新横浜ラーメン博物館(横浜市)は2024年3月6日、オープンから30年の節目を迎え、31年目の新たな一歩を踏み出しています。30周年企画の一環で、2月からはラーメン職人の潜在能力や新たな才能を発掘するラーメンコンテスト「佐野実メモリアル ラーメン登龍門2024」を実施。6月2日に最終選考(決勝戦)が行われ、上位3店がラー博に順次出店します。8月1日から登場するのは、優勝した「博多文福」。新横浜ラーメン博物館の協力を得て、同店の紹介記事を「おとなの週末Web」でも掲載します。

新横浜ラーメン博物館(横浜市)は2024年3月6日、オープンから30年の節目を迎え、31年目の新たな一歩を踏み出しています。30周年企画の一環で、2月からはラーメン職人の潜在能力や新たな才能を発掘するラーメンコンテスト「佐野実メモリアル ラーメン登龍門2024」を実施。6月2日に最終選考(決勝戦)が行われ、上位3店がラー博に順次出店します。8月1日から登場するのは、優勝した「博多文福」。新横浜ラーメン博物館の協力を得て、同店の紹介記事を「おとなの週末Web」でも掲載します。

岩岡洋志・新横浜ラーメン博物館館長のコメント「これは新しいカタチの味噌ラーメン」

いよいよラーメン登龍門の優勝店として「博多文福」さんがオープンします。

もともと博多文福本店では麺が、太麺と細麺から選べ、福岡では細麺が主流なため、あえて太麺を推奨しておりました。決勝戦の日、13人の審査員に対して、店主の島津智明さんは太麺で行こうと考えていたようですが、細麺も食べてもらいたい、しかし40分という限られた時間の中で両方の麺を1杯ずつ食べてもらうことも難しい、そんな中で生まれたのが「ミックス麺」。つまり太麺と細麺の両方を1杯の丼で味わえるというものです。

これが審査員からの評価が高く、優勝を勝ち取りました。もちろんミックス麺だけで優勝できるわけではありません。みそソムリエの資格を取り、味噌と向き合い、生味噌を使うという手法で味噌ラーメンを作るという点も評価が高い点でした。

店主の島津智明さん(中央)と、岩岡洋志・新横浜ラーメン博物館館長(左)

印象的だったのが、優勝発表のタイミングです。まさに“鳩が豆鉄砲を食ったような顔”だったのです。後から聞きましたが、本人は上手くいけば2位〜3位に入れるかな?くらいに思っていたようで、2位と3位に自分の名前が呼ばれなかったため、心の中で「終わった」と思ったようです。

メニュー名の「淡麗生味噌ラーメン」の”淡麗”は、昨今の淡麗系ラーメンという意味ではなく、すっきりしているが上質な味わいという意味が込められております。スープで生味噌の麹が変化する味わい、そして太細のミックス麺、これは新しいカタチの味噌ラーメンだと思います。

博多文福の淡麗生味噌味噌ラーメン

■優勝「博多文福」出店情報
出店期間:2024年8月1日(木)〜1年間
場所:新横浜ラーメン博物館地下1階(準優勝「らーめん愉悦処 鏡花 八王子想庵」跡地)

一風堂の北米エリアの責任者、海外の新規出店に携わる

最後は優勝を飾った「博多文福」さんの出店です!

店主の島津智明(しまづ・ともあき)さんは1980年、福岡生まれ。1998年、専門学校時代に、福岡県大野城市の一風堂大宰府インター店でアルバイトを始めます。働いていると、「ラーメン業界を変えてやる」という志の高い人たちばかりで、「こんな風になりたい」「この人たちと一緒に働きたい」との思いが募り、2000年に一風堂(力の源カンパニー)に入社しました。

店主の島津智明さん

2002年には、東京都内の一風堂五反田店の店長に就任。当時としては、最年少(22歳)の店長でした。2005年には関東のエリアマネージャーに。こちらも当時としては最年少(25歳)でした。

2000年、一風堂西通り店(福岡市、現在は閉店)の立ち上げのタイミングで社員となる
2005年、一風堂大名本店(福岡市)のイベント時の写真

そして、2008年、米ニューヨークの店舗「IPPUDO NY」の立ち上げに「Operation Manager(オペレーション・マネージャー)」として参画。以後7年半の海外生活では、一風堂の北米エリアの責任者として、韓国、香港、オーストラリア、イギリスでの新規出店に携わりました。

「IPPUDO NY」時代の島津さん

帰国後は、国内の一風堂営業本部長や取締役を歴任しましたが、2021年5月、アルバイト期間を含め22年間働いた一風堂を“卒業”。2021年12月、福岡県春日市に「博多文福」を開業し、新たな一歩を踏み出した。

2021年、「博多文福」オープン時の外観

「新しいご当地味噌ラーメンを作りたい」

今回、どのような経緯や想いでラーメン登龍門にエントリーしたのか。島津さんに伺いました。

「私は20数年間、一風堂、そしてラーメンに携わってきました。独立する際に、地元福岡で開業すること、そして5年以内に海外へ日本の食文化を届け、人モノの交流を作るという目標を掲げておりました。そして、とんこつラーメンが福岡のご当地ラーメンとして、地元の人に愛されるように、私は福岡・博多で新しいご当地味噌ラーメンを作りたいという想いがありました。地産地消を考えたときに、今回のラーメン登龍門のテーマが“味噌”と”国産小麦”でしたので、この大会をきっかけに1つの形を表現したいと思い、応募致しました」

「ラーメン登龍門2024」最終選考の様子

「とんこつの聖地」でなぜ“味噌”なのか

島津さんの経歴を見るとわかるように、20数年間働いた一風堂はとんこつラーメンのお店ですし、開業した福岡は「とんこつラーメンの聖地」です。何故そのような経歴と福岡という立地において味噌ラーメン専門店を開業したのでしょうか。

店主の島津智明さん

「独立する際、味噌ラーメン専門店をやると言ったら『なんで味噌?』と100人以上に言われました(笑)。味噌を選んだ理由は色々な国で暮らしてみて、あらためて日本の発酵文化や醸造文化の面白さ・奥深さに気づいたからです」

「醤油や味噌、日本酒など、その技術は古くから日本の暮らしに根付いていて、地域によって味に違いがあります。そこから”みそソムリエ”の資格も取り、学びを深めていく中で、とんこつの聖地・福岡だからこそ、味噌ラーメンで挑戦する価値があるのではないかと考えました」

みそソムリエの認定証

味噌ラーメン専門店にした背景には、こんな島津さんの想いがあったのです。

島津さんが目指す味噌ラーメンとは…「生味噌」

島津さんが試行錯誤のうえ辿り着いたのは、あえて火入れをしない”生味噌”です。生味噌を使用するのは、麹(こうじ)が生きている感じを表現するためで、スープの熱で麹が変化していき、食べ始めと食べ終わりまで飽きずに食べられるという設計です。

5種類の生味噌をブレンド

島津さんは、次のように話しています。

「味噌を勉強していくうちに、火を入れることにより、味は安定はしますが、味噌本来の特徴が失われ、勿体ないな〜と思うようになりました。生味噌はスープの熱で麹が変化し、酸味だったり、塩味、旨味というものが変わっていくのが面白く、それを丼1杯の中で表現したかったのです」

「パンチの効いた濃厚味噌ラーメンも個人的には大好きですが、私が目指しているのは小さな子供からお年寄りの方まで味わえて、毎日でも食べられるような”ほっこり”できる味噌ラーメンです。そして地元を離れた若い子たちが帰省したら”久しぶりに文福行こうか!”といって家族や友達と食べに来たくなる町のラーメン屋さんを目指しています」

登龍門優勝作品「淡麗生味噌ラーメン」

ラーメン登龍門の優勝作品が「淡麗生味噌ラーメン」です。味噌ソムリエである島津さんがラーメン登龍門で使用した味噌は、福岡、長崎、信州、仙台、北海道の5種類をブレンド。福岡ということもあり、麦味噌が主体ですが、白も赤も、豆味噌の風味も生かし、火入れをしない”生味噌”が特徴です。そのブレンドした味噌に和だしや九州産醤油、香味野菜などを合わせて寝かせます。

煮玉子入り淡麗生味噌ラーメン

スープは福岡らしく、豚骨主体の白湯に和だしをブレンドしたWスープ。豚骨を主体とし親鳥や香味野菜を加え、白濁させた白湯スープと、羅臼昆布、鰹の厚削り、椎茸、煮干し等からとった和だしを別々にとり、営業直前にブレンドします。コンセプトに合わせ、幅広いお客様に、毎日でも食べたくなるスープを目指したとのことです。

スープ

麺は様々な国産小麦を試した中、地産地消を考え福岡県産の「ミナミノチカラ」100%で勝負しました。福岡に馴染みのない新しい麺を目指しました。加水(麺に加える水の量)は35%の多加水麺。

そして、今回最もポイントとなったのが、太麺と細麺をミックスして提供するという点です。

太麺と細麺をミックスした相盛り麺

麺の生地自体は同じなのですが、太麺(切刃10番)は平打ちの形状で、細麺(切刃24番)はちぢれの形状と、太さも食感も大きく異なる2種類の麺を1度で味わえ、愉しめます。ラーメン登龍門の決勝戦では多くの審査員がこの麺を評価していました。

太麺と細麺をミックスして提供

審査員が絶賛!

ここで審査員のコメントをご紹介いたします。

麺の食感はつるみがあって良かったですし甘味も感じました(飯田将太様)
麺の食感、長さ、茹で加減文句なしです!(井上こん様)
同じ麺帯ながらも食感・風味がかなり変わりどちらも良い(前島司様)
太麺も細麺も食感良く、スープも良く絡んで美味しい(海老名東人様)

「ラーメン登龍門2024」最終選考の様子

島津さんによると「太麺・細麺では茹で時間が異なるため、全てのオペレーションをミックス麺で行うのは大変ではありますが、評価をいただいたのと、是非皆さんに食べていただきたいという想いがありますので、頑張ります!」とのことです。

具材は、国産豚の肩ロース、モモ肉の2種チャーシューを1枚ずつ。キクラゲ、和だしで炊いた太メンマ、青ネギ、そしてクルトン替わりにガーリックオイルで揚げた高野豆腐がアクセントになっていますチャーシューの厚みや、各食材は食感を楽しむチョイスにしており、福岡の味噌ラーメンや博多ラーメンと差別化した具材にしています。

「ラーメン登龍門2024」最終選考の様子

ラー博出店への意気込み

自分の中では優勝すると思っていなかったので、優勝の発表があった時、嬉しさよりも、びっくりしたというのが本音でした。それと同時に、オープンまでの2カ月でどう準備しようかと、頭の整理がつかない状態でした。

優勝後、友人や先輩、後輩から多くの祝福をいただき、さらに責任の重大さを感じました。しかし、ラー博への出店という中々得ることの出来ないきっかけをいただきましたので、私自身、開業時に掲げた目標に向けて今回の出店は次なるステージと捉え、これまでの想い・経験・感謝を1杯の丼に注ぎたいと思います。

店主の島津智明さん

【博多文福本店】
住所:福岡県春日市須玖北9−62

「博多文福」本店

『新横浜ラーメン博物館』の情報

住所:横浜市港北区新横浜2−14−21
交通:JR東海道新幹線・JR横浜線の新横浜駅から徒歩5分、横浜市営地下鉄の新横浜駅8番出口から徒歩1分
営業時間:平日11時〜21時、土日祝10時半〜21時
休館日:年末年始(12月31日、1月1日)
入場料:当日入場券大人450円、小・中・高校生・シニア(65歳以上)100円、小学生未満は無料
※障害者手帳をお持ちの方と、同数の付き添いの方は無料
入場フリーパス「6ヶ月パス」500円、「年間パス」800円

※協力:新横浜ラーメン博物館
https://www.raumen.co.jp/