井上尚弥はドヘニーが“戦意喪失”した衝撃決着をどう見ていた? 試合後に語った心境「理想としていた終わり方ではない」

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慌てず、ガードを固めながら、慎重に試合を推し進めた井上。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 さすがの“日本人キラー”も、「敵なしのモンスター」には歯が立たなかった。

 9月3日、東京・有明アリーナで世界スーパーバンタム級の4団体王座統一戦が行われ、王者の井上尚弥(大橋)が、WBO世界同級2位のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)を7回TKOで撃破。今年5月に東京ドームで行われたルイス・ネリ(メキシコ)戦に続き、圧巻の内容で4つのベルトを守った。

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 過去の対日本人戦績は3勝2KOのドヘニーは前日計量での55.1キロから11キロも体重を増加。大幅なパワーアップを図った。が、「自分相手に10キロ以上も戻したらボクシングはできない。体重があればいいわけじゃない。そういうのを含めてボクシングというものを見せたい」と語った井上はブレなかった。

 いつになく慎重な入りを見せた。ただ、“モンスター”は、強打者のドヘニーに踏み込ませずに主導権は渡さない。そして、3回ぐらいから手数を増やし、ジワジワと圧力をかけていく。

 そして、6回終盤に猛ラッシュを展開し、ギアを上げた井上は、7回開始直後から攻勢を展開。ロープを背にした相手にふたたびラッシュ強打を打ち込むと、ドヘニーが突如として腰を抑えて苦悶の表情を浮かべる。そして自ら試合を棄権する仕草を見せ、レフェリーストップがかかった。

 相手が自力で歩けなくなるほどの強烈な拳を炸裂させた。傷ひとつないスッキリとした顔で会見に登場した井上は、鮮烈な結果を「内容的にはこれからかなというところ。ただ結果としてこうなってしまったのは仕方がない」と回想。そして、当日体重を増加させてリングに挑んだライバルに対する私見を語った。

「(パンチ力やパワーは)多少感じましたけど、びっくりするほどではなかった」

「ドヘニーほどのキャリアを持つ選手がああいう戦い方をしたらああなってしまうのは仕方がない。相手あってのボクシング。あの相手に自分としては丁寧に最善を尽くせたと思っている」

「(倒れた瞬間)あのままのリアクションを自分は受け止めた。自分が理想としていた終わり方ではない。ちょっと中途半端な終わり方になってしまったと思う」

 この試合の契約発表会見で「一発も触れさせない」「技術の差を見せて、完封したいと思います」と公言していた井上。体格差があり、破壊力もある相手に、難なく有言実行してみせる姿に偉才の凄みを見た。

[取材・文:羽澄凜太郎]