桜田ひよりインタビュー/才能だけじゃない。ただ好きなだけでもない。芸能界で活躍し続けるために必要なこと
藝大合格を目指す若者たちの情熱と苦悩をありありと描き、多くの読者の心に爪痕を残した漫画『ブルーピリオド』。8月9日から公開される実写映画では、主人公・矢口八虎(演:眞栄田郷敦)を絵の道に導くキーパーソン・森まるを桜田ひよりが演じる。

人の将来さえ左右してしまうほどの絵を描く“森先輩”だが、彼女がつぶやく「才能なんかないよ」という言葉は、本作の中で特に印象的な言葉の1つでもある。桜田自身も、この場面に“納得”させられたと明かす。“納得”という言葉の真意や、八虎と森先輩のシーンの撮影秘話をはじめ、桜田自身のプライベートの話まで、前編・後編のインタビューでお届けする。

撮影/アライテツヤ 取材・文/阿部裕華
ヘアメイク/菅井彩佳 スタイリング/前田涼子
衣装協力/ブラウス¥35,200…ソブ、ワンピース¥64,900…ダブルスタンダードクロージング(フィルム tel.03-5413-4141)

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「才能がある」森先輩と同じ言葉をかけられた経験も


―― 桜田さんは『ブルーピリオド』の原作を読まれていましたか?

出演が決まってから読みました。私の周りでも読んでいる方が多かったこともあり、ずっと気になっていた作品だったんです。実写映画化で森まるちゃんを演じることになったので、まるちゃんを中心に読ませていただきました。

―― 原作や森先輩へはどのような印象を抱かれましたか?

まず原作への印象は、高校生ならではの葛藤、1つのきっかけで心が動く瞬間がとても丁寧に描かれているなと。スポーツ漫画ではないのに、スポーツ漫画を読んでいるかのような熱さをすごく感じました。

そして、まるちゃんの印象は「かわいい……!」です(笑)。見た目も行動もすごくフワフワとしていてかわいいのに、絵を描く瞬間、絵と向き合った瞬間の彼女の表情や言動に芯の強さを感じて、とてもギャップのある子だと思いました。本当に人の心を動かせるだけのものを持っている。「さすが……!」の一言に尽きました。



―― 桜田さんのおっしゃる通り、森先輩は気弱でおとなしい性格かと思いきや、派手な風貌の八虎に「才能がある」と言われても臆せず自分の意見を主張できる素敵なキャラクターです。特に印象に残っているセリフやシーンはありますか?

やっぱり「才能なんかないよ。絵のこと考えてる時間がほかの人より多いだけ」というセリフですね。このセリフを見て、すごく“納得”したんですよ。

―― 納得、ですか?

私自身、5歳からこの仕事をやっていて、いろんな場面で「それができるって才能だよ」「それはあなたの持っている才能だからね」と言われることがありました。

もちろんそう言っていただけることはすごく嬉しいですけど、そう思っていただけるのは人よりもお仕事へ向き合う時間が長かったからなんですよね。才能だけじゃなくて、プラスの努力で頭1個抜けることができる。この世界(芸能界)にいる皆さんがそうしていると私は思っています。

ただ好きなだけじゃなくて、そこに努力をプラスさせていくのは、相当な根気がないと難しい。そのことを言葉で示してくれたまるちゃんをすごく尊敬しました。



八虎と森先輩の関係性は「心の赴くままに」演じた


―― 「主人公に影響を与える先輩」という役を演じるうえで、どのように役づくりをしていったのでしょうか。

まるちゃんの言動1つひとつが八虎に刺さっていくので、感情の引き出しから少しずつニュアンスを変えて、いろんなパターンのお芝居で撮影に臨みました。最初の段階から、(萩原健太郎)監督には私の考えたまるちゃんのお芝居に納得いただいていたので、自分の中のまるちゃんを提供できたとは思っています。

ただ、それこそ最初に八虎へ影響を与えるシーンは、作中のすごく大事なシーンの1つでもあったので、撮影時には監督と「もっとこういうニュアンスのお芝居が見てみたい」「こういうパターンもあるよね」と話し合って進めていきました。言動だけではない、まるちゃんの内面から浮き出てくるものをすごく意識できたと思います。

―― 声を張っているわけではないのに、言葉が強く聞こえてくるのがとても印象的でした。

あまり大きな声は出さないように意識していましたね。まるちゃんと八虎、2人だけの空間でしか聞こえないくらいの声量にしようと。相手が注意深く聞こうとしてしまうような、「なるほど」と納得してしまうような、そういう自然と引き込まれる雰囲気を自分の中で意識して演じることができました。

―― 森先輩と八虎は2人きりのシーンが多くありますが、「恋愛方面に進むのか……?」と思いきや決してそうはならないところが魅力的だと思います。桜田さんはこの2人の関係性をどのように解釈し、お芝居へ落とし込みましたか?

2人の関係性みたいなものはあまり意識していなかったです。自分の絵を見て美術の道に進んでくれた嬉しさと期待感。八虎と向かい合って美術室で絵を描くシーンで「矢口くんには少し期待してるんだ」というセリフがあるように、本当に期待していると思うんです。それは彼の絵に期待しているだけじゃない。彼の絵に対する情熱、行動力に惹かれているから出てきた言葉でもあります。

「これからの成長が楽しみ」と見守るスタンスを、常に心の中で持っていたいと思って演じていました。まるちゃんはナチュラルにそういうことを思える人だと感じていたので、心の赴くままにお芝居をしましたね。



理解度を深めていきながら、役と向き合っている


―― 心の赴くままにお芝居ができたのは、森先輩へ共感できる部分が多かったからなのでしょうか。

私は、共感することと、自然体に演じられることにあまり相関関係はないと思っているんです。それはこの作品だけではなく、どの作品にも同じことが言えます。

というのも、役によっては絶対に共感できないことってあると思うんです。どういう思考をしているのかわからないこと、自分からすると納得のいく行動ではないことだってあります。そういうときに私がすごく意識しているのは、“理解度を深めていくこと”なんです。

―― どのように理解度を深めていくんでしょうか?

たとえば、殺人鬼の役を演じるとなった場合、この人がこういう行動をとるようになってしまった理由を考えていきます。「幼少期にこういう出来事があって、それが原因で、こういうことをされるとこういう気持ちになってしまう」「だから、こういう行動をとってしまうんだ」と、少しずつ順を追って理解を深めていく。

最初は納得のいかない行動でも、理解を深めることによって腑に落ちていくんですよね。私はそういう積み重ねで役と向き合うことが多いです。

だから今回、まるちゃんを演じるうえでも、まるちゃんの描く絵に、周囲からの見られ方がどう影響してきたのか、どれほどの創造力が繋がっているのかと理解を深めていきました。見た目と話し方はフワフワしているけど、芯には自分の絵が好きであること、自分の頭と心と腕を信じて楽しく絵を描いているということを理解していく過程はすごくやりがいを感じました。



高橋文哉演じる「ユカちゃん」の美しさにビックリ


―― 映画『交換ウソ日記』に続いて、高橋文哉さんとの共演となります。高橋さんが演じる「ユカちゃん(鮎川龍二)」は森先輩と一緒にいるシーンも多いかと思いますが、どんな印象を抱きましたか?

ちょうど映画(『交換ウソ日記』)の宣伝をしていた去年(2023年)の夏に、『ブルーピリオド』の撮影をしていたんですね。なので、高橋さんの目に見える変化を感じていました。

―― どのような変化を感じていたのでしょう?

ユカちゃんに見た目から近づくために、体重をどんどん落としていたんです。衣装さんからコッソリ聞いたのですが、制服のサイズも最初に採寸したときよりサイズが小さくなっていたそうで……! 見た目を含め、高橋さんの役づくりにかけるストイックさは役者としてすごく尊敬しました。

彼の努力が結集しているようで、「人ってここまでできるんだ!」と感動しました。同世代の役者さんだからこそ「すごい……」と驚かされて。同時に、「自分もここまでできるのかもしれない」「私も頑張ろう!」と思わされました。

―― 本作を拝見したとき、あまりの美しさに驚かされました。

私もクランクインのとき、あまりにもキレイでビックリしちゃいました(笑)。映像で見ても十分美しいですが、実際に見たときのほうがもっとキレイでしたよ!

■撮り下ろし写真もたくさん掲載! インタビュー後編はこちら
『桜田ひよりインタビュー/映画は3本連続で観ることも。家でのベスト鑑賞スタイルは?』
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桜田ひより(さくらだ・ひより)
2002年12月19日生まれ。千葉県出身。子役として芸能活動をスタート。2018年から2023年まで『Seventeen』(集英社)の専属モデルを務める。主な出演作に、ドラマ『silent』(フジテレビ)、映画『交換ウソ日記』、映画『バジーノイズ』、ドラマ『あの子の子ども』(フジテレビ)など。

・公式サイト:https://www.ken-on.co.jp/hiyori/
・公式Instagram:https://www.instagram.com/hiyori_sakurada_official/


映画『ブルーピリオド』キャストのインタビュー記事


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眞栄田郷敦(矢口八虎 役)
前編:眞栄田郷敦インタビュー/実写化作品で“血の通った人間”を演じるための挑戦「僕は僕が演じた八虎が好き」
後編:眞栄田郷敦インタビュー/「”天才”というのは時に人を傷つける言葉」

板垣李光人(高橋世田介 役)
前編:板垣李光人インタビュー/“隣の芝は青く見える”けど――僕にも自分にしか出せない色がある
後編:板垣李光人インタビュー/“「好き」という気持ちを信じる”ことは揺るがないようにしたい

高橋文哉(鮎川龍二 役)
前編:高橋文哉インタビュー/足の先から吐息まで。「かわいい」を追求し、全身全霊で表現し続けた『ブルーピリオド』の撮影期間
後編:高橋文哉インタビュー/『ゼロワン』の頃は、今の自分の姿を想像もしていなかった

■作品情報


映画『ブルーピリオド』
2024年8月9日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
https://wwws.warnerbros.co.jp/blueperiod-moviejp/

©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会

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