SDGsの各目標に取り組み、実績にも優れた企業を見つけようというのが「SDGs企業ランキング」だ

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SDGsの達成は簡単な道のりではない (写真:metamorworks/PIXTA)

2030年の達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)に黄信号が灯っている。

2015年9月に国連で採択されたSDGsは貧困、ジェンダー、環境、衛生、サプライチェーンなど17の目標と169のターゲットで構成され、グローバルで取り組みが進められてきた。

達成・順調はわずか17%

だが、6月28日発表の国連の報告書で、「評価可能な135ターゲットのうち達成に向けて順調なのはわずか17%」と、壁に直面していることが明らかになった。

アントニオ・グテーレス事務総長も「(2030年まで)6年あまりとなる中、貧困に終止符を打ち、地球を守り、誰一人取り残さない、という2030年の約束に対して手を緩めてはならない」と危機感を示している。

ただ、一般的に見ると壮大な目標も多く、そもそも短期間での実現を疑問視する声も少なくなかった。

一方でSDGsの登場で時間軸はともかく世界のサステイナビリティー(持続可能性)の課題が明確に示され、企業の取り組みはそれまでよりも進めやすくなったことは間違いない。

このSDGsの各目標に取り組み、実績にも優れた企業を見つけようというのが「SDGs企業ランキング」だ。4回目となる今回は98項目で評価した(評価項目一覧は最終ページに記載。作成方法はこちらを参照)。

評価項目は東洋経済がCSR(企業の社会的責任)調査を基に保有しているサステイナビリティー情報から選定。とくに課題解決に関連する項目を重点的に評価した。

SDGsには、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」など義務的な目標も少なくない。こうした守りの面も含めることで、アピールだけでない、真のSDGs達成を真剣に取り組む企業を知ることができる。

トップは第一生命ホールディングス

ランキングを見ていこう。1位は第一生命ホールディングスが金融機関で初めてトップとなった。分野別は人材活用7位、環境5位、社会性17位、企業統治1位とバランスよく高評価だった。

同社はSDGsから独自に導出・分析した50の社会課題から14の重要課題を選定。「すべての人々の幸せを守り、高める」ことに通じた価値創造そのものがSDGs実現への貢献につながると考える。取り組みはグループサステナビリティ推進委員会がグループ横断的に推進。業務委託先との対話として「サステナビリティアセスメント」を実施するなど取引先との連携も進める。

女性管理職比率29.4%など、女性活躍関連の指標は高水準だ。全社員対象のLGBT理解促進研修を行うなど、ダイバーシティーの取り組みも幅広く行っている。

環境面では、脱炭素に向けて温室効果ガス(GHG)排出量削減の取り組みが際立つ。スコープ1+2(自社のGHG排出+電力等の間接GHG排出)を1年間で76.0%削減した。再生可能エネルギー利用率は92.3%まで達している。

本社・支社での社会・地域貢献活動やボランティア活動にも積極的だ。ボランティアの参加者は2023年度に3万8745人にものぼる。

第一生命カンボジアで、小児病棟に入院している子どものために病棟内に遊び場を建設するなど精神的ケア支援を行うといった多くの取り組みを国内外で実施している。

2位は昨年トップのJ.フロント リテイリング。大丸松坂屋百貨店やパルコを擁する同社はサステイナビリティー経営の実現に向け、「脱炭素社会の実現」「サーキュラー・エコノミーの推進」など7つのマテリアリティー(重要課題)に取り組む。

ビジネスでの課題解決に力を入れ社会性と企業統治の得点はトップ。2021年に使い捨てを減らすためのファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス」を立ち上げ。生物多様性保全として、大丸心斎橋店の屋上で都市養蜂を実施し、取引先と共同で商品開発・販売も行う。

100%再生可能エネルギーを使用する店舗も年々増え、2023年には関西・関東以外の中部地区にも拡大した。環境に配慮した店舗づくりに力を入れる。

人材関連では、女性管理職比率25.1%、月間残業時間4.7時間、正社員の定年65歳など、高評価となる数値が並ぶ。さらにSDGsの達成目標年である2030年に向けて、「女性管理職比率50%」「70歳定年」「障害者雇用率3.0 %」を目指し、真の多様性を尊重・受容する企業実現に取り組んでいる。

ファンケルは人材活用で高評価

3位はファンケル。SDGs推進を経営の中核に据え、中期経営計画の戦略の1つと捉え、定量目標を設定し進めている。女性管理職比率47.1%や障害者雇用率4.46%、男女とも育児休業取得率100%といった圧倒的に高レベルの数値や制度が評価され、人材活用ではトップになっている。

環境面では、エネルギー・CO2(GHG)削減やプラスチック使用量削減を目標に掲げ、GHG排出削減(スコープ1+2)で62.6%削減となった。

薬剤師の資格を持つ従業員が学生向けの「ファンケル神奈川SDGs講座」で栄養講座の講師を務めるといったプロボノ活動にも積極的だ。

4位は日本生命保険が昨年10位から上昇。生命保険事業として貢献するSDGs目標だけでなく、機関投資家としてすべての目標を意識したESG(環境・社会・企業統治)投融資を推進する。

海外ではアジア最大のソーシャル・インパクトボンド・ファンドへ6億円を投資。事業の民間委託等を通じ、地方自治体の社会課題の解決と行政コストの削減の両立を目指すなど金融機関ならではの貢献を行う。

5位は丸井グループが昨年11位から上昇。2年前の39位から順調に順位を上げてきた。

以下、6位三井住友フィナンシャルグループ、7位三菱UFJフィナンシャル・グループ、8位日本電信電話、9位オムロン、10位サントリーホールディングスと続く。

10位以内に金融機関4社、一般事業会社6社という内訳でランクインしている。

ここでは50位までの企業を紹介しているが、各評価カテゴリーごとの点数を記載した500位までのランキングについてはこちらで紹介している。

SDGsは企業の新たな成長戦略とも言われているが、実際は「宝の山のリスト」ではなく、「企業活動を継続するうえで守るべき項目」という側面が強い。こうした課題を意識しない企業は、時代に取り残され淘汰される可能性が高くなる。

もちろんSDGsの目標は短期で実現するのは難しい分野も多い。2030年に達成とされているが、さらに長期を見据えて各企業が何をできるかを考えていくことが本当のグローバルの課題解決につながり、企業の成長にもつながっていくだろう。


評価項目





(岸本 吉浩 : 東洋経済 記者)