50代や60代は、親の介護の最中だったり、これから視野に入ってくる人も多い世代です。50代60代の女性の暮らしについての著書を持つブロガーの原田さよさんも現在は義母と同居し、介護をしていると言います。そんな原田さんが、介護する側される側が無理をしない暮らしをするための工夫を語ってくれました。

30代でうつ病を発症。がんばりすぎたことが影響して…

もともとひとり暮らしをしていた義母でしたが、家で大腿骨を骨折し、手術・入院・リハビリのための転院を経てから、私たち夫婦と同居を始めました。今、7年目に入っていますが、介護の面で私はまだまだ初心者マークが外せません。ただ、息子の療育で得た経験は、役に立っていると感じています。

【写真】伝えたことを忘れてしまう義母への伝言ノート

かつて、私は息子の療育でがんばり過ぎ、30代に入ってすぐうつ病になりました。やがて悪化して長期の入院を繰り返してしまい、夫や子どもたちはもちろん、義母や実家の両親にも大きな負担をかけました。

私がうつ病になった原因は、自分の性格と生活環境の両方による影響だと思います。「子どもたちのためにしっかりしなければ」と自分をがんじがらめにしていることにまったく気づかず、症状が悪化し、元に戻るまで数年かかってしまいました。

そのこともあって、義母の介護においては、初めから気をつけました。

自分の子どもと夫の親とでは違いますし、30年も経っているので当時より私はずいぶん図太くなりました。でも、若いときのあの経験は大きなものになっています。

自分を追い込みすぎないように、介護ではやめようと決めたこと

私が過去の経験から気をつけるようにしたことは3つです。

●ひとりで抱え込むのをやめた

1つめは「ひとりで抱え込まないこと」。なんでも自分でやってしまおうとせず、介護に関する情報を集め、できることから実践してきました。息子のときにもお世話になった介護福祉課にまず相談、義母が退院後すぐに使える介護サービスを探しました。介護費用の件でも、わからないことは正直に相談しました。

また、忙しかった夫にも義母のことを徐々に担当してもらうようにしました。2020年の春からコロナ禍で夫が在宅勤務になり、そのまま定年を迎え継続雇用となったので、スムーズにできたように思います。

●感情的になるのをやめた

2つめは「感情的にならないこと」。私は行き詰まってしまうと感情の整理ができないことが多く、すぐ落ち込んでしまうのですが、義母との暮らしでは困っていることを具体的に考えられるよう気をつけました。

たとえば、何に対して、いつどのように手を貸してほしいかをきちんと伝えるようにします。これは、相手が夫でも、施設のスタッフさんでも同じです。これで気持ちの整理もでき、冷静に物事を進められるようになりました。

●介護から離れる時間に罪悪感を持つのをやめた

最後の1つが、レスパイトケア(介護をする側が一時的に休息すること)に罪悪感を持たないことです。

義母の術後のリハビリの効果が持続するように、同居してからすぐデイサービスの利用回数を増やしました。そのことに初めは罪悪感もありましたが、義母のリハビリ時間も増えたことで、私の生活リズムも整い、夫婦そろって余裕をもって義母に接することができるようになりました。

ショートステイに関しては、デイサービスと同じ施設の上の階で利用できるため、義母が受け入れやすかったように思います。この施設は、義母が入院中に探しておきました。息子のときも、放課後支援でもショートステイでもお世話になれる施設を選んで利用しやすかったので、その経験が活かされました。

介護の形は人それぞれだけど…

忘れないようにしているのが、義母自身が機嫌よくデイサービスに通ってくれていることです。当初は行きたがらないこともあって悩んだのですが、7年かけてゆっくり利用頻度を高くしてきたのもあり、慣れてくれたように思います。

とはいえ、しんどいことがあると私はすぐそれを忘れてしまうので、気をつけるようにしています。

私と同世代の人なら、親の介護と孫のフォローの両方をこなしている人などもいらっしゃるでしょう。また、介護を分担できる家族がいない、いたとしても負担を分け合えないという人もいるでしょう。また、仕事をしながらだったり、持病を抱えながらだったりする人もいるはずです。そういう場合は、知らず知らずのうちに自分を追い込んでしまうかもしれません。

情報があふれている世の中、迷ったりだれかと比べたりしてしまうこともあるかもしれませんが、情報を得にくかった時代よりも自分に合った方法を探しやすいです。どうかひとりでがんばり過ぎないよう、納得できる形を探り、周りの助けも借りてみてください。親が大切な存在であることに変わりはありませんが、自分自身のことも守りながら暮らしていきましょう。