リテールメディア の勢いが止まらない。Cookie存続をよそ目に1500億ドル市場に
リテールメディア の勢いが止まらない。Cookie存続をよそ目に1500億ドル市場に
記事のポイントGoogleのCookie廃止計画がリテールメディアネットワークの成長を促進し、広告主は1stパーティデータに注目した。広告主は1stパーティデータの信頼性を重視しており、Cookieの有無にかかわらず投資を続けている。しかし、Googleの方針転換により、小売企業のアドネットワーク展開に歯止めがかかる可能性もある。
GoogleのサードパーティCookie崩壊の脅威はリテールメディアネットワーク(RMN)分野に急成長をもたらした。RMNが脱Cookieソリューションと見なされたからだ。しかし、何年にもわたる先行き不確かな状況の果てに、Googleは突然翻意し、ChromeにCookieを残すことにした。トラッキングの許可または拒否の判断はユーザーに委ねるという。「RMNが有望な投資対象であることに変わりはない」とする3人のエージェンシー関係者は、「Cookie復活の兆しが見えたところで、リテールメディアの成長の勢いがただちに止まることはないだろう」と見ている。この3氏によると、1stパーティデータを推進するマーケターの動きにも変化はなさそうだ。特に、どの程度のユーザーがCookieによる追跡を拒否あるいは許可するか分からない状況ではなおさらである。リテールメディアを運営する小売企業の売り込み攻勢が続く限り、広告主は買いづつけるだろう。「確かに、代替IDを探さなければならないというプレッシャーからは多少なりとも解放されるだろう」と、広告エージェンシーのVMLで最高メディア責任者を務めるジェニファー・コール氏は話す。その反面、「待ちの姿勢は維持しなければならない」と釘を刺すことも忘れない。「Googleのことだから、いつまた新たな発表が出されるか分からない。360度回転して元に戻ることはないにしても、多少の方向転換はあるかもしれない」。リテールメディアへの広告支出は1500億ドル超に
WARC(World Advertising Research Center)の調べによると、リテールメディアに使われる広告費は2024年内に全世界で1500億ドルを突破する。2023年の総額と比べて、180億ドル近い大幅増となる。小売企業の1stパーティデータはいまもその価値が高く評価され、マーケターに顧客の購買傾向に関するリアルタイムの情報を提供できることから、エージェンシー関係者は今後もこの成長ぶりが続くと見ている。専門性の高いコマースエージェンシーのネットワークであるSMGでデジタルメディアの運用責任者を務めるキャレン・ジョンソン氏は、「GoogleのCookie廃止に関する最新の決定はちょっとした時間稼ぎ、あるいは一時しのぎにはなると思う。しかし、道はすでに始まっている」と述べている。リテールメディアネットワークの目下のアピールポイントは、ブランドセーフな環境、1stパーティデータの宝庫、販売時点に近いところで広告を表示する機会などだ。GoogleのCookie黙示録はさておき、こうしたポイントはどれも事実だと、ザ・マーズエージェンシー(The Mars Agency)でデジタルコマース担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるイーサン・グッドマン氏は話す。同氏によると、広告主とオーディエンスをつなぐことにかけては、RMNはほかのメディアプロバイダーやメディアネットワークよりもはるかに道具立てが整っているという。「Cookieが存続するか否かは別として、1stパーティデータはほかの多くのデータよりも優秀で質が高い」とグッドマン氏は指摘する。「我々のクライアントの多くは、今後のリテールメディアへの広告支出について、現在の水準で推移または増加すると予測している」(ただし、リテールメディアへの具体的な支出額は明らかにされなかった)。GoogleのCookie廃止計画が追い風に
Googleが数年前にCookie廃止を初めて発表して以来、どの広告主もGoogleのCookieへの依存をいつかは断ち切らなければならないと分かっていた。やがてCookie廃止の期限が目前に迫り、代替IDソリューション探しにも本腰を入れざるを得なくなった。少なくとも一部のマーケターはそういう状況に直面した。一方、Cookie廃止のスケジュールがずっと確定しないままであったため、この6月までCookieを使い続けたマーケターも少なくなかった。グッドマン氏によると、少なくともいまのところ、クライアントの広告費も関心もサードパーティCookieに戻っていない。注目すべきことに、マーケターたちはGoogleのCookieに関する今後の計画やユーザーがCookieによる追跡を許可するか否かについて先行きを読めずにいる。リテールメディアの成長はGoogleのサードパーティCookie廃止計画によって加速し、マーケターの注目が1stパーティデータに集まった。いまやAmazon、ターゲット(Target)のラウンデル(Roundel)、ウォルマートコネクト(Walmart Connect)のような大手RMNは、セブンイレブン(7-Eleven)、ディスカウントストアのダラーツリー(Dollar Tree)、スーパーマーケットチェーンのハイヴィ(Hy-Vee)など、中小のRMNさらには地域的なRMNからの競争にさらされている。米DIGIDAYは本稿執筆にあたって、CMX(CVS Media Exchange)、ウーバー(Uber)の広告事業、トリップアドバイザーメディア(TripAdvisor Media)、サムズクラブメンバーアクセスプラットフォーム(MAP)の4つのRMNに話を聞いた。GoogleのサードパーティCookie廃止撤回を受けて、広告主に対する訴求方法を見直す計画はあるか訊ねたところ、いずれも「ない」との回答だった。サムズクラブMAPの戦略責任者であるライアン・バーンズ氏は、「ピッチの内容は従来通りだ」と述べている。「1stパーティデータを軸とする提案は、市場で何が起ころうとも揺るぎないものなので、何も変わらない」という。投資利益はあるのか?
しかし、コールとグッドマンの両氏によると、Googleの方針転換によって、アドネットワークの提供で市場を氾濫させる小売企業の数には歯止めがかかるかもしれない。業界では以前から、トレードマーケティング予算が底をついても、リテールメディアネットワークの成長は続くのかという議論があった(トレードマーケティング予算とは、メーカーが自社製品の販売促進を目的として小売業者に支払うマーケティング予算をいう)。これを念頭に、たとえばホームデポ(Home Depot)など、トレードマーケティング予算ではなく、ブランドマーケティング予算を取りに行く小売企業も現れている。「予算が大きくなるに伴い、投資利益のあることを証明するために、継続して厳しい監視の目が向けられるようになるだろう。おそらく、それはRMNが現在直面している最大のハードルだと思う」とグッドマン氏は語った。[原文:What Google’s third-party cookie left turn means for retail media’s growth spurt]Kimeko McCoy(翻訳:英じゅんこ、編集:戸田美子)
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