スペースXが「ファルコン9」ロケット打ち上げ失敗の原因特定 間もなく飛行再開へ
アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は日本時間2024年7月12日の打ち上げ時に異常が発生した同社の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットについて、原因の特定と対策を行い、近く飛行を再開すると2024年7月25日付で発表しました。直近では同社の衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」の通信衛星の打ち上げが日本時間2024年7月27日以降に予定されています。【最終更新:2024年7月26日10時台】
日本時間2024年7月12日11時35分、アメリカ・カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地からStarlink衛星20機を搭載したFalcon 9ロケットが打ち上げられました。1段目の飛行は予定通り進んで分離後にドローン船へのランディングにも成功したものの、近地点高度を上昇させて円軌道に入るための2段目エンジン第2回燃焼を正常に実施できず、衛星を目的の軌道に投入することができず打ち上げは失敗。搭載されていたStarlink衛星は2段目から放出されはしたものの、近地点高度が135kmという低い軌道に投入されてしまったため大気抵抗によって短期間で高度が低下し、大気圏に再突入して20機すべてが失われました。
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SpaceXによると、アメリカ連邦航空局(FAA)の監督のもとで調査を進めた結果、異常の原因は2段目エンジンの第1回燃焼中に発生した液体酸素漏れであり、漏れが生じた場所はエンジンの酸素供給系に取り付けられていた圧力センサーの導圧管に生じた亀裂だと特定されました。亀裂はエンジンの振動による高負荷および導圧管を固定するクランプの緩みに由来する疲労によって生じたとみられています。
打ち上げ当日にSpaceXがXで配信したライブ映像をチェックすると、2段目エンジンを覆う断熱シートの表面には第1回燃焼中に白い霜のようなものが生じていることがわかります。同社によると、2段目エンジンの第1回燃焼は燃焼停止まで完了したものの、漏洩した液体酸素によってエンジンが過度に冷却された結果、第2回燃焼を開始した時点でエンジンが損傷し、2段目機体は姿勢制御を喪失しました。それでも2段目ではStarlink衛星の放出と、打ち上げミッションを終えた後に毎回実施されている不活性化(※)が設計通りに実行されたと述べられています。
※…残った推進剤による爆発等でスペースデブリ(宇宙ごみ)を生じさせないようにするための措置。
対策として、問題の導圧管を含む圧力センサーは今後短期間の打ち上げでは2段目エンジンから取り外されます。このセンサーは飛行安全システムでは使用されておらず、また他のセンサーで代替可能とされています。設計の変更はアメリカ・テキサス州マクレガーにあるSpaceXの開発施設ですでにテストされたということです。飛行再開後の最初のミッションでは23機のStarlink衛星(Group 10-9)がFalcon 9に搭載され、早ければ日本時間2024年7月27日13時21分に打ち上げが実施される予定です。
Source
SpaceX - Falcon 9 Returns to FlightSpaceX - STARLINK MISSION
文・編集/sorae編集部