中華料理店味坊のモーニングは500円から(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第90回となる今回、訪れたのは「味坊(あじぼう)」です。

ファストフードに牛丼チェーンにファミリーレストラン。カフェに焼き肉に立ち食い蕎麦にドーナツショップ。

飲食チェーンが密かにしのぎを削っているジャンル、それが朝メニュー、いわゆる「モーニング」ってやつです。

集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く現れ、どれも魅力にあふれています。

今回ご紹介するのは、「味坊」の中華モーニングです。「味坊」は東京近郊に11店の系列店舗を展開する中華料理チェーンで、主に中国東北地方の料理を提供しています。モーニングを実施しているのは一部店舗のみとなりますが、本場の味がワンコイン、しかも中華粥とお漬物が食べ放題という、お得にも程がある内容でした。

香福味坊の食べ放題中華モーニングは3種類

今回筆者が訪れたのは秋葉原駅徒歩1分の「香福味坊(こうふくあじぼう)」です。昭和通りの雑居ビルの地下、細い階段を降りると、そこには広々とした中華空間が広がっていました。

【画像20枚】「なんとワンコインから」「800円出せばお腹ギッチギチに」…。味坊の「800円モーニング」はこんな感じ

100席以上ある客席は、両サイドが6人掛けのボックス席、中央には大テーブルがゆったりと配置されています。みんなとワイワイするもヨシ、1人で大テーブルでサッと食べるもヨシ。

価格設定もお手頃で、モーニングがワンコイン500円からというのはあまりにも破格ですが、ランチメニューも税込900円から税込1100円と、本格中華をお財布へのダメージなく食べられます。


(筆者撮影)

食べ放題付き朝食セットは3種類。

・A(揚げパン、茶葉煮味付け玉子) 税込500円
・B(小肉まん2個、茶葉煮味付け玉子) 税込600円
・C(えび蒸し餃子、肉焼売、揚げパン、目玉焼き、雲呑スープ、釜焼き鴨、チャーシューと腸詰の盛り合わせ) 税込800円

これだけでもかなり安いように感じるのですが、いずれのセットにも、お粥、豆乳、サラダ、漬物の食べ放題サービスがついています。

日本向けにアレンジした中華料理ではなく、本場の味をそのままに届けてくれるお店なので、本場中華のモーニングを堪能できます。店内装飾はそっけないのですが、それが庶民的なムードを醸し出し、肩肘張らずに気軽に利用できるのも嬉しい。

モーニングの提供時間は開店の朝7時から10時まで。ラストオーダーは9時30分で、10時になると11時スタートのランチ営業の準備に入るため、退店する必要があります。

本格中華の朝粥と揚げパンに点心つき! 大ボリュームの中華モーニング800円

今回ご紹介するのは税込800円のCセットです。


味坊モーニングCセット800円(筆者撮影)

フランスパンのような特大サイズの揚げパンを中心に、せいろには肉焼売とえび蒸し餃子。雲呑スープに、目玉焼き。小皿には釜焼き鴨とチャーシュー、ソーセージが載っています。


せいろに載ったえび蒸し餃子、肉焼売は、蒸したてホカホカ(筆者撮影)

何がすごいって揚げパンは揚げたて、点心は蒸したて、雲呑スープは具沢山、肉の小皿は「なんでこんな小さいお皿にぎゅうぎゅうに入れたの?」っていうぐらいぎっしり。そこに追い討ちで半熟の目玉焼き。

「これが800円!? 安いなぁ」と感心しきりのボリュームですが、さらにここに厨房前に並んだ中華粥と豆乳、お漬物とサラダがセルフサービスで食べ放題なのです。

「香福味坊」は、テーブル席から厨房が見えるのですが、料理人のお兄さんが揚げパンの白くて長いタネを、ビヨーンと伸ばしてクルっと二つ折りにしているところも丸見えです。


特大サイズの揚げパンは、外はサクサク、中はふわふわ(筆者撮影)

「めちゃくちゃ大きいけど、油で揚げたら小さくなるのかな?」という予想に反して、30cm定規ぐらいありそうな、特大サイズの揚げパンがやってきました。さっき目の前で揚がったばかりなので、アツアツのサクサクで、中はふわふわです。

味はほんのり甘く、このまま食べてももちろんおいしいのですが、ちょっと物足りない感じ。これをお砂糖を溶かして甘くした豆乳にジャボっと沈めてしゅませて食べたり、目玉焼きの黄身とからめて食べたり。そうすれば、一気に満足感もアップです。お茶漬けのあられの如く、とろとろのお粥にトッピングすれば、サクフワ食感が加わります。


揚げパンを黄身にひたしていただきます(筆者撮影)

食べる前は「こんなに大きくて食べ切れるかな?」「油で揚げてるから胸焼けするかな?」と思ったのですが杞憂でした。どのおかずとも食い合わせがよく、軽い食感でどんどん食べ進めることができ、あっという間に食べ終わってしまいました。

日本のお粥と違う?本場の中華粥を秋葉原で食す

中華粥は日本のお粥よりもさらに水分が多めでどろっと感はなし。とろとろだけどさらさらの仕上がりです。しっかり煮込まれているようで、米粒の半分ぐらいは溶け、口に含むとホロホロとくずれていきます。


水分多めのさらさらとしたお粥。お米は口の中に入れるととろけます(筆者撮影)

この中華粥、お粥の具材は青菜のみ、味付けはほとんどされていない白がゆです。お粥ブースにはトッピングの小松菜が用意されていますが、こちらもお漬物ではなく茹でただけ。食べるとお米の滋味を感じる優しいお味。おいしい、おいしいんだけど少し物足りない。

ここからが、味坊モーニングの醍醐味です。お漬物をトッピングしたり、塩気の強いソーセージやチャーシューと一緒に食べたり、味の足し算を楽しみまくるのです。辛味や塩味や酸味の強い料理を、薄味の中華粥がまろやかにして、どれもこれもを朝ごはんにぴったりなおかずに変身させるのです。

お漬物は八角やクミンなど、中華料理ならではのスパイスやピリ辛の味付けで、ソーセージも日本の皮がプリプリ中は肉汁ジュワーではない、みっしりと肉のうま味が詰まった噛めば噛むほどうま味が溢れるタイプのやつ。


小皿にこれでもかと載せられた、加工肉3品。日本とは一味違った香辛料が食欲をそそる(筆者撮影)

サラダは、キャベツ、きゅうり、にんじんというお馴染みのお野菜トリオながら、ごま油と鷹の爪で味付けされ、中華風の浅漬けといった趣きです。さまざまなおかずや調味料と組み合わせて、味の足し算を満喫しました。

点心も手抜きなし、本格的な味わい

個人経営の町中華で点心を注文すると「あれ?もしかして冷凍食品使ってるよね?」ということがあります。小さなお店の場合は、餃子はともかく焼売や肉まんまでは手がまわらないよというのも、いたしかたないところ。「もちろんおいしいんだけど、味が画一的でちょっぴり残念だなぁ」と思うこともしばしば。


具沢山の肉焼売。しいたけも入って香りよく(筆者撮影)

実は「味坊」は点心までぬかりなし。「点心まで具沢山でおいしくてすごいけど、お店で作っているのかしら?」と調べたところ、自社工場「味坊工場」で餃子や焼売から、麺、調味料にいたるまで製造することで、日本にいながら中国東北地方の味を提供していました。


えび蒸し餃子は中身ぎっしり。小エビというには大きめサイズのエビがまるごと入っていました(筆者撮影)

モーニングCセットの点心もチープさなし。肉焼売も雲呑も薄皮で具沢山ですし、えび蒸し餃子にいたっては、皮は半透明で宝石のよう。お箸で割ると「小エビなのに大きいね!」という、指の第1関節分ぐらいのサイズ感のエビがまるっと出てきました。

皮のもっちり、エビのプリプリに、たけのこのシャキシャキが三位一体となり、まあこれがおいしい。小洒落たお店の飲茶アフタヌーンティーに勝るとも劣らぬ味わいです。

知る人ぞ知る、だけど大人気の朝中華

筆者がお店に訪れたのは平日朝9時でしたが、この味とお得感だけあって、ファンも多いようで、お店はなかなかの繁盛ぶりでした。


味坊モーニングBセット600円。こちらもお粥・豆乳・漬物・サラダが食べ放題(筆者撮影)

常に10人以上、多い時は20人近くが中華粥を堪能していました。客層はさまざまで、カップルもいれば、ワイシャツ姿のサラリーマンもいれば、女性の1人客もいる。もちろん土地柄もあり無精髭にアニメTシャツのオタク風の男性もいました。

駅チカといえども地下にある店ですし、店外に大きくポスターやのぼりが出ているということもなく、およそモーニングをしてそうな雰囲気ではなかった(そもそも入店する際に営業しているのかどうかさえ疑わしく感じたほど)のですが、店の外で様子を見ていると慣れた様子で次々にお客さんが階段を降りていきました。


温かい豆乳はお砂糖を入れるとホット杏仁豆腐のような味わい。酢、醤油、ラー油を入れてスープとして飲むのが定番だそう(筆者撮影)

知る人ぞ知るお店ではあるものの、そのおいしさとコスパから、リピーターも多いのでしょう。チェーン店モーニングを食べ歩き、ほとんどのお店で「お得だなぁ」「コスパが良いなぁ」と思うのですが、今回は「こんなに安くていいのかしら?」と申し訳なくなるほどのモーニングでした。

お粥や揚げパンは決して原価が高いものではありませんが、しっかり煮込んだ本格的な中華粥や、目の前で料理人が手ごねして揚げる出来立ての揚げパンは、よそでは食べられない味で、原価以上の価値を感じます。


中華料理店ならではの、鮮やかな赤の提灯がディスプレイされていました(筆者撮影)

さらに点心や雲呑スープ、小皿の3種肉盛り合わせのクオリティとボリュームたるや。目玉焼きとセットでベーコンエッグ的なポジションだとは思うのですが、これだけでビール1杯いける食べ応えです。

小皿にそっけなく載ってるけど、「おつまみ三種盛り」と銘打って大きめのお皿に並べ直したら、500円ぐらいしそうな質と量でした。釜焼き鴨なんて食べたこともない、新しいおいしさにもめぐりあい、大満足の朝です。

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セルフサービスで食べ放題の中華粥と豆乳(筆者撮影)


卓上調味料で、自分好みにお粥の味を整えるもヨシ(懐かしいおみくじもありました)(筆者撮影)


食べ放題のお漬物とサラダもお粥にぴったりです(筆者撮影)


こちらはツルツルの雲呑スープ。海苔入りのスープはしっかりとした味でキリッとした味わい(筆者撮影)


朝食メニュー(筆者撮影)


朝食メニュー(筆者撮影)


その他のメニュー(筆者撮影)

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)