ブレイキン競技会場全景

 8月9日(現地時間)、パリ市内のコンコルド広場で行われたブレイキン。今大会から競技に採用された、新種目だ。

 1対1でダンスバトルを繰り広げるこの種目だが、1日で予選から決勝までを争う過密スケジュールが組まれている。

 新種目に過密スケジュール……だからだろうか、この日、スタジアム前ではちょっとしたトラブルが起こっていた。現地記者が語る。

「競技スタート前に会場に着いたのですが、記者席が満席になっていて、入場できないというのです。会場の裏手には、メディア用の入り口があるのですが、そこに20人ほどの長蛇の列ができていましたよ。係の人に対してどういう状況なのか問いただす人が次々と出ていました。

 今座っている記者のうち誰かが席を立てば、そこに入り込めるということでしょうが、なにしろ競技前でその状態ですからね。席を立つ人なんていないので、並ぶのを諦めて帰っていく人もいました」

 メディアは通常、五輪期間中どの競技でも競技場に入れるパスを持っている。その都合上、座席があらかじめ割り振られているわけではないのだが、それにしても列ができるほどメディアが溢れかえる事態は耳にしたことがない。

 しかも、列ができていたのは、メディア席だけではない。「オリンピックファミリー」と呼ばれる、VIP席も同様の様子。同じく20人ほどが並んでいた。現地で働くボランティアに話を聞くと、申し訳なさそうにこう答えるのだ。

「ブレイキンがそれだけ注目されているという嬉しい悲鳴なのかもしれませんが、座れない人が多いのは事実です。VIPの方は特に、時間ギリギリに来られる方も多いので、それ用にある席が埋まってしまうんです。

 しかもこの会場は、すり鉢状になっていて、急な階段が各所にあるので、立ち見で見ると危ない。だから着席してもらうしかないんです。そのため、座席数が足りなくなってしまうのでしょう」

 だが、「単に観戦できない」で終わらないのがこの状況だ。

「メディアは競技の取材で中に入るわけで、それが席数の問題で中にはいらないとなると、仕事上困ります。選手にとっても、大きく取り上げてもらえるはずだったのに意図せず縮小されてしまうとなると、不憫です。

 スタジアムの構造の問題などがあるのはわかりますが、それにしてもこれだけの人数が外に並び出すとなると、どう考えてもシステム上の想定ミス。

 これまでも今大会では、競技場や運営面での不手際が度々指摘されてきました。日によって競技場の出入り口が変わったり、昨日まで入れたエリアに急に入れなくなったり……。競技においては、自転車のレースでなるはずの最後の一周の鐘が鳴りそびれるなど致命的なミスもあった。

 最終盤というここにきてまたか……という気持ちです」(前出・現地記者)

 華々しいダンス競技のウラでは、なんとも“グダグダ”な事態が起こっていたのだ。