岸田首相

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約7600円、20%弱の下落

 日銀は、7月31日まで開いていた金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決めた。その後の会見で植田総裁が今後さらなる金利の引き上げを否定しなかったことなどから円高が一気に進み、7月31日から8月5日にかけて日経平均株価は約7600円(20%弱)下落した。その後の7日には日銀の内田副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と述べ、今度は円安が進行し、株価も持ち直しつつある。歴史的な暴落を経験した日本のマーケットを岸田官邸はどう見ていたのか。

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 8月5日の東京株式市場は、ほぼ「全面安」の様相を呈し、1987年の「ブラックマンデー」翌日に記録した3836円48銭を上回る過去最大の下落を演じた。

岸田首相

「日本を代表する企業もストップ安になるなどなかなか見られない光景が広がっていました。売りが売りを呼ぶパニック状態だったと言えるでしょう」

 と、担当記者。

「年初からじりじり上昇を続け、日経平均は4万2000円を超えていたのですが、今回の暴落で今年の上げを一気に吹き飛ばしてしまいました」(同)

政権幹部の“圧”?

 これまでの株高を支えていたのは主として円安だったが、日銀の植田総裁が今後の利上げを否定せず、一方で米FRBのパウエル議長が9月の利下げに言及したことで、円高が急激に進行し、株価暴落につながったようだ。

「過去最大の下落を演じた5日には1ドル141円まで円高が進みました。その後の7日、日銀の内田副総裁が“金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない”と述べことを受け、147円台後半まで円相場は値下がり、日経平均も1100円ほど上昇しました。今回、日本のみならず世界的にリスク資産から資金を引き上げる動きが見られましたが、そのきっかけは円高だと見て間違いないでしょう」(同)

 金融政策をめぐっては、政権幹部がここ最近、相次いで言及してきた。具体的には、「日銀は利上げをする必要がある。金利低下は円安につながって、日本の物価を押し上げてしまう」(河野デジタル相)、「金融政策を正常化する方向で、着実に政策を進める方針をもっと明確に打ち出すことが必要だ」(茂木自民党幹事長)、「金融政策の正常化が経済のステージの移行を後押しする。経済ステージの移行を何よりも重視し、経済・物価動向に応じた機動的な政策運営をこれからも行っていきたい」(岸田首相)といったものだ。

割と冷静に見ていた

「日銀の今回の判断について、こういった政権幹部の発言が“圧”となって影響したのではないかといった指摘もあります。これまで同様、その実態が明かされることはないのでしょうが、ここまで株が暴落した後だと、政権幹部の発言は“センスないね”と言われても仕方ない面はありますね」(同)

 ところで、今回の暴落を岸田官邸はどう見ていたのか。

「岸田首相や官邸幹部は割と冷静に見ていたと聞きました。日銀の発表から一時的に20%弱下落したすべてを短期間で取り戻すのは難しいとしても、ある程度は反発するだろうというところでしょうかね。それでも、ここまでの急な動きが想定内だったということではないでしょうが」

 と、政治部デスク。

「ただ、焦ってはいなかったとはいえ、岸田官邸の打ち出してきた政策の中で、投資に重点を置いた“インベスト・イン・キシダ”(岸田に投資を)路線はポイントを重ねてきた数少ないものだったので、それについては“一旦つまずいた”との評価を受ける可能性がありますね」(同)

 市場関係者の間では日銀は当面、金利を上げられないだろうと語られているという。

デイリー新潮編集部