眞栄田郷敦インタビュー/実写化作品で“血の通った人間”を演じるための挑戦「僕は僕が演じた八虎が好き」
藝大合格を目指す若者たちの情熱と苦悩をありありと描き、多くの読者の心に爪痕を残した漫画『ブルーピリオド』。8月9日から公開される実写映画では、勉強も遊びもそつなくこなしてきた主人公・矢口八虎を眞栄田郷敦が演じる。

絵と出会ってから「うまくいかない」現実ばかりに直面し、それでも必死に食らいつく八虎の姿は、見ているこちらの心をえぐるほどに人間臭い。多くの実写化作品に出演する眞栄田郷敦は、この役をどのように演じきったのだろうか。役との向き合い方から脚本の読み込み、眞栄田の「天才論」まで前編・後編でインタビューをお届けする。

撮影/アライテツヤ 取材・文/阿部裕華
ヘアメイク/MISU スタイリング/MASAYA
衣装協力/シャツ¥89,100(参考価格)、パンツ¥69,300(参考価格)、ローファー¥95,700(3点ともにMSGM / アオイ tel.03-3239-0341)、その他スタイリスト私物

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八虎の人間くささを追求「あえて原作を読まずに臨んだ」


―― 人気マンガの実写映画化ということで、情報が解禁された際には大きな話題となりました。眞栄田さんは『東京リベンジャーズ』(三ツ谷隆 役)や『ゴールデンカムイ』(尾形百之助 役)などマンガの実写化作品に多く出演されていますが、実写化作品のキャストに眞栄田さんがいると安心するファンは多いと思います。

本当ですか? 嬉しいなぁ……。

―― それは作品に対する誠実さが感じられるからだと思います。一方で、原作が人気作品となるとプレッシャーを感じることもあるのではないかと。実写化作品のオファーをいただくとき、毎回どのような心境なのでしょうか?

今までは、「原作ファンの方々がいっぱいいるから、その人たちに失礼がないようにしなければ」と思っていました。だけど今回(『ブルーピリオド』)に関しては、「演じる役が原作と多少違うと思われたとしても、魅力的な人間として見られるようにすればいい」という考えを持ちました。



―― 「演じる役が魅力的な人間として見られるように」という考えに至ったのには、何かきっかけが?

いろんな実写作品に出演させていただく中で、原作に引っ張られすぎてしまうあまり、演じる役を“表面的”にしか捉えていない部分があるかもしれないと思うようになったんです。本来、原作で描かれていることだけでなく、脚本から読み取れる情報を含めて、演じる役を人として深掘りしたほうがより人間らしさ、人間くささ、人間としての魅力が見えてくるはずだと。

なので、これまで出演した作品は撮影前に原作を読み込んでいたのですが、『ブルーピリオド』は思い切ってあえて原作を読まず、原作をあまり意識せずに役へ臨んでみたんですね。そしたら、ちゃんと人として演じることができました。

―― 本作から、役づくりのアプローチを変えたんですね。

はい。これまで演じてきた作品の中にはキャラクターが強い原作もあり、それはもちろん原作に沿うことが大事だったと思うし、アプローチが間違っていたとは思いません。

ただ『ブルーピリオド』は、“藝大受験へ挑む”という、僕らが生きている現実で起きているできごとを描いた作品なので、ちゃんと血の通った人間として演じるほうがいいだろうと。そういうアプローチで演じました。

―― 原作は撮影が終わってからお読みになったのでしょうか?

はい。「僕が演じた八虎と原作の八虎は違うな……」と感じましたね。僕は僕が演じた八虎が好きだから、原作との違いを感じても「これで良かった」と思っています。



役づくりに活かされた、脚本から人間性を読み解く意識


―― 八虎が美術の授業で自分の絵を褒められたときや、美術予備校で(高橋)世田介(演:板垣李光人)のデッサンに触れて悔しさを滲ませるときなど、“血の通った人間感”がすごくしました。先ほどおっしゃっていた「魅力的な人間として見られるように」するために、役づくりでは具体的にどんなことを意識されましたか?

脚本から八虎の人間性を読み解くことを意識しました。彼のベースになる人柄、考え方、なんでそういう思考になるのか、内側に抱えているものが何なのか、などを考えて。

今回そうやって演じてみたことで、自分の中で上手くいった感覚があったので、原作のあるなしに限らず、最近は役づくりをするうえで脚本からしっかり役を読み解くことを意識しています。

―― 脚本を読み解いていくうえで、監督や脚本家の方に相談することもあったのでしょうか。

自分である程度は脚本から役をつくっていって、撮影現場で相談して詰めていったり、解釈をすり合わせたりしていきますね。演技パターンを2択で迷うことが多いので、(萩原健太郎)監督と「どっちのほうが魅力的に見えますか?」「この場面はどっちの芝居のほうがいいですかね?」とかなり話します。

『ブルーピリオド』では特にそういう話し合いをしたかもしれません。「この瞬間は八虎がネガティブな印象に映るかもしれないけど、作品全体を通して見たときに、そのネガティブな印象が物語後半に効いてくると思う。どう思いますか?」など、八虎を魅力的に見せるためにどうすべきかという話はよくしましたね。

―― 監督とお話をする中で、役づくりに活かされた言葉はありますか?

いっぱいあるのですが、たとえば「高校生だからこその若さやダサさ、若気の至り……そういうものを表現していきたい」という監督の言葉は役づくりに活きていると思います。なので、高校生という繊細な時期ならではの泥臭さは撮影現場でも相談しました。



「やり切った!」スッキリした気持ちでクランクアップ


―― 映画『ブルーピリオド』のライブ配信で「すごく愛情深い作品」とおっしゃっていました。数多くの作品に出演する眞栄田さんですが、本作がそういう特別な作品となった理由をお聞かせいただけますか。

制作に関わったスタッフ、キャスト、みんながこの作品に本気だし、みんながこの作品を好きだし、楽しんで制作に携わっていました。撮影部、照明部はもちろん、装飾や美術などが重要になってくる作品です。「このシーンはこういう心情だからこういう空間を演出しよう」と各部署が本当にこだわりを持って映画をつくっていました。

たとえば、八虎が美術を始める前と始めたあとで心情に変化を付けていくために、八虎の部屋の小道具、人物へのライティングなど、ストーリーにおける空気感のグラデーションをすごく考えていた。しかも、スタッフ間で相談したり共有したり、常に話し合いをして進めていて。一丸となって作り上げている感覚がすごくあったので、僕にとって愛情深い作品になりました。

―― そこまでスタッフやキャストの熱量が高かった撮影現場となると、クランクアップの雰囲気はいかがでしたか?

最後の撮影は藝大受験2次試験のシーンだったのですが、「いいものを作ろう!」とみんなの空気が一体となっている感覚があって、すごく素敵な撮影現場でした。

映画の現場では、その日の最後に撮影するカットを「マティーニ」と呼ぶんですね。「このカットのあとは心置きなくマティーニが飲めるぞ!」という意味から来ている用語です。その言葉に共感できるくらい、僕自身「やり切った!」とスッキリした気持ちで撮影を終わらせることができました。

―― そんなこだわり尽くされた映画『ブルーピリオド』、学生のみなさんにとっては夏休みど真ん中の8月9日公開となります。夏休みは自分の進路や将来についてじっくり考える時期でもありますが、そんな方々に向けてメッセージをお願いします。

好きなことや自分が「やる」と決めたことへ突き進む苦しさや葛藤、その先にあるやりがいや喜びが表現されている本作を見て、「耐えられない」と思う人もいれば、「素敵だな」と思う人もいるはずです。ただ、どちらにしても何か少しでもやりたいことがあるなら、とりあえずやってみればいいと思っていて。金銭面とのバランスを取りながら楽しめる仕事ができることが、僕はいちばん幸せだと感じているから。

進路で悩んでいる学生のみなさんは、きっと「今決めた進路が人生のすべてになるかもしれない」という感覚に陥ることもあると思います。でも、人生ってすごく長いから、やってみて「違うな」「失敗した」「好きだったのに嫌いになりそう」と思っても、いくらでもやり直せる。やってみて向き合うか向き合わないかを判断すればいい。まずはなんでも試してみてほしいです。

■撮り下ろし写真もたくさん掲載! インタビュー後編はこちら
眞栄田郷敦インタビュー/「”天才”というのは時に人を傷つける言葉」
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眞栄田郷敦(まえだ・ごうどん)
2000年1月9日生まれ。アメリカ・ロサンゼルス出身。2019年、映画『小さな恋のうた』で俳優デビュー。主な出演作に、映画『東京リベンジャーズ』シリーズ、ドラマ『エルピス -希望、あるいは災い-』(関西テレビ)、大河ドラマ『どうする家康』(NHK)、ドラマ『366日』(フジテレビ)など。映画にも出演した『ゴールデンカムイ』は、今秋WOWOWにて連続ドラマが放送・配信予定。


映画『ブルーピリオド』キャストのインタビュー記事


※後編はライブドアアプリ限定の無料記事となります
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前編:板垣李光人インタビュー/“隣の芝は青く見える”けど――僕にも自分にしか出せない色がある
後編:板垣李光人インタビュー/“「好き」という気持ちを信じる”ことは揺るがないようにしたい

高橋文哉(鮎川龍二 役)
前編:高橋文哉インタビュー/足の先から吐息まで。「かわいい」を追求し、全身全霊で表現し続けた『ブルーピリオド』の撮影期間
後編:高橋文哉インタビュー/『ゼロワン』の頃は、今の自分の姿を想像もしていなかった

■作品情報


映画『ブルーピリオド』
2024年8月9日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
https://wwws.warnerbros.co.jp/blueperiod-moviejp/

©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会

プレゼント情報


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