前日計量をパスして4つのベルトを手に撮影に応じる井上尚弥【写真:荒川祐史】

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 ボクシングの世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)4団体統一王者・井上尚弥(大橋)は、3日に東京・有明アリーナで元IBF世界同級王者TJ・ドヘニー(アイルランド)との4団体防衛戦に臨む。2日は神奈川・横浜市内のホテルで前日計量が行われ、井上は55.3キロ、ドヘニー55.1キロで一発パス。戦績は31歳の井上が27勝(24KO)、37歳のドヘニーが26勝(20KO)4敗。

 緊張感のある会場で堂々とクリアした。先に計量台に乗ったのは王者・井上。バキバキの肉体美を披露しながら一発クリアすると、拍手に包まれた。対するドヘニーはこれまでとは打って変わってげっそりとした様子だが、55.1キロで一発パス。挑戦者陣営から「TJ!」の奇声も上がった。恒例のフェースオフでは19秒睨み合い。井上は4つのベルトを持ったまま。終了後は互いに笑みを浮かべながら握手を交わし、ドヘニーはモンスターの頭をなでた。

 井上は計量後に取材対応。ドヘニーの印象について「だいぶ水を抜いたなと。だからこそあれだけリカバリーをして10キロも戻るのかなと思う。ただ、自分相手に10キロ以上も戻したらボクシングはできない。階級制の競技ですが、体重があればいいわけじゃない。そういうのを含めてボクシングというものを見せたい」と力を込めた。

 スーパーバンタム級4試合目の井上は、5月に東京Dでルイス・ネリ(メキシコ)に6回TKO勝ちして以来の試合。KO勝ちなら世界戦9試合連続となり、自身が2019年5月に記録した8試合を上回る日本人最多記録だ。世界戦通算勝利数が23になれば、井岡一翔を抜いて日本人単独最多。8月31日の公式会見では「見るからにデカい。そんな相手だからこそKOしたい」と挑戦者の印象を明かしていた。

 自身については「仕上がりはバッチリです」と自信。水抜きの方法をわずかに変え「体の仕上げ方もかなり上手くできている。自分の感覚ですが、もちろん筋肉量も違う。つくり方も違うし、+スピードを落とさないことを意識しながらやってきた」と明かし、体づくりに関する持論を語った。

「数年後のフェザー級を目指してやらないといけない。そこでやり方に向き合わないと成長はない。やってきたことをそのままではよくない。新しいことをしながら手探りでやらないと。現状維持では止まってしまうので何かを変えないといけない。技術的なものはすぐには変わらないですが、積み重ねた減量方法だったり、体づくりはいずれ表れてくると思う。一つひとつ試合をして少しずつ形になれば」

 オーストラリア在住のドヘニーは、アイルランド国籍を持つ37歳のサウスポー。2018年8月にIBF王者・岩佐亮佑に判定勝ちし、19年4月の2団体王座統一戦で陥落した。今年5月の井上―ルイス・ネリ戦で不測の事態に備えたリザーブとして待機したが、出番はなく別の選手に勝利。現在はWBO2位につける。計量後に12キロほど体重を戻した過去があり、今回も試合時の体重が一つの焦点となる。

 井上は「プレッシャーはいつもと変わらない。東京ドームだからとかなかったし、試合をやることは楽しみ、喜びが一番」と研ぎ澄ませた。壇上でフレンドリーだった挑戦者に対し、「もともとそういう人じゃないですか。だからこそ気合いを感じたし、いつも以上に集中しないといけない」と気を引き締めた。一方、ドヘニーも「準備はできている」と万全を強調した。

 セミファイナルのWBO世界バンタム級(53.5キロ以下)タイトルマッチ12回戦は、王者・武居由樹(大橋)が53.4キロ、同級1位・比嘉大吾(志成)も53.4キロだった。武居は5月にジェイソン・マロニー(オーストラリア)に判定勝ちで涙の王座奪取。比嘉は18年4月に世界戦では日本人初の体重超過を犯し、2度防衛したWBC世界フライ級王座を剥奪されて以来、6年5か月ぶりの世界戦を迎える。

(THE ANSWER編集部)