発表会の動画を撮影する際に、メインとして使用しているのがGoogleの「Pixel 8 Pro」。画質的には不満はなく、4K/30fpsでも室内なら1時間を越えるような撮影でも熱処理で止まることはまずありません。

真夏の炎天下ではさすがに長時間の動画撮影は厳しいですが、室内なら特に問題なし

 気になるのは音質。といってもPixel 8 Proの音が悪いというわけではなく、無指向性なので回りの音を拾いすぎてしまうのが気になります。というのも発表会では記者席から撮影するケースが多いので、自分やまわりの記者がタイピングする音や、ガサガサと資料を開く音まで拾ってしまうのです。

 そこでどうすれば発表会の音をキレイに撮れるのか、ここ最近ずっと四苦八苦しています。まずはワイヤレスマイクを使って、発表会会場のスピーカーに近い位置にワイヤレスマイクをセット。極力スピーカーの音だけを拾うセッティングにしていました。

 ちなみに最近使っているワイヤレスマイクはUlanziの「U-Mic AM18」です。スピーカーの近くにセットするので、回りの音をあまり拾わないという点では合格なのですが、入力レベルの調整が非常に厳しい。発表会では急に大音量のBGMが流れたりするので、そこだけ音割れしてしまい、あとで動画編集時に調整しても音質が良くありません。

セール時は1万円以下と低価格で、マイク本体に録音機能も搭載しているUlanziのワイヤレスマイク「U-Mic AM18」

 そこで記者席から録るにしても、単一指向性のマイクを使ってスピーカーを狙ったらいいのではと、comicaの単一指向性のマイク「VM10 PRO」を購入。このマイクはType-C端子を搭載していて、スマートフォンの外部マイクとしてType-Cケーブル接続で利用可能。さらに入力ゲイン調整用のダイヤルもついているので、ある程度入力レベルも調整できます。

USB接続でスマートフォンやPC外部マイクとして使える、単一指向性マイクの「VM10 PRO」

 またType-Cでのデジタル接続だけでなく、3.5mmのジャックでアナログ接続も可能。出力先の切り替えは本体のスイッチでできるのですが、デジタルモードにしても、3.5mmはTRS/TRSSモニター端子として動作しているので、デジタルとアナログの同時出力ができます。

 なので、Type-CでVM10 PROとPixel 8 Proを接続しつつ、3.5mmはU-Mic AM18のマイクに接続。バックアップ用の録音をしつつU-Mic AM18のレシーバーからさらに別のスマートフォンに接続して文字起こしの入力に使用というセッティングに。

録画用スマホと文字起こし用スマホの両方にVM10 PROの音声を送るセッティング

 このセッティングも悪くはないのですが、Pixel 8 Proの標準カメラアプリには音声の入力レベルをチェックする機能がないので、VM10 PROにゲイン調整ダイヤルがあったとしても、カンで調整するしかありません。

 そのため撮影後の動画編集中に聞いてみると所詮は素人のカンに頼った調整で、大きかったり小さかったりとその時々で違っていてやはり不便。特に入力が大きいと音割れしていて編集で調整しても耳障りです。

 またバックアップ用に録音しているU-Mic AM18にも問題があります。マイクの録音機能を使うと、一定時間で自動的にファイルが分割されるのですが、分割時に0.1秒ほど録音できていない部分が発生します。レコーダーとしては結構致命的な欠点です。

動画編集ソフトで同期させてみると、U-Mic AM18(緑のトラック)はファイル分割時に約0.1秒の録音漏れが生じている

 ちなみに大きな発表会になると、会場後方にテレビのカメラマンなどが使用するエリアがあって、そこには音声ラインが用意されていることも。この音声ラインも一時期していましたが、音声ラインは基本的にはMCやBGMなどが流れてくるだけなので、会場内の歓声やどよめき、拍手といった音がほぼなく臨場感がありません。そのため結局会場の音声を別録りして動画編集時に音声をミックスする作業が発生するため、最近は回りの騒音が気になる屋外の発表会でしか音声ラインを使った動画撮影はしていません。

音声ラインを使うとキレイな音声が録れるものの、これはこれでめんどうだし問題も多い

 というわけで、素人でもめんどうな設定不要で狙った方向の音がキレイに拾えて、USB接続でスマートフォンやPCでマイクになって、しかも音を途切らせることなく録音できて、しかもプロ向けの高い機材ではなくお手ごろ価格で購入できるアイテムがないかと思って見つけたのが、Zoomの「H1essential」です。

Zoomのハンディーレコーダー「H1essential」を購入

 H1essentialは前方90度の単一指向性マイクを搭載したハンディーレコーダー。直販価格1万2500円と手頃な価格ながら32bitフロート録音に対応しており、従来の16/24ビット録音よりも幅広いダイナミックレンジで録音が可能です。そのため特に大音量での入力に威力を発揮し、16/24ビット録音では調整しても波形がクロップされてしまうような大音量の入力も、32bitフロート録音なら、波形を残したまま調整できるわけです。

 しかも入力レベル調整はなく、H1essentialは自動調整してくれます。プロも使うような上位モデルは入力レベル調整がありますが、自分のような素人というか、ワンオペの取材・撮影で使うぶんには、自動でおまかせのほうが手間は省けてありがたいです。

単4電池2本で動作。長期間使用すると思うので、内蔵式のリチウムイオン電池じゃないほうが逆にありがたい

 本体にはType-C端子があって、デジタル接続での外部マイクとしてスマートフォンやPCでも利用可能。3.5mmの出入力端子もそれぞれあるので、ピンマイクを接続したり、VM10 PROと同じようにU-Mic AM18のマイクにアナログで音声を出力して別系統でスマートフォンへといった使い方もできます。

ピンマイクなど外部マイクも接続可

 H1essentialで録音したデータも一定サイズで分割されますが、チェックしてみたところスムーズにつなげられ、U-Mic AM18のような録音できていない部分はありませんでした。

 というわけで、Pixel 8 Proの内蔵マイクと、H1essentialでの録音データ、そしてU-Mic AM18のマイクと、U-Mic AM18にVM10 PROを接続した音声を比較した動画が下記になります。

記者席から、Pixel 8 Proと、H1essential、そしてU-Mic AM18のマイクと、U-Mic AM18にVM10 PROで録音

 Pixel 8 Proの内蔵マイクと、H1essentialでの録音はステレオで、U-Mic AM18のマイクを使用した2つはモノラルとなりますが、H1essentialでの録音はかなりクリアで聞き取りやすいなという印象です。またU-Mic AM18にVM10 PROを接続した音声はアナログ接続ということもあり、ホワイトノイズがのっています。

 テストのため記者席に置いて録音しているので、タイプ音なども拾ってはいますが、バランス的にはそこまで気にならないのと、音割れを気にしなくていいので、今後はもっとスピーカーに近いところにセットして録音するなど調整はできそうです。

 自分のようにスマートフォンでの動画撮影用マイクとして使うのではなく、囲み取材のテレコやPCと接続してオンラインミーティング時の外部マイクに使ったりと、いろいろ活用できるので、H1essentialは同業諸氏にかなりオススメしたい製品でした。

しばらくはこの組み合わせで動画撮影していきます