パラグアイ戦に出場した藤田譲瑠チマ【写真:Getty Images】

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【専門家の目|安田理大】アンカーの藤田譲瑠チマは「球離れも早いし、リズムを作った」

 大岩剛監督率いるU-23日本代表は、現地時間7月24日にパリ五輪のグループリーグ初戦でパラグアイ代表と対戦し、5-0で白星スタートを切った。

 相手は前半に退場者を出し、数的優位で戦えたものの南米1位に圧勝。日本代表OBの安田理大氏はチームの“心臓”となったMF藤田譲瑠チマを称賛した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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 フランスの地で若き日本代表戦士が大暴れした。前半19分に左サイドを切り崩すと、DF大畑歩夢のラストパスを受けたMF三戸舜介が冷静に相手GKを見てニアサイドを抜いて先制点を決めた。その3分後には中盤でFW平河悠がパラグアイMFウィデル・ビエラに足を踏みつけられて、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の介入で一発退場となった。

 数的優位を得た日本は、後半にゴールラッシュを見せる。三戸の2点目でリードを広げると、その後もMF山本理仁、途中出場のFW藤尾翔太が2ゴールを加えて大量5点を奪い、パリ五輪で好スタートを切った。

 1点リードする前半の早い時間帯で相手が10人となり、マネジメントも難しかった。だが、ここで大岩ジャパンは冷静だった。安田氏はアンカーに入った主将の藤田が大きな役割を果たしていたと称えた。

「10人になって、逆にパラグアイはうしろでブロックを作ってあまり前から来ずにチャンスがあったらカウンターやセットプレーの形になった。実際の脅威はセットプレーぐらいやったけど、本来なら2点目取りに行くために前に前に行って焦ってカウンター食らったり……が、ありがちなパターン。でも、それをチーム全体でコントロールしていたし、アンカーの藤田譲瑠チマは抜群に効いていたね。ほんまにもう(エンゴロ・)カンテやね、和製カンテ」

 藤田はアンカーとして守備で最終ラインを助けるだけでなく、自身でボールも持ち、効果的なパスも供給。攻守のスイッチ役としても大いに貢献していた。

「今まであんまり日本のボランチで、あれだけ守備ができて、スルーパスとか決定的なパスを出せる選手はなかなかおらんかったから。山本(理仁)にしろ、藤田譲瑠チマにしろ、やっぱりボールを持ったときに常にニュートラルなところにボールを置いて、なんでもできる。そこにボールを置けるというのはやっぱり周りの選手からしたらすごく動きやすい。球離れも早いし、リズムを作ったなと思いますね」

 大岩ジャパンの主将が世界相手にもたらす力に感嘆の声を上げていた。

[PROFILE]
安田理大(やすだ・みちひろ)/1987年生まれ、兵庫県神戸市出身。ガンバ大阪のアカデミー出身で2006年にトップチーム昇格。プロ1年目からデビューを飾り、2年目の2007年ではナビスコカップの「ニューヒーロー賞」を受賞。大会MVPも獲得した。2008年には北京五輪メンバーに選出。2011年からオランダ1部フィテッセでプレー。その後はジュビロ磐田、サガン鳥栖、ヴィッセル神戸、名古屋グランパスと国内を渡り歩き、韓国を経て、アルビレックス新潟、ジェフユナイテッド千葉、松本山雅FCとさまざまなクラブを経験。日本代表としては7試合に出場し1ゴールをマークした。(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)