(撮影:今井康一)

昔から、政治にはカネがかかると言われてきましたが、国民の想像以上に無節操な状態が放置されています。橋下徹氏は自身が政治家になったときの経験から、「政治家は、やろうと思えばいくらでも納税することなくカネを集めることができる」と断言します。そうした政治とカネの実態について橋下氏の新刊『政権変容論』より一部抜粋・再構成のうえ、お届けします。

政治家になるともらえる第二〜第四の財布

そもそも「政治家」になった瞬間、生活レベルがアップする、というのもおかしな話です。

国会議員になる前の民間人だったとき、地方議員だったときに比べて、飲食代や贈答品代、宿泊するホテル代がランクアップするのが国会議員の世界です。

それが可能となるのは、給与に当たる歳費以外に、おカネが入ってくるいくつもの「財布」を持っているからです。しかもそれらはすべて、納税しなくていいお金です。

自民党は以前から、旧文通費問題に関しても、のらりくらりと議論を避け続けてきました。国会議員が歳費とは別に、月100万円(年間1200万円)もらえる「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)です。

これは使用基準も範囲も限定されず、領収書も不要で、情報公開もされません。まさに政治家にとっての「第二の財布」。適切に使う分ももちろんあるでしょうが、残ったカネがいくらなのか報告する義務もなく、残金を国庫に返納する義務もない。極端な話、1200万円のうち200万円だけ「政治」に使い、残りの1000万円は懐に入れても、誰からも何も言われないのです。

加えて「第三の財布」もあります。政党から政治家個人に与えられる「政策活動費」は、2021年までの20年間で、主要政党で約456億円も支払われました。自民党は最多の約379億円。なかでも5年間自民党幹事長を務めた二階俊博氏には、合計約50億円も支払われています。

もちろん、その多くが必要性のある政治活動に使われていると思いたいところですが、領収書も報告書も一切不要なので何に使ったのかまったく分からない。今の国会議員の体たらくを見ると、すべて適切に使ったと信じる国民はいないでしょう。

政治家になるには準備期間も必要です。特に新人候補者は安定した仕事を辞めて選挙準備をするケースが多く、その間の生活費や、事務所代や人件費もかかります。

法律違反のおカネの使い方は与野党ともにやっている


交際費や贈答品などの出費もある。そうしたところに、これら幹部国会議員が受け取った政策活動費が充てられると、それは候補者個人への寄付として政治資金規正法違反になるのですが、そのような法律違反のおカネの使い方は与野党ともにやっているようです。

なんと言っても50億円という巨額のカネは……、はたしてすべて適切に使える額なのか。そして、「適切に使用した」と言われても、そこまでの巨額のカネがないと活動できない「政治」とは、いったいどういうものなのか。

そんな疑問が渦巻く中、あらたに「第四の財布」として、今回の自民党の裏金問題が明るみに出たのです。

「政治家、いい加減にしろ!」「どれだけ領収書不要の財布をもっとんねん!」と国民が憤るのも当然です。

(橋下 徹 : 弁護士、政治評論家)