藤波朱里(C)ロイター

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「パリ2024オリンピック」は8日(日本時間9日)、レスリング女子53キロ級決勝が行われ、初出場の藤波朱理が金メダルを獲得した。ルシアジャミレス・ジェペスグスマン(エクアドル)と戦い、10-0でテクニカルスペリオリティー勝ち。中学2年から続く公式戦の連勝を137に伸ばし、“無敗の女王”として頂点に立った。

■ケンカも多かったけど……「一番感謝したい」

世界ランキング1位のジェペスグスマン相手に完勝し、五輪王者となった藤波。試合を終えると、二人三脚で歩んできたセコンドの父・俊一コーチに跳び上がって抱きついた。そして2人で日の丸を掲げ、満面の笑みでウイニングラン。親子の夢が実現した瞬間だった。
藤波は俊一さんが指導するレスリング教室に4歳から通い、練習に励んで来た。やがて頭角を現すと、中学2年からは負け知らず。そして、日体大への入学が決まると、父も大きな決断を下す。30年におよぶ教員生活に別れを告げ、娘とともに上京。日体大でコーチに就いた。
2人は都内のアパートで同居し、俊一さんは食生活など生活面にも目を配った。マットを離れても一緒という環境で、時には衝突もした。藤浪は試合後のインタビューで「4歳から父の元でレスリングをやってきて、ぶつかり合うことや、ケンカすることも多かったんですけど、やっぱり父がいなかったら、私はここにはいないと思うので、本当に一番感謝したい存在です」と明かした。

■世界レスリング連盟も「あのイチョウがコーチ」

藤波にとって、大学で五輪4連覇の伊調馨さんの指導を受けたことも大きかったようだ。NHKの五輪中継番組に伊調さんが出演した際には、2人がスパーリング形式の練習を行う映像も流された。緊張感漂う激突は真剣勝負そのもので、司会を務めたアナウンサーも「ちょっと近寄りがたい雰囲気が……」と漏らすほどだった。
伊調さんも「やるたびにお互い本気でやる」とキッパリ。藤波が五輪4連覇のレジェンドの胸を借りて、成長を遂げたことは想像に難くないだろう。
世界レスリング連盟も公式サイトで「フジナミのコーチには、あのオリンピック4連覇のカオル・イチョウらがついている」と記し、存在の大きさを伝えた。
父でありコーチである俊一さんと、マット上でアドバイスを伝授した伊調コーチ。2人が藤波の金メダル獲得を後押ししたことは確かなようだ。