当たり約10ドル(約1400円)で貸し出しています、つまり、中国国内でA100搭載サーバーを借りる際はアメリカ企業より中国企業を利用する方が安く済むというわけです。

AlibabaやByteDanceといった中国の大手企業傘下のクラウドプロバイダーもA100搭載サーバーを貸し出していますが、価格は1時間当たり15ドル〜32ドル(約2100円〜4600円)で、AWSなどのアメリカ企業と同等の価格となっています。大企業の設定価格が小規模クラウドプロバイダーと比べて高くなっている理由について、中国のスタートアップ設立者は「小規模クラウドプロバイダーはコンプライアンスについてあまり気を配りませんが、大企業はコンプライアンスに気を配る必要があり、密輸チップを使えないため不利な立場にあります。小規模プロバイダーはコンプライアンスをそれほど気にしていません」と説明しています。

また、上記のスタートアップ設立者は「中国国内にはNVIDIAのH100が10万個以上ある」とも述べています。中国のデータセンター企業によると、H100を8個搭載したSuperMicro製のサーバーは、2023年10月の輸出規制強化後に320万元(約6400万円)にまで上昇していましたが、最近では250万元(約5000万円)にまで下がったとのことです。

なお、中国では「AmazonやMicrosoftが提供するクラウドサービスに第三者企業を介してアクセスする」という手段も広く用いられています。

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