この記事をまとめると

■一時は日本にも正規輸入された「ノーブル」はリー・ノーブルが設立したスポーツカーメーカーだ

■ノーブルは1999年から2004年にかけて「M10」「M12 GTO バイターボ」「M400」を発表・発売

■ノーブルは2006年に会社が売却され、それ以降は「M15」「M500」を発表している

最新の話題が聞こえてこない「ノーブル」

 イギリスには、バックヤードビルダーと呼ばれる小規模なメーカーを含めれば、この日本では正確には把握できないほどに多くのスポーツカーメーカーが存在する。ここで紹介するノーブル・オートモーティブ社は一時、日本への正規輸入が行われていたこともあり、その知名度はバックヤードビルダーほどに小さくはないが、これまでの歴史や最新作の話題は、残念ながらほとんど伝わってこないというのが正直なところ。

 そこで今回は、このノーブル・オートモーティブ、通称ノーブルの歴史と作品を、簡単に振り返っていくことにしようと思う。

 ノーブルは1999年にカーデザイナーでありエンジニアのリー・ノーブルによって、イングランドのウエスト・ヨークシャー州リーズに設立されたスポーツカーメーカーだ。

 彼が市場に送り出したかったのは、高性能なエンジンをリヤミッドに搭載する後輪駆動車。すなわちスポーツカーとしてはもっとも魅力的ともいえるパワートレインレイアウトをもつモデルで、実際に1999年にはコンバーチブルの2.5リッター自然吸気仕様の「M10」が、また翌2000年にはその進化型ともいえるフォードのV型6気筒ターボエンジンをツインターボ仕様にコンバートした「M12 GTO バイターボ」が、2.5リッターと3リッターの両仕様で(3リッターモデルのGTO-3にはさらに軽量版の「R」も設定されていた)登場。

 もっとも人気の高かった3リッターのM12 GTO バイターボRは、165台のセールスを記録したとされる。

 このM12シリーズの究極作といえるのが、2004年に発表された「M400」だ。このネーミングが意味するところは、車重1トンあたりの馬力が400馬力以上にも達していることで、実際の数字は431馬力。0-97km/h加速は、当時のテストデータによれば2.97秒。最高速は325km/hに達したというのがノーブルからの発表だった。

 M400はミッドに搭載されるエンジンを始め、さまざまなパートでM12のそれとは異なるディテールをもっていた。

 鍛造ピストンの採用や大型のターボチャージャーの装備。シャシーまわりではフロントの強化型アンチロールバーや専用のダンパー、より硬めのコイルスプリング、ピレリ製Pゼロタイヤなどが代表的なメニューで、ドライビングポジションがややセンターよりに改められたことは、キャビンの中央を貫くセンタートンネルが、M12よりやや細くデザインされていることからも明らかである。

 このM400は、ノーブルの一時代を築いたモデルとしても広く知られている。とはいえその生産台数はわずかに75台を数えたのみだが。

最新モデルは2018年に発表されたM500

 リー・ノーブルは、優秀なエンジニアであると同時に、ノーブルの経営をコントロールするオーナーでもあった。だが、ノーブルは2006年に売却され、リー・ノーブルは新たに2009年、フェニックス・オートモーティブ社を設立することになる。

 ノーブル社と同様にスポーツカーの生産を目的に誕生したこの新会社では、当時のシボレー・コルベットZR1から移植されたパワーユニットを用いたプロトタイプが1台製作されたのみで、実質的には自動車メーカーとしての活動は行われなかったが、リー・ノーブルはそれでもスポーツカーへの情熱を捨てなかったのだ。

 一方、新たな経営体制となったノーブル社では、M400に続いて、3リッターのV型6気筒ツインターボエンジンを461馬力で縦置きミッドシップした「M15」を2006年に発表。

 これまでのノーブル車と比較して、より快適性や使い勝手が増したM15は、さらに2010年にはボルボ製の4.4リッターV型8気筒をベースとしたツインターボエンジンを659馬力の最高出力で搭載した「M600」に進化を遂げるが、こちらは0-97km/h加速で3.5秒、0-160km/h加速でもさらに4秒しか必要としないスーパースポーツだ。

 また、2016年にはそのオープン仕様であるロードスターも登場し、少なくとも30台が生産されたという記録が残る。

 2018年、ノーブルはニューモデルの「M500」を発表し、そのセールスを2022年までには開始すると宣言。3.5リッターのフォード製V型6気筒ツインターボエンジンを搭載するこのモデルは、ノーブルではジュニアスーパーカーと呼ばれるが、そのスパルタンで軽量性を生かした走りには、早くも多くのファンが魅了されている。

 ノーブルのスポーツカー作りには、まだまだ終わりなど見えないのだ。