風間俊介が約3年ぶりの舞台単独主演 日本初演となる濃密で衝撃的な物語『モンスター』の上演が決定
2024年12月18日(水)~28日(土)新国立劇場 小劇場、東京公演に先駆けて11月30日より大阪・水戸・福岡にて、風間俊介主演による舞台『モンスター』が上演されることが決定した。
『モンスター』は、家族から十分な愛情を受けられず社会に問題児として扱われる生徒と、かつての華やかな職場から逃れ、自分自身も深い問題を抱える新人教師との対峙を軸に、大人の子育てと責任、未成年の反社会的な行動といった、教育・家族関係を鋭く表現した物語。
英国の劇作家ダンカン・マクミランが2005年に執筆し、コンペティションの入賞や演劇賞のノミネートなど注目を集め、英国演劇界で頭角を現すきっかけとなった戯曲で、その後マンチェスターのロイヤル・エクスチェンジ・シアターで07年に初演された。
マクミランは、日本でも上演された11年発表の『LUNGS』では現代の男女が抱える家族問題、13年発表の『エブリ・ブリリアント・シング』ではうつ病が家族や人々にもたらす問題を、そして15年発表の『People, Places and Things』では薬物やアルコール依存とその回復といった、現代の社会が直面している問題に深く切り込みつつも、自身で「重要なのは誠実な作品を届けること」と語るように、観客がテーマを身近に感じることができる作風で新作を発表するたびに注目を集めている。
そんなマクミランの初期の代表作が日本で初演されることとなった。
本作の演出を手掛けるのは、国内外の骨太な戯曲、アングラから歌舞伎、そしてシェイクスピアまでジャンルを問わず様々な演目に挑み、観客の予想を裏切るポップかつダイナミックな演出が特徴の演出家・杉原邦生。イギリスの公演ではシンプルなセットで俳優の息遣いをヒリヒリと感じさせるような演出が話題となった本作を、美術も共に担う杉原がどのように創り上げるのか、
主演を務めるのは、確かな演技力で、ドラマ・映画・舞台と幅広い作品に出演する風間俊介。心に深い闇を抱えながらも状況を変えたいと考えているトムが、教師としてダリルと対峙することで自分の問題とも向き合っていく。
共演に、これまでは等身大の役柄を数多く演じ若手実力派俳優として活躍する松岡広大が、トムと対峙する14歳のダリルを演じる。母親が自殺し祖母と暮らすも、家庭環境の複雑さから心が壊れてしまい、学校からも排除されかけているという複雑な役柄で松岡自身の新境地に挑む。
さらに、劇団四季の様々な作品でヒロインを務め、退団後も舞台俳優として活躍する笠松はるが、トムの妻でダリルに脅かされるジョディを、舞台女優として名作に多数出演し、2012年に第47回紀伊國屋演劇賞・個人賞を、2020年には第28回読売演劇大賞・優秀女優賞を受賞した名優・那須佐代子が、ダリルの祖母リタを演じる。
【あらすじ】
ねえ聞いていい?
もしも、ある日目がさめて両足が吹っ飛んでたら、そしたらあんたはどうする?
教育現場で新たな人生を歩み出したトムの目の前にいるのは、14歳の少年ダリル。
何も恐れない、壊れてしまった少年に、大人は何ができるのか-
二人きりの教室で少年と向き合い続けるトム。
歴史は変えられなくても、より良い未来を作ることはできるかもしれない、
ひたすらにそれを信じて。これから生まれてくる自分自身の“小さなモンスター”のためのより良い未来を。
トムを心配するが故に苛立ちを募らせる婚約者のジョディ。
失うことを恐れ何もできずに天使に縋るダリルの祖母リタ。
ある夜、トムの帰宅を一人待つジョディの前に、ダリルが現れる-
スタッフコメント
【翻訳】郄田曜子
ダンカン・マクミランさんの戯曲を翻訳させていただくのは、『LUNGS』に続き2作目になります。『モンスター』は、人間の強さも弱さも、残酷さも愛らしさも、すべてを描いた戯曲です。この戯曲がもつヒリヒリするような手触りをそのままお届けできるよう、誠心誠意向き合いたいと思います。日本初演となる今回の上演に向けて、カンパニーの皆さまの声を聞きながら、杉原さんのもと、一緒に作品を立ち上げていく作業が今からとても楽しみです。
【演出・美術】杉原邦生
1982年生まれの僕たちは、14歳のとき、当時同じく14歳だった少年Aによる大事件のインパクトによって“キレる世代”と呼ばれ、どうやら社会=大人たちからひどく恐れられていたようでした。ですが当然のことながら、実際の僕たちは少年Aのように“キレる”ことなく日常を生きていたので、社会が勝手につくり出した虚像に辟易としていました。反面、そうしたイメージだけが肥大化していく現象に、なんとなく快感を覚えていたような気もします。なぜなら、少年Aの“キレる”という感覚を、まったく理解出来ないことはない、と思えてしまっていたからです。『モンスター』を初めに読んだとき、ダリルという14歳の少年の姿に、あの頃の自分を思い出していました。と同時に、いまも自分の中にある“モンスター”の存在に少しずつ気付かされていくようでした。1980年生まれ、僕と同世代のダンカン・マクミランによるこの戯曲は、観る人それぞれの中にある“モンスター”を静かに呼び起こしてしまう、そんな力を持った作品なのかもしれません。
風間俊介さん、松岡広大さん、笠松はるさん、那須佐代子さんという魅力的な4名のキャスト、2度目のタッグとなる原口沙輔くんによる音楽、そして素晴らしいスタッフの皆さんとともに、エネルギッシュで鮮烈な作品をお届けしたいと思っています。
【音楽】原口沙輔
昨年劇伴を担当させていただきお世話になった杉原さんから、再びご指名いただき“勿論”という次第です。『モンスター』という作品に対して抱いた奇妙さというか、ストレンジな感じ、それをどう表現できるか、まだ考えている最中ですが胸を直接掴むような音を作れたらという思いです。杉原さんの演出は絶対に新しい視点を与えてくださるので、面白くなる確信はしています。そこに、今回初めてご一緒するキャストの皆様とどういった反応を起こすのか、今から楽しみです。それでは、皆様もお楽しみに。よろしくお願い致します!
キャストコメント
■風間俊介
台本を読んだ時、その魅力と難易度の高さに衝撃を受けました。これは客席に座ってくださるお客様は魅了され、演者はのたうち回る作品なのではないか。可能ならば、『私が客席に座りたい。客席でこの舞台を観てみたい』そんな事が脳裏に浮かびました。キャラクター達は話しているが、これは会話なのか。コミュニケーションとは何なのか。現代を生きる、全ての人に観て頂きたい作品です。そして、モンスターとは誰なのか。この作品自体がモンスターなのか。私もまだ、答えが見つかっていません。皆様には、その答えを劇場で目撃して頂けたら嬉しいです。
■松岡広大
僕が演じるダリルは14歳の少年で、共感性が皆無で生死についての倫理観なども持っていません。また、この世界の複雑さから逃れるように、激しい言葉と行動とで人を傷つけます。暴力的な彼の行動は彼の生得的なものなのか、大人からの影響とその環境によるものなのか。そして関わる大人たちは自分の生活を守るために、異なるものは避けて排除するのが正しいとか、子供でも同じ人間だから未来を摘むようなことはせず向き合うとか、ある距離感を保ち無関心でいるのがいいんだ、と様々な”正しさのようなもの”を抱えます。 人は人にどこまで関わりを持ち、手を差し伸べるかを問うた作品だと思います。
僕はしっかり向き合って、届けます。宜しくお願いいたします。
■笠松はる
少人数芝居の、全員ががっぷり組んで組み上がる濃い世界が好きです。今回4人芝居。そしてこの座組。震えます。ジョディが抱える『モンスター』は何なのか。妊娠した自分の変化、夫トムとの関係を大事に探って、腑に落としていきたいです。個人的には現代劇に出ることが経験上少ないので、今回は役と自分の境界線を決めずに、そのままの自分の肌で体感して作っていけたら、と目標としています。演出の杉原さん、そして共演者の皆様の胸を借り、真心持って良い日本初演にしたいと思います。
■那須佐代子
杉原さんの演出を受けるのも、共演の皆様とも今回が初めてになりますので、大変ワクワクとした気持ちで楽しみにしている反面、とても緊張もしています。この『モンスター』という戯曲も、まさに張り詰めた緊張感に溢れた芝居になることと思います。ただ、見終わった後お客様がどんな思いを胸に劇場を後にするのか、今はまだ全く予想がつきません。難しい内容ではありませんが、受け取るメッセージは人によって様々に分かれる気がしています。性善説か性悪説かという言葉も浮かびます。正解はないのだと思いますが、稽古していく中で今回の座組みでの着地点を見つけていきたいと思っています。多くのお客様のご来場を心よりお待ちしております。