(漫画:筆者作成)

「今のはパワハラですよね?」と指摘されるのをおそれ、寛容に振る舞う上司がいます。が、実はそれによって別の問題が起こることに気づいているでしょうか。著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』などがある漫画家・イラストレーター・グラフィックデザイナーのJamさんが、自身の経験を基に解説します。

何にでも寛容な上司になればいいわけではない


(漫画:筆者作成)

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近ごろは職場でのハラスメントが問題になっています。そのため、パワハラ扱いされることを恐れ、部下の提案を何でも受け入れてしまう上司がいます。やたらと何でも否定したり、すぐに怒ったりする上司よりはいいのかもしれませんが、寛容すぎる上司は本当に部下からの評価が高いのでしょうか?

パワハラ問題では部下の被害ばかりが注目されがちですが、実際は上司のほうも大変です。ささいなことでパワハラにならないように、と気を遣い、正当な指導を心がけていたとしても、部下が少し不快に感じたというだけで、「今のはパワハラですよね? 訴えますよ?」と、過剰にハラスメントを主張して「ハラスメントハラスメント」で嫌がらせをされることもあります。

だからといって、パワハラ扱いを恐れて、何にでも寛容な上司になればいいというわけではありません。何も指導しないほうが楽ですし、部内に穏やかな雰囲気を作ることができるかもしれませんが、今度は別の問題が起こります。

例えば、部下の提案をすべて「OK」で受け入れてしまったら、何の指導もされなかった部下は改善や成長の機会を失い、人材が育たず組織としての生産性が下がります。また、努力や成果に関係なくどの部下にも平均的な評価をしていたら、頑張った部下ほどモチベーションが下がり、評価の公平性に不満を感じます。

優秀な部下であるほどやりがいを失い、早期退職につながったりもするでしょう。指導しすぎればパワハラの疑いをかけられ、寛大すぎても組織の業績に問題が起こるのですから、今の時代、上司に求められる能力や負担は計りしれません。

それでは、どうすればいいのか。まずはパワハラ問題ですが、ハラスメントと指導の違いを明確にして、部内で共有できるような環境の構築を目指すのがいいと思います。

同僚や部下との信頼関係は大事です。いざというときに、問題を当事者同士だけで解決しようとすれば、最悪の結果につながりかねません。周囲と意思の疎通が取れない状況だけは作らないようにしてください。事実関係を周りの人にも理解してもらえることが、パワハラの誤解を受けないための第一歩です。

ハラハラの原因を考えてみる

また、ハラハラについても考えてみましょう。ハラハラは許されないことではありますが、よほど部下の性格に問題があるなどでなければ、相手が自分を好ましく思っていない理由があるはずです。

パワハラを起こす人の共通点として、自分は悪くない、あれくらいは許容されるはずだと、無自覚に嫌悪感を抱かれる発言や行動をしている人も多いのです。まずはそういった落ち度がないか、胸に手を当てて考えてみましょう。

そのうえで、まったくパワハラの心当たりがないときは、安易に謝罪してハラスメントを認めないようにしましょう。ハラハラは被害者の主張が必ず通るわけではありません。訴えがハラスメントの平均的な感覚を逸脱していたり、周囲が事実関係を証明したりしてくれれば、パワハラと認められないこともあります。

部下を指導するのは上司の役割です。嫌われないために何の指導もしなければ、部下は育たず規律は乱れ、職場環境は悪化してしまいます。

問題のある部下が好き勝手できる状況や、上司から正当な評価や指導が受けられない状況は、真面目に仕事をしている他の部下にとっても害があり、他人事ではないのです。

部下から嫌われることを恐れ、何でも黙認して指導を疎かにする上司は、悪く言えば自己の保身しか考えておらず、責任を取る覚悟がない、部下をダメにしてしまう上司でもあります。組織のためにも、ちゃんと仕事をしている部下のためにも、パワハラを恐れ過ぎず、上司の業務を全うする必要があると思います。

周りに迷惑をかけてしまう部下への対処法


(漫画:筆者作成)

どんな仕事でもそうですが、ときどき、「できます」「やります」と何でも引き受けて、結局は納期に間に合わず、周りに迷惑をかけてしまう人がいます。そういった人たちは、なぜそんなことを繰り返してしまうのでしょうか?

周りに迷惑をかけてしまう人の特徴として、何が迷惑かを理解していない、自分の能力を過信している、といったことがあります。

例えば「プライドが高い人」は、人からの評価を気にしすぎて、「できない」と言えないことが多いです。普通の人はできないことをできると言ってしまうほうが「無責任」だと感じますが、プライドが高い人の多くは、人からの評価や期待に応えられない自分を「恥ずかしい」と感じてしまいます。漫画の悪役令嬢のようなタイプです。

「この私にできないはずがない、断って私に恥をかけというの?」と、本来の実力値を見誤った選択をして、失敗しても素直に非を認められないため、無責任な振る舞いを繰り返してしまいます。

また、人に迷惑をかけても「次はやれる」と開き直って繰り返してしまう人は、性格が楽観的で失敗を重く受け止めていないことが多いです。漫画でいえば、安請け合いで実力以上の仕事を受けて、突然危機に直面して周りを巻き込むタイプです。でも、当人は「やっちゃった」くらいの認識なので、巻き込まれて尻拭いをする人たちは、とても大変な目にあいます。

責任感のある人ほど安易に引き受けない

責任感がある人ほど、自分の実力やできないことを十分に理解しているし、安易に何でも引き受けたりしません。自分だけで対応できなかったときや、周りにかかる負担や迷惑も考えて配慮します。

仕事を断るのは印象が悪いと感じるかもしれませんが、できないことを引き受けるほうが、後々の印象は悪いし、社会人としても無責任です。ときには、断る勇気を持つことも大事だと思います。

(Jam : 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー)