ChatGPTを超えた生成AIが無料でも便利すぎる
AI時代の主力となりえる生成AIサービスを解説します(写真:metamorworks/PIXTA)
生成AIの登場は、私たちの生活だけでなく、ビジネスの在り方を根本から変える力を持っています。AIやデータサイエンスの知識がビジネスパーソンにとって必須となった今、生成AIをいち早く理解し、活用することが、これからのキャリアを左右する重要なカギとなっています。
本記事では、NRIデジタル・藤田一樹氏の『0から始めるAI・データサイエンス超入門』より一部を抜粋・最新の生成AIサービスの情報にアップデートのうえ、AI時代の主力となりえる生成AIサービスを解説をします。
ChatGPTだけじゃない。生成AIの持つ無限の可能性
生成AIは、単なるテキスト生成の枠を超え、多様な分野でその可能性を広げています。私たちの生活やビジネス周りには、すでに多くの生成AIツールやサービスが存在し、日々その性能を高めています。
これらの生成AIサービスは、クリエイティブな作業を補助したり、新しいアイデアを生み出したりするために利用され、私たちの日常生活からビジネスまで幅広い場面でその力を発揮しています。日本においては、まだまだ生成AIと言えばChatGPTが有名ですが、日本語を使って無料で利用することのできるサービスも続々と登場しているのです。
以下の表に、生成AIが活用される様々な分野とその概要・サービスを紹介します。
生成AIの種類別の代表的なサービス
どうでしょう。この中に名前を聞いたことがあるサービスや利用したことのあるサービスはあったでしょうか?
このように、生成AIは我々の想像を超えて、さまざまな用途でその能力を発揮しています。クリエイティブな作業を効率化するだけでなく、新しいアイディアやコンセプトの調査など、今後も多くのビジネス現場で不可欠なツールとして定着していくでしょう。特に個人の生活においても、これらのAIを活用することで、日常のさまざまな場面においても新たな視点や可能性を見出せるようになるでしょう。
iPhoneなどのスマートフォンが登場した時に、「スマートフォンを活用しなければ」と義務的に触り始めた人がどのくらいいたでしょうか? おそらく身の回りのiPhoneを便利に利用している友達の姿を見て自分も使ってみたいと憧れていたはずです。
想像してみてください。「上司から○○について調べておいてと言われたら、あなたの変わりに世界中のWebサイトから調査し、わかりやすくまとめてくれ、追加の質問に対しても即座に回答してくれる世界」を。
想像してみてください。「あなたが頭に描いたイメージを言葉でAIに伝えるだけで、まるで魔法のように美しい絵画が描かれる世界」を。
そんな生成AIの持つ無限の可能性を人よりもちょっと早く試してみる。そんな機会を作ってみてはいかがでしょうか?
もうハルシネーションは怖くない情報検索
ChatGPTのようなテキスト生成AIは、一見すると、どんな質問にも完璧な答えを返してくれる万能のツールのように思えるかもしれません。しかし、その輝かしい能力の裏には、「ハルシネーション(Hallucination)」と呼ばれる、大きな落とし穴が存在しています。
ハルシネーションとは、「AIがまるで幻覚を見ているかのように、事実とは異なる内容を、あたかも真実であるかのように出力してしまう現象」のことです。これは、現在のテキスト生成AIが、その膨大な学習データの中から、確率的に最も自然な文章を紡ぎ出すように設計されていることに起因します。さらには、利用する生成AIのモデルによって、学習データの中に含まれるデータが古いものもあり、生成AIが最新情報を理解していない可能性もあります。
つまり、生成AIは必ずしも正しい情報や論理に基づいて回答を生成しているわけではないのです。このハルシネーションの問題は、特に、正確な情報が求められる調べ物や情報収集の際には、致命的な欠点になりえます。
そこで注目されているのが、「Perplexity」や「Genspark」のような、情報検索に特化した生成AIです。これらの情報検索AIは、単に自然な文章を生成するだけでなく、世界中のWebサイトから情報を調査し、その裏付けとなる情報源を明確に示しながら、ユーザーの質問に対する答えを提供してくれます。
Google検索を超えた? Perplexity
Perplexityは、まるで検索エンジンのように、Web上の膨大な情報の中から、ユーザーの質問に関連性の高い情報を抽出し、その根拠となるWebページへのリンクとともに表示します。通常の検索エンジンがWebサイトのリストを提示し、人がその内容を上から複数ページ確認していきます。一方で、Perplexityはユーザーの質問に対して、複数のページから関連性の高い情報源を引用しながら回答や要約を提供することができます。
Perplexity AIより筆者作成。プロンプト:画像生成AIで精度の良いサービスを調査して下さい。
AIエージェントを活用した高速並列検索が特徴のGenspark
Gensparkは、学術論文や医療情報の提供など信頼性の高いデータソースへの検索を得意としています。Perplexityと同様に様々なWebサイトにアクセスして情報の収集とまとめ作成を実施することが可能です。AI Parallel Search機能(高速並列検索)によって様々な視点から情報収集による情報の深掘りや細かい検索などが、Perplexityよりも好まれる事例も多くあります。
Gensparkより筆者作成。プロンプト:画像生成AIで精度の良いサービスを調査して下さい。
これらの情報検索AIは両方とも「無料」で利用することが可能です。情報検索AIを活用することで、情報の信頼性を担保しながら、効率的に情報収集を進めることができます。文章の要約やアイディアの想像にはChatGPTなどの通常の生成AIサービスを、情報収集や検索には「情報検索AI」を活用して行きましょう。そうすることで、ハルシネーションによる情報の真偽に頭を悩ませる必要はなくなっています。
遊ぶから始めるAI活用。身近になった画像生成AI
画像生成AIは、AIの専門家や新しいもの好きの人だけが利用するものではありません。子供から大人まで誰もがAIの可能性を楽しみながら、スマートフォンのように気軽に利用する。そんな世の中になってきているのではないでしょうか。
これから紹介する画像生成AIは、私たちが気軽にAIに触れ、その可能性を楽しむための最適なツールと言えるでしょう。画像を生成するAIツールは日々新しいものが登場し、今最も熱い生成AIの領域と言っても過言ではありません。そんなたくさんのAIツールの中から最近オススメのGoogleが開発した「imageFX」と他の有名ツールの精度を超えたと話題の「FLUX.1」を紹介します。
これらの画像生成AIは「テキストから画像を生成する」という、まるで魔法のような機能を持っています。たとえば、「夕焼け空を背景に、草原を走る一頭の馬」と入力するだけで、AIがそのイメージを具現化した画像を作り出してくれるのです。最新の画像生成AIを通じてAIの進化を実感し、AIをより身近に感じてもらう。そんなキッカケにしてみてください。
Googleが開発した最新画像生成AI搭載のimageFX
Googleが開発した最新の画像生成AIモデルである「Imagen 3」を搭載した高品質な画像生成ツールが「imageFX」です。Googleアカウントがあれば誰でも無料で利用可能であり、テキストから誰でも簡単にリアルな画像を生成することができます。(imageFXでは日本語入力も対応しておりますが、正しい画像が生成できない場合が多いので、現時点では英語に翻訳したプロンプトを推奨します)
先程の例のように、「夕焼け空を背景に、草原を走る一頭の馬」を翻訳サイトで英訳し、「A horse running through the grassland with the sunset sky in the background」とプロンプトを作成します。そうすることで、簡単に写真のような高画質な画像を生成することができるのです。
imageFXのHP
さらに、「imageFX」は、「expressive chips(表現力チップ)」という機能で、「草原(grassland)」や「夕焼け(sunset)」などのシーンを変更した画像を簡単に作成することができます。
人物の描写や文字の扱いに優れ高い表現力を持つFLUX.1
FLUX.1は、同じく画像生成AIで有名な「Stable Diffusion」の元開発者たちが設立したBlack Forest Labs社によって開発された画像生成AIです。こちらは、オープンソースとして公開されており、いくつかのサイトで利用することができます。
FLUX.1は、用途に応じて3つのバリエーションが用意されており、商用利用可能な最高品質のモデルから、研究や企業独自のカスタマイズが可能なオープンソースモデル、個人のパソコンでも高速に動かすことができる軽量なモデルとなります。
imageFXと同様に写真のような高精度な画像を生成することが可能です。特に、人物の顔や手などの複雑なディテールを表現することや画像の中に文字情報を正確に表現する能力が高いとされています。
「夕焼け空を背景に、草原を走る一頭の馬」を英訳して作成
「オリンピックのマラソンにて、各国の選手が凌ぎを削る中、日本人が僅差で優勝するゴールシーン」を英訳して作成
直感的な操作で誰でも簡単に扱える画像生成AI
従来の画像編集ソフトでは、専門知識や技術が必要とされてきましたが、これらのAIツールは、直感的な操作で、誰でも簡単にイメージ通りの画像を生成することができます。さらに、既存の画像の一部を修正したり、別の画像と合成したりといった高度な編集も、AIの力を借りて直感的に行うことができます。
このように、画像生成AIは、私たちの創造力を刺激し、遊び心と探求心を満たしてくれるエンターテインメントツールとしての側面も持ち合わせています。まずは気軽に試してみることから、AIの可能性を体感してみてはいかがでしょうか。 AIとの触れ合いは、きっとあなたの日常をより豊かで創造的なものに変えてくれるでしょう。
(藤田 一樹 : NRIデジタル シニアデータサイエンティスト)