「毎日元気そうな人」が日曜日に手帳を見ない訳
手帳を開くタイミングを工夫するだけで、疲れをためない生活習慣が身につきます(写真:y.uemura/PIXTA)
休養とは「寝ること」だと思っていませんか?
疲労研究の第一人者で医学博士の片野秀樹氏によれば、単に体を休めるだけでは50%程度しか疲れはとれません。フル充電するには、あえて自分に軽い負荷を与え、「活動→疲労→休養」というサイクルに「活力」を加えた「攻めの休養」をとることが大切です。
「攻めの休養」を無理なくスケジュールに取り入れるコツとは? 片野氏の著書『休養学:あなたを疲れから救う』より抜粋・編集してお届けします。
これから疲れそうだから、先に休んでおく
たとえば山登りに行くとき、私たちは、
「食料や水をどれくらいもっていこうか」「もしかして途中で泊まるかもしれないから、寝袋ももっていこう」
というように、先のことに想像をめぐらせて準備をするでしょう。
同じように、この先どんな活動をして疲労するかを予見して、それに必要なエネルギーである活力をためておくのです。疲労したから休むのではなく、疲労しそうだから先に休んでおく、といってもいいでしょう。
これは長期休暇に限ったことではなく、毎日・毎週のスケジュール管理にもいえる話です。
「明日は子どもと一緒に公園に行って、そのあと食料品の買い出しにも行くから、たぶんすごく疲れるな。今日は早く寝て、エネルギーを蓄えておこう」
「今週はデスクワークが中心だから、それほど体力は消耗しないだろう。エネルギーはそんなに必要ないかもしれないな」
こんなふうに、予定される活動から逆算して、必要な活力を蓄えておくという発想に、ぜひ、切り替えてみてください。
皆さん常日頃、手帳やスマホでスケジュールを管理していると思います。たいていは週末が終わった日曜日に手帳を開いて、明日から1週間の日程を確認することが多いのではないでしょうか。明日からは、ぜひそれをやめてください。
手帳を「土曜日」に開くようにするだけで
そのかわりに、週末がはじまる土曜日に手帳を開いて、次の月曜日からの1週間の日程を俯瞰するようにしていただきたいと思います。
次の平日5日間のスケジュールがギチギチにつまっているようだったら、この土日はとにかく攻めの休養にあててください。しっかりと休養し、活力をとりもどして100%に充電しておき、月、火、水……と少しずつ消耗しながら、金曜日でほぼ使い切る。これが理想です。
私たちは得てして、自分の活動能力は無限大だと錯覚して、予定をどんどん入れてしまいがちです。もし、土曜日に「この週末はどうしても十分な休養がとれない」と判断したら、次の平日5日間のスケジュールはいくつかその翌週に移す、あるいは誰かほかの人に頼む、といった調整をしてもよいでしょう。
卵が先か、鶏が先かというような話ですが、とにかく、「平日のあとの土日で休む」のではなく、「土日に休んだ分で平日働く」と考えるようにしてみてください。
市販されている手帳や、スマホのカレンダー画面はどれも「月曜始まり」か「日曜始まり」になっています。個人的には、すべて「土曜始まり」に変えていただきたいくらいです(笑)。
もちろんものごとは計算どおりにいかないこともあります。火曜日ではまだ80%のエネルギー残量があったのに、水曜日がとても忙しくて一気に50%を割ってしまうかもしれません。そんなときは、「じゃあ、お昼休みに仮眠をとろう」とか、あるいは「同僚と一緒においしいものを食べて楽しく過ごそう」というように、週の途中でエネルギーを補給するようにしてはどうでしょう。
本格的に疲れる前に、ちょこちょこ休んだり、まめに小さな活力を得たりしておくわけです。
アスリートたちは毎日、日誌を書いて自分のコンディションを「見える化」しています。なかでも朝、起きたときの感覚を大切にしていて、今日は体調がいいとか悪いとか判断し、それに合わせてその日のトレーニングメニューを組んだりします。
疲労感をレコーディングする
体調はその日その日で違うのが当たり前です。人間の体はスマホではないのですから、朝起きたら自動的に100%充電できているわけではありません。
アスリートたちは日誌を何年も書き続けると、「こんな体調のときは、だいたいこのくらいのパフォーマンスしか出ないな」「これ以上無理をするとケガをするな」とわかるようになるそうです。だから自分自身で調整するようになります。
自分でそれができない選手には、トレーナーが「今はこういう状態だから、あまり根を詰めないほうがいいね。練習はこのぐらいにしておこうか」と助言したりしています。
仕事の現場では、上司がトレーナー役を果たすべきです。運送会社の管理部門などでは「しっかり休めていますか」と聞いたり、運転の前に検査をしたりするところも少しずつ増えてきているようです。
しかし自分の体調は自分にしかわからない部分があるので、最終的には本人が責任をもって把握するのがいちばんです。
ビジネスパーソンの皆さんも、手帳の片隅に体調を表す記号や数字を書き込んでみる、スマホにメモをするなどしてみてください。ダイエットのためにその日食べたものを記録する「レコーディングダイエット」という方法がありますが、それと同じです。ぜひ、自分で自分の体の声をチェックして、記録してみてほしいと思います。
レコーディングを続け、自分の疲労に敏感になると、「会社を休むほどではないけれど、さっきからミスが多いな」とか「今日は体調がすぐれないから、早く帰ったほうがいいかな」などと気づけるようになります。
疲労がピークに達したと判断したら、会社に行かないという選択肢もあります。
その日に対面の会議の予定があったとしても、幸い、今はオンラインでミーティングもできますし、メールやチャットでのやりとりに変更してもらってもいいでしょう。
(片野 秀樹 : 博士(医学)、日本リカバリー協会代表理事)