子どものやる気をアップさせる家とは?(写真:PhotoAC)

リビング学習と子ども部屋学習、子どもが勉強する最適な場所はどちらでしょう? 答えは、子どもそれぞれに合った勉強場所があります。

家の中でどこが一番勉強しやすいのか、いろいろな場所を試し、探すことを教育専門家の石田勝紀氏は提案します。親目線だけでなく、子どもの「居心地のよさ」を大切にし、子どものやる気をアップさせましょう。『集中力 やる気 学力がアップする 頭のよい子が育つ家のしかけ』より、一部抜粋、再構成してお届けします。

リビング学習が合わない子もいる

子どもは、一人ひとりやる気が起きる時間と空間が違います。

よく「リビングで勉強するといい」といわれていますが、じつは、全員に当てはまるわけではありません。なかにはリビングでは落ち着かない子もいるので、家のなかでどこが一番勉強しやすいのか、いろいろな場所で試してみましょう。

場所だけでなく、時間によっても、やる気が上がるか下がるか、違いを確認してみてください。

このように見ていくと、子どものやる気が出る場所、タイミングは一人ずつ違うことがわかります。

その子に合った場所と時間を見つけるために、地道に調査をしていきましょう。

【子どものやる気の確認ポイント】
1.どの時間帯に勉強するのが実行しやすいか?              
たとえば、朝晩どちらがよいか/おやつの前・あと、夕食の前・あとどちらがよいか など

2.どの場所で勉強するのがやりやすいか?
たとえば、子ども部屋、リビング、階段下 など

3.どの位置で勉強するのが居心地がいいか?
たとえば、同じリビングでも座る場所を変えて調査してみる など

■「やる気の出る場所」は、早いうちから探しておく

どの場所、どの時間で勉強をするのがよいかは、子どもが小さな頃からいろいろ試しておくのがおすすめです。

たとえば、やらなくてはいけないことが複数あるときは、「国語と算数のドリル、どっちからやる?」「どこで、何時ぐらいに取り組もうか?」と、本人に確認しながら試していきましょう。このとき、「学校から帰ってきたら、まず宿題しなさい」というように、一方的な発信はしないようにしましょう。それよりも、ストップウォッチを活用して時間をはかり、「ここでやるといつもより速くできたね、おもしろいね!」とその子に合った場所を見つけてあげたほうが、結果的に質の高い勉強習慣が身につきます。

■子どものリズムに合わせて、学習習慣をつくろう

子どもは、まだ理性が育っている途中の時期にいるので、「気分」で動いています。

その気分を利用して、勉強のやる気を上げていきましょう。

たとえば、実際に「勉強をするのは、朝の子ども部屋がいい」という子がいたのですが、親御さんの反応は、「うちの子は、いつも宿題を後回しにして、朝やっているから困るんです」というものでした。ただ、これは、大人目線のとらえ方です。その子にとって、朝の子ども部屋が一番やる気の出るところなら、当日の朝に宿題をしてもよいのです。

子どもたちは一定のリズムのなかで生きているので、そのリズムに合わせてあげたほうが、勉強をする習慣が整います。ぜひ、いろいろな場所と時間を試して、その子に合った勉強場所を探してあげてください。

集中力が変わる!「座り心地のよい椅子」は勉強の必須アイテム

学習に適した環境を整えるために、わたしが考える最大のポイントは、「座り心地のよい椅子」です。勉強ができるように、本人が落ち着いて座れる椅子を用意してあげましょう。

たとえば、一般的な学校の椅子は、基本的に木でできていますが、じつは、あまり座り心地がよくありません。

これを上手に利用しているのが、街中のカフェです。カーブのついていないかたい木の椅子では長く座っていられないため、お客さんの回転率が早くなります。つまり、店内の雰囲気をおしゃれに保ちながら、早くお店を出てもらえるようなしかけになっているのです。

大人も長く座っていることができない木の椅子で、子どもが集中して勉強をすることは難しいでしょう。

すぐに席を立ってしまう子の場合、単純に椅子が合っていないことも少なくありません。子どもが勉強をするときには、座り心地がよい椅子、疲れにくい椅子を選んであげることが重要なのです。

また、勉強用の椅子を購入する際は、成長に合わせて調整できる、長持ちする椅子がおすすめです。大人も使えるような椅子であれば買い直しがいらないので、お金の無駄もなくなりますよ。


(画像:『集中力 やる気 学力がアップする 頭のよい子が育つ家のしかけ』より)

ラックを使って、自由に移動!勉強に「フリーアドレス制」を導入しよう

「うちの子は集中力が続かなくて……」とお悩みのご家庭は、環境をどんどん変えて、子どもが飽きずに取り組めるしくみを取り入れてみましょう。

最近のオフィスでは、「フリーアドレス制」を導入するところも増えてきているので、子どもたちが勉強するときも、ぜひ、この「フリーアドレス制」を活用してみませんか? 

フリーアドレス制とは、固定席をもたずに好きな席で働くワークスタイルのことです。

【勉強にフリーアドレス制を取り入れる方法】
・自分専用のキャスターつきのラックやトレーを用意する
・ラック(トレー)のなかに勉強に使う筆記用具などを入れておく
・教科書やプリントもまとめて保管
・リビングや子ども部屋などに、ラックが移動できる空間を準備する

「今日は気分を変えてここでやろう」「今日から、フリーアドレス制にしよう」と場所を移動して取り組むことで、気持ちが乗ってくる子どもも多いので、ぜひ試してみてくださいね。

リビング学習では、ダイニングテーブルの上に自分のものをずっと置きっぱなしにしてしまう子もいるので、「共用の場所を使うときはきれいに片づける」という習慣が身につけられるように、家庭内でもうながしましょう。


整理整頓を学ぶうえでも、「フリーアドレス制」の導入はおすすめです。

■きょうだい全員が落ち着く環境を見つけよう

きょうだいが多い場合は、1台の机をみんなで共有しているご家庭もあります。これはフリーアドレス制の変化版のようなものです。

このご家庭では、学習机を共用にしたことで、お子さんたちが机の上を片づけられるようになったそうです。きょうだいがいる場合は、相手の様子に左右されることもあるので、できるだけお互いにとってよい環境を整えてあげましょう。


(画像:『集中力 やる気 学力がアップする 頭のよい子が育つ家のしかけ』より)

「ずっと同じ場所がいい」という子の場合は、無理に移動する必要はありません。フリーアドレス制にする場合も、ご家庭によって一長一短があるはずなので、子どもたちに本当に合っているのか、いろいろなパターンを試してみてください。

(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)