現金を仮想通貨に替えられる「仮想通貨ATM」を詐欺師が悪用している
仮想通貨ATMは現金を指定の仮想通貨口座に振り込める端末で、アメリカではガソリンスタンドや雑貨店など身近な場所に設置されており、簡単に現金を仮想通貨に替えられる便利なツールとして宣伝されています。しかし、この仮想通貨ATMが国際的な犯罪組織の資金移動手段になっていると専門家が警告しています。
Organized Crime and Corruption Reporting Project - OCCRP
FBIの推計によると、2023年における仮想通貨ATMを利用した詐欺の被害額は1億2000万ドル(約190億円)を超えており、詐欺被害の苦情は4300件以上あったとのこと。被害者の多くは高齢者で、詐欺師は偽の政府機関職員を装い、仮想通貨ATMで指定の口座に現金を入金させるという手口を使っているそうです。
仮想通貨に関する事件を担当するコネチカット州警察のマシュー・ホーガン刑事は、「仮想通貨ATMを利用する詐欺は組織的に行われており、詐欺師グループは東南アジア・インド・西アフリカを拠点としています」と述べています。
ホーガン氏によれば、仮想通貨の動きはブロックチェーン技術を使用しているので現金の送金よりも追跡しやすいそうですが、詐欺師グループは異なるブロックチェーンネットワーク間で資産を転送するといった手口を使い、法執行組織からの追跡を困難にする戦術を採用しているとのこと。
また、仮想通貨詐欺を専門とするエリン・ウェスト検事は、詐欺で得た資金が振り込まれる仮想通貨取引所は海外に所在しているため、アメリカ当局の捜査に対して非協力的であることも捜査が困難である原因だと指摘しています。
仮想通貨ATMをめぐる犯罪は詐欺事件だけではありません。2024年4月、シリアのテロ組織を支援するグループに1万8000ドル(約280万円)を仮想通貨ATMで送金したとした男が起訴され、禁錮18年の刑を科されました。
さらに、ニューヨーク市内のコインランドリーで40台以上の仮想通貨ATMを無認可で運営していた男が有罪判決を受けました。被告の男はATMで行われた取引額の最大20%以上を手数料として得ており、「犯罪者の顧客を意図的にターゲットにしていた」と証言しています。
世界最大の調査報道組織の1つであるOrganized Crime and Corruption Reporting Project(OCCRP)は、規制と取り締まりが追い付いていないことが状況をさらに悪化させていると主張しています。仮想通貨ATMはアメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)に登録する必要がありますが、それ以外の規制については州によって異なり、一貫性に欠けていることが問題だとOCCRPは指摘しました。