P's-first HPより

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「法令違反を犯している疑いがある」との情報が

 ペットショップ大手として知られる「P’s‐first」(ペッツファースト)が、動物愛護管理法で定められた「8週齢規制」に違反し、生後8週齢以下のペットを展示・販売しているという疑惑が。実際に子犬生育の専門家とともに調査に赴くと――。

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 本誌(「週刊新潮」)記者がペッツファーストの関東圏の店舗を訪れたのは今年初夏のある日のことだった。同社は全国に79店舗のペットショップを展開している他、ペット関連の雑貨、フードの小売事業に加え、動物病院まで運営する大手ペット関連企業である。直近の年商は約140億円。

P's-first HPより

 動物愛護管理法では、生後56日以下の犬猫の展示・販売を禁じる「8週齢規制」が定められている。本誌記者が店舗を訪れたのは、「ペッツファーストが法令違反を犯している疑いがある」、すなわち、8週齢以下のペットを展示・販売している疑いがある、との情報に接したためである。

「5〜6週齢くらいのように見える」

 厳密に言うとこの法令でペットショップに課されているのは、ブリーダーから購入する犬が8週齢を超えているかを確認すること。確認作業を怠る、あるいは、ブリーダーとの「暗黙の了解」のうちに8週齢以下の犬を店舗で販売していれば、そのペットショップは法令違反を侵していることになるのだ。一介の客を装った本誌の“調査”は子犬生育の専門家同行のもとで行われた。

 調査を行った日、展示されていたケースから出して抱っこさせてもらったのはオスのポメラニアンだった。男性なら片手の中に体の大半が収まるようなサイズ感。小さくてフワフワしているその子犬はなでても嫌がる素振りは見せず、膝に乗せると、ペタンと座ってしばらくそのままだった。あまりに動かないので寝ているのかと思ったが、顔をのぞきこむと起きている。膝の上で身じろぎもせず、そこが自分の居場所であるかのようにちょこんと座っている。指を出すとチュパチュパ吸ってくる。問答無用の「かわいさ」だ。

 店員がその場を外した隙に同行した専門家が子犬の口の中を撮影した。後にその専門家が語ったところによると、

「あの子犬は、8週齢を過ぎていない可能性があります。門歯と呼ばれる上下6本ずつの前歯が少し生えているので、5〜6週齢くらいのように見えます」

「明らかに体重が軽い」

 さらにその後、この子犬生育の専門家がいくつかの店舗で調査したところ、8週齢以下の可能性がある子犬が複数見つかった。中でも、吉祥寺本店の「(1)ポメラニオン×チワワのミックス」と吉祥寺サンロード店の「(2)チワワ」に関しては、

「(2)は8週齢にしては体重が軽かった。(1)については明らかに体重が軽かった。口内の歯の状態を見ても、5〜6週齢の可能性がある」(調査した子犬生育の専門家)

 また、この2頭の口内の歯の状態がある程度分かる写真を複数の獣医師に見てもらったところ、

「写真だけでは完全には判断できないが、歯の状態から見て8週齢に達していない可能性がある」

 との証言が得られた。

「健康に成長できない恐れが」

 そもそも、幼過ぎる子犬を販売することの問題点とはどのようなものなのか。

「生後56日、8週齢以下で母犬から引き離されると、無駄ぼえやかみ癖などの問題行動が多くなったり、虚弱体質になりやすいのです。子犬は、4週齢くらいで前歯が生え始め、それが母犬の乳首に当たるので母犬がお乳を与えるのを嫌がるようになり、母乳以外の物を食べるようになります」

 と、さる獣医師は言う。

「歯の状態は消化に直結しますから、あまりに幼い段階で母犬から引き離されて市場に出されると、健康に成長できない恐れがあります。食欲がなかったり、下痢を頻繁に起こすこともあります。病気がちだったり、無駄ぼえやかみ癖があったりすると、飼い主に“飼いにくい”と思われ、飼育放棄される恐れが増します」

 こうしたさまざまな問題点を改善するため、2021年6月にスタートしたのが8週齢規制であるが、現実にはこのルールを守っていないブリーダー、ペットオークション企業が数多く存在することが分かっている。

(1)と(2)の子犬は8週齢に満たないのではないかという指摘に対して、ペッツファースト側はいずれも超えていると回答。さらに、同社は独自に獣医師や外部の動物病院、大学教授に診断してもらった結果を添えて、法令には違反していないと主張。ところが一方で(1)と(2)の店舗販売はいったん取りやめたといい、報じた場合は損害賠償を請求する旨を伝えてきたのである。

 法令違反がないなら堂々と販売を続ければいいだけのことなのだが――。ちなみに本誌が取材した獣医師は(1)と(2)の子犬の口内の写真を見たうえで、ペッツファースト側の大学教授らの回答に強い疑問を寄せている。8月8日発売の「週刊新潮」では、「出生日偽装」の問題などと併せペット業界の闇に切り込んでいる。

週刊新潮」2024年8月15・22日号 掲載