会社を救う隠れた逸材「ハイパフォーマー」を探せ! 「7つの特徴」を見極め、育てるコツは?
ハイパフォーマーと呼ばれる人材が、あなたの会社にはいますか。それは、高い成果を上げ、組織の成長に貢献できる人材のこと。どうしたらそんな人材を発掘し、育てることができるのか。
人事向けサービスを展開する調査会社アスマーク(東京都渋谷区)が2024年8月13日に「ハイパフォーマー分析とは? 自社で活躍する人材を見極めるには」というリポートを発表した。
そんな優れた人材を見極めるにはまず、ハイパフォーマーの思考と行動様式を知ることから始めるといいという。調査担当者に聞いた。
ハイパフォーマーの7つの思考・行動様式とは
アスマークによると、ハイパフォーマーには3つの特徴があるという【図表1】。
(1)業務に必要なスキルに長けている。
(2)業務に必要な経験が豊富で、多くのノウハウを持っている。
(3)スキルや経験、ノウハウを生かして高い成果を生み出せる。
もう少し具体的に、一般的に言われているハイパフォーマーの7つの思考・行動様式を紹介しよう(出典:増子裕介・増村岳史著『ハイパフォーマー思考 高い成果を出し続ける人に共通する7つの思考・行動様式』ディスカヴァー・トゥエンティワン)。以下の7つのポイントがある。
Point.1:「何とかなる」と思ってやってみる。「まずやってみる」ことからスタート。
Point.2:柔軟に方向転換する。いざ始めて「これではうまくいかない」と感じたら、方向転換も視野に再検討。
Point.3:自分とは異なる価値観や文化を認め、受け入れる。自分の考えにこだわりすぎず、第三者の視点・意見を取り入れる。
Point.4:仕事を「プレイ」する。仕事を楽しみながら遂行。
Point.5:常に学び続ける。仕事をプレイするためには、成長し続けることが不可欠。
Point.6:人との縁を大切にする。多くの人と関わりながら進めるビジネスでは、人とのネットワークが不可欠。
Point.7:物事を斜めから見ることができる。対象のよい部分を理解したうえで、あえて批判的な視点でとらえ直す。ただし、「ひねくれた見方をする」ことではない点に注意。
そして、ハイパフォーマー分析とは、社内でハイパフォーマーを増やすことを目的に、活躍している社員の特徴を抽出して分析することだ。
注意点は、一般的に言われているハイパフォーの要素を持っているかどうかで、優秀とは限らないということ。何をもって「優秀」と判断するかは、企業によって異なるからだ【図表2】。
自社が求める「優秀」な人材を確保するには、まず自社がどういった人材を「優秀」と判断するか定義づけする必要があるというわけだ。
どれが重要なポイントかは、「会社による」
しかし、実際にはどうハイパフォーマーを分析して、見いだしていけばよいのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、アスマークの担当者に話を聞いた。
――ハイパフォーマーの7つの思考と行動様式、とても納得感があります。しかし、これをバランスよく全部備えた人物となると、神様のようなビジネスパーソンになります。私自身は、50年近い仕事人生を通じてお目にかかった経験がありません。
仕事が非常にできる人は、7つのうちどれかに欠けているか、どれかを突出して持っているかといった個性が強すぎる人がほとんどです。ハイパフォーマーは、7つのうちどれが特に重要だと考えていますか。
担当者 資料でご紹介しているのは、ハイパフォーマーの人に多い傾向をまとめたものなので、たしかに、すべてを高いレベルで兼ね備えた神様のような人は、そうそういらっしゃらないとは思います。
そのうえで、「どれが特に重要か」に関しては、「会社による」というのが私どもの回答です。
たとえば、社員3人のベンチャー企業であれば、「まずやってみる」精神(Point.1)が特に重要になってくるでしょう。逆に、多くの関係者と仕事を進める必要のある大企業などでは、円滑な人間関係を築ける能力の人(Point.6)が重要かもしれません。
自社の場合はどれが特に重要かな、と考えながら見ていただけたらと思います。
――なるほど。Point.7の「物事を(批判精神を持って)斜めから見ることができる。ただし、ひねくれた見方をすることでない点に注意」という点も面白いですが、ビジネス面では具体的にはどういうことでしょうか。
担当者 単に批判することを目的とした批判ではないこと。これが大切かなと思います。重箱の隅をつつくような指摘ばかりして、代案も出さず文句ばかり言う人とは一緒に仕事したくないですよね。
「斜めから見る」というのは、たとえばイベントの企画をしている際に「でも、この構成だと車いすの人は楽しめないよね。より多くの人に楽しんでもらうようにするにはどうしたらいいか」というように、よりよくするための新たな視点を持てることかと思っています。
同じ社内でも、職種によってハイパフォーマーが少しずつ異なる
――ハイパフォーマー分析の注意点として、7つの要素を持っているかどうかで「優秀」と判断するべきではない。何をもって「優秀」と判断するかは企業によって異なる、とあります。
そして、「自社で活躍する人材かどうかを予測するには、まず『自社にとってのハイパフォーマーの特性』を知ることが大切と強調していますね。
担当者 最初に述べたように、会社の規模や業種、事業計画、社風などの状況によって、自社にとっての「優秀」で「必要」な人材は変わってきます。
ハイパフォーマーの特徴をすべて兼ね備えた素晴らしい人材がいたとしても、たとえば仮に、その人が外国人で日本語を一切話せない、とします。自社社員も誰一人として英語を話せない、事業を海外展開する予定もない、という状況であれば、日本語で社員とコミュニケーションをとれる人材のほうが社にとっては「優秀」で欲しい人材といえるのではないでしょうか。
この会社のハイパフォーマーの条件には「日本語が話せる」も入ることになります。
――アスマークでは以前、「『仕事ができる人』と『優秀な上司』の差」を調査したことがありますが、相通じるものがありますね(参考記事:J-CASTニュースBiz「仕事ができる人」は「優秀な上司」になれない エース社員を一気にダメ上司にしない方法 専門家のアドバイスは)。
担当者 「仕事ができる人」と「優秀な上司」の違いの調査では、役職や立場によって求められる人材の特徴が異なる、という結果が出ました。
今回は「自社にとってのハイパフォーマー」の特性を知ることが必要と書いていますが、もっと細かく考えると、同じ会社の中でも、職種や役職によってハイパフォーマーの特徴も少しずつ異なってくるのだと思います。
ひょんなタイミングで別の個性を持つ人材が輝くこともある
――職場のハイパフォーマーを見極めるには、具体的にどうすればよいですか。
個人の仕事に対する意識調査や、上司の評価の活用などが書かれていますが、それでは通常の人事評価の高い人物がハイパフォーマーということになり、会社をブレークスルーする傑出した存在の発見にはつながらないと思いますが。
担当者 すでにハイパフォーマー(社内で優れた結果を出している人材)が社内にいて、同じような人を増やしたい場合には、仕事に対する意識調査の結果と自社のハイパフォーマーを比較分析し、特徴を見出していくことが有効です。
逆にブレークスルーを狙う場合には、たしかに現状の評価を度外視した大胆な登用も必要かもしれません。ただ、自社で活躍している人物の傾向をあらかじめ把握したうえで、新たな素養も持ちあわせた人材を探すのと、闇雲に探すのとでは前者のほうがよりよい人材に巡り合えるともいます。
――いずれにしろ、「自社のハイパフォーマー像」を確立しておこうということですね。ハイパフォーマーについて、特に強調しておきたいことがありますか。
担当者 ハイパフォーマー分析は、分析によりハイパフォーマーの傾向を把握することで、ハイパフォーマーになる素養を秘めている社員を発掘したり、採用の時点で素養のありそうな人材を見極めたり、会社を成長させていくのに役立つ手法です。
ただし、あくまで現時点での「傾向」であり、これに当てはまらなければ活躍の見込みがないということではありません。変化が激しい時代ですから、ひょんなタイミングで別の特徴を持つ人材が輝くこともあります。
最近で言うと、AI人材のニーズが急上昇しています。こうした点も考慮して、定期的に今の自社にとってのハイパフォーマーはどんな人材なのかを見直していく必要があると思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)