(写真:Jake Images/PIXTA)

薄着の季節は、身につけるアイテムが減り、だらしなくなりがち。しかも最近では、夏のオフィスカジュアル浸透から「職場なのに、私服っぽい」恰好を見かけませんか。

たとえばポロシャツ姿が「休日見え」するケースもありますが、これは相手からどう見えるか、という意識が抜けている証拠。そこで本稿では、各アイテムにおける相手目線の印象を言語化していきます。

「薄着のオフィスカジュアル攻略」ポイントについて、業界を問わず、オフィスカジュアル研修を担当してきた筆者が解説。

ポロシャツ姿が「休日見え」する理由

たとえサイズ感が合っていたとしても、「ポロシャツ姿が休日見え」してしまう方は、配色で失敗している可能性が高く、とくにチノパン合わせのときに起きています。ポロシャツとチノパンは、どちらもカジュアル要素が強く、配色次第で「オフィスより休日を想起させてしまう」もの。

そこでポロシャツの場合、せめて「チノパンの色合い」でビジネス感を強調したいのです。

たとえばグレー・紺のチノパンは、生活感がないオフィス環境に合わせやすく、カジュアル要素から目を逸らす効果を期待できます。スーツやジャケットで頻出する黒・紺・グレーを活かすことで、ベージュのチノパン特有のカジュアル味をカバーしてくれるのです。


カジュアル味の強さから、休日見えしやすいポロシャツ配色例(写真:筆者撮影)

もしくはチノパンをスラックスに変えることでも、同様の効果を得られます。いずれの工夫も「ドレス感を高める」もので、社内の服装規定では伝えづらい領域。だからこそ「襟があるポロシャツはOK、襟がないTシャツはNG」という情報は規定にお任せし、各アイテムにおける「組み合わせの違和感」を明らかにしましょう。

屋外とオフィスで温度差がある夏のオフィスカジュアルは、着脱可能なサマーアウターのコーディネートが主流です。なかでもTシャツに合わせたサマージャケット姿をよく見かけませんか。

これまでITやスタートアップ界隈で見かけてきた恰好も、オフィスカジュアルの浸透とともに、業界を問わず増えてきました。ただ同時に、ジャケットを脱いだTシャツ状態ではカジュアルすぎる、という懸念をお持ちの方もいらっしゃるのでは。

Tシャツ一枚でも「オフィス映え」する工夫

服装規定の作成をお手伝いするとき、まさにこの問題を理由に「TシャツNG」を決定される企業もありますし、業界によっては「Tシャツも許容する」けれども、カジュアルすぎないテコ入れを、研修内容に盛り込むケースもあります。

たとえばサマージャケットのフォルム次第では、合わせるTシャツがジャストシルエットになってしまうこともあるでしょう。このケースでは、ジャケットを脱いだ途端に、白Tシャツが「下着っぽくなってしまう」リスクもあるのです。もちろん、その印象を回避するべく「厚みの生地感」や「ダークカラーT」を選ばれる方も多いのですが、年齢によっては、それでも問題の解消に至るとは限りません。


1枚でも下着感がないニットTシャツの質感(写真:筆者撮影)

そこで最大公約数的な解決策として、「ニットTシャツ」をおすすめしています。コットンで編んだサマーセーター生地の質感は、1枚であっても大人っぽくオフィス映えしやすいですし、最近では洗濯ネットで洗えるタイプも増えているため手入れもラク。

夏のTシャツ姿で誤解されない工夫として「ニットの質感」を選ぶことは、相手目線のオフィスカジュアルに通じるのです。

サマージャケットにポロシャツが合わせづらい理由

では「サマージャケットに、ポロシャツ」という選択肢はいかがでしょうか。実はTシャツ合わせ以上に、ポロシャツ合わせは難易度が上がります。ポロシャツにジャケットというコーディネートは「ゴルファーを想起」しやすく、これもまたオフィスとは異なる印象だからです。


サマージャケット姿がゴルファー見えしないポロシャツ事例(写真:筆者撮影)

もしポロシャツをサマージャケットに合わせるならば、ボタンが付いていない「スキッパー」タイプがおすすめ。本来リゾートで見かけるデザインですが、スラックスやサマージャケットに合わせることでビジネス感に通じます。

サマージャケットにポロシャツを合わせる場合、「ボタンの有無が、印象を左右する」ということ。ではオーバーサイズTシャツならば、どんな工夫が求められるのでしょうか。

Tシャツにサマーシャツやカーディガンという恰好が許される企業ではオーバーサイズTシャツの方も多いはず。このとき「生地の張り感」を意識される方は多いと思いますが、意外に「丈感」も重要です。

Tシャツの丈感は、サマーアウター着用の有無で、印象がガラッと変わります。サマーアウター着用時に馴染んでいたTシャツ丈が、「1枚になった途端、長すぎる」という状況に陥るのです。そこでTシャツ単体の着こなしを想定し、オフィスカジュアルでは「パンツのポケットが完全に隠れない程度の丈感」を目安に選んでみてください。

ここまで各アイテムのチェックポイントについてお伝えしてきましたが、相手目線のリテラシーを高めるには、定義の見直しも効果的です。

クールビズとオフィスカジュアルの違いは?

クールビズとオフィスカジュアルはどちらも「簡略化したビジネススタイル」という意味では共通しますが、実は別物。そしてオフィスカジュアルは、クールビズ以上に「相手目線を意識した」着こなしです。

「真夏にスーツ」という不毛なビジネス様式を終わらせたクールビズは、エネルギー効率のムダを削減する環境省主導の施策。一方、日本のオフィスカジュアルは、1995年に伊藤忠商事が実施した「カジュアルフライデーから浸透が始まった」と言われています。

「社内コミュニケーションの活性化」や「雰囲気をよくする」という意図をもつオフィスカジュアルは、まさに相手目線を意識した着こなし。そして今まさに、オフィスカジュアル導入企業が増えています。ここ数年の「テレワーク浸透」や「オフィス回帰」をキッカケとして、オフィス見直しの動きが関係しているようです。

コワーキングスペースのようなリラックスした雰囲気のオフィスが増えるほど、働く方々の服装も多様化していくことでしょう。そんなときは社内の服装規定を妄信せずに、相手目線を意識した工夫を凝らしてみてください。

(森井 良行 : ビジネスマンのためのスタイリスト)